3月16日 デジタルアクセシビリティ ハーバード大学 MacのKIOSK SONY
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3月16日 デジタルアクセシビリティ ハーバード大学 MacのKIOSK SONY

さえら

この日も怒涛のセッションが続く。英語が速すぎてついていけない。だんだん右の耳から音が入って、何のプロセスも経ずに、左の耳から抜けていく気がする。その中でも印象に残ったセッションがいくつかあった。企業全体、大学全体といった、大規模なUD改修のプロジェクトがいくつも報告されていたのだ。デジタルアクセシビリティという言葉も増えた。もう改修対象はWebだけではない。その中の映像だったり、情報KIOSKだったりするのだ。

ハーバード大学が、ADA法違反で訴えられたのは、業界では有名なことだ。ここの多くの映像に、字幕がついていないと、クラスアクションが起きたのである。で、今回は、それをどうやってクリアしていったかという話だった。ハーバード大学はWebサイトだけで10000個以上あり、その中に埋め込まれた映像は30000を超える。それをすべてアクセシブルにせよ、字幕や音声解説をつけよという命令なのだから半端ない。3つのキャプション会社と共同で、URLをすべてクロールし、埋め込まれた映像を把握し、どのようにして字幕をつけるか、戦略を立てて改善していったという経緯が語られた。30000以上の埋め込み映像を分析し、116のチャネルと99のサイトを、5か国語で字幕化したと報告されていた。映像だけで文字のない、たとえば宇宙の星雲の画像などもあるので、どう解説するかも検討された。まだまだ途半ばのようだが、全学挙げて取り組むという姿勢は素晴らしい。

ハーバード大のUDプロジェクトは半端ない数
30000個以上のサイト内映像を調査し改善する

日本の大学は大丈夫なんだろうか?放送大学での私たちの「情報社会のユニバーサルデザイン」の講義は、最初から字幕も音声解説もつけているが、日本の大学ではMOOCsの講義にUDという概念はあるのだろうか?

膨大な量ができあがってしまってから、後からUDにするのは、このハーバード大の事例を見ても、気が遠くなるくらい「バリアフリー」な、後付けの障壁除去の作業になる。最初からUDな仕様にしていればいいのに、、、、と後から悔やんでも遅い。建物と同じで、後付けはものすごく大変なのだ。最初からほんの少し気を付けて作れば、お金も時間もかからないし、デザインも美しいのに。

今回、アクセシビリティの概念が、広がっているのを感じる。「デジタル・アクセシビリティ」という言葉が増えた。WCAGがカバーする範囲も、Webサイトだけから、携帯アプリ、情報端末全般、そして、映像にも広がっている。もともと508条のカバーする範囲は、産業用機械など、働く人が扱う機器は全て含まれるのだ。今回、書籍や映画、e-learning教材などのコンテンツ全般も「デジタル・アクセシビリティ」の範疇であり、それらがすべてUDでなくてはならないのだとわかった。

次に面白かったのは、KIOSKのアクセシビリティだ。KIOSKというと、なんだか駅の売店をイメージする日本人も多そうだが、実際は、券売機、自販機、オートレジ、ATM、空港の発券機など、ICTで操作するすべての販売機が含まれる。今回は、コロナ禍で増えているファストフード店舗での販売機が多く語られていた。このセッションではマクドナルド社が一緒に発表していた。全盲の人がどうやってこの機器にアクセスし、自分でメニューを選び、オーダーしてお店で食べるかの流れを実演していた。このようなKIOSKはすべて508条の対象であり、アクセシブルなサービスはADAで義務化されているため、ATMと同様に、視覚障害者用のイヤホンジャックは必須であり、音声で内容が確認できる。更に今年は、視覚障害者のの入力用に、点字つきのキーで入力し、音声で聞くというデバイスもつながると説明されていた。この機械は初めて見た。英国盲人協会が開発したものらしいが、JAWSなどと共同でアクセシブルなキオスクを提案している。今後はこのように、一般機器はATへの入出力を標準装備し、障害者は自分に合わせたATを携帯する。必要があればATMやKIOSKに接続して使うということも増えるかもしれない。このパターンは、日本ではまだあまり見ない。むしろ機器本体をひたすらUDにしようとして、却ってユーザーインターフェースを難しくしてしまうこともある。だが、ATMのイヤホンなどは、不特定多数が使うと、消毒もできないので却って不安でもある。CSUNで見かけるこういったデバイスは、障害者個人が普通に持ち歩いていて自分で使うものなので、コロナ禍でも安心といえる。支援技術(AT)は本人に合わせてカスタマイズされたもの(Design for Each)を持ち歩き、機器やコンテンツ本体は、本体のUDも改善しながら、個々人のATによる接続や利用も標準装備できる(Design for All)。こういったアーキテクチャ設計が、今後は重要になってくるのかもしれない。

MACのKIOSKでオーダーする全盲者
MACのKIOSKはUDに設計されており、障害者にアクセシブルだ
全盲や盲老の方も使えるという入力装置
点字がついたキーで入力する機器を接続できる

日本のマクドナルドは、こういった機器を備えているのだろうか?うどん屋の券売機ってUDかな?寿司や居酒屋チェーンの、座席でオーダーするタブレットってUDだろうか?などなど、つい考えてしまった。一度ハッカソンで扱った気もする。ハードもソフトも、関わるエンジニアへの研修の必要性を痛感する。

その後、展示会場を回ったりしながら、夕方のSONYのセッションに行く。会社全体でDEIをどう推進しようとしているか、なんだかとっても謙虚に説明している様子に好感が持てて、最後は会場全体からの拍手で終わった。自分たちの作る機器のUDは当然だけど、社内のダイバーシティを高め、デザインプロセスそのものをインクルーシブにしていくという姿勢は、欧米各社からすればすでに20年前から行ってきたことではあるが、この方針を明確に打ち出してくれたことは、とても良い方向だと思う。願わくば、日本でも、世界各国でも、同じ姿勢で進んでほしいなあ!せっかくのグローバル企業なのだから。今回、日本からの参加者はゼロで、アジア系の現地社員は何人かみかけた。来年は日本からも参加してほしい。機器展示でも、テレビのUDや、店舗でのパーツ販売のUDなど、先進的な取り組みが人気だ。これからもどんどんCSUNで発表して、世界のUDをリードする存在になっていってほしい。

SONYの雇用のUDの説明
UDなワークプレイズとして認定されている


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さえら
ユニバーサルデザインと、ジェロントロジー(高齢社会学)を研究しています。 https://www.facebook.com/csekine