見出し画像

ビートマニア(All Night とAngelの本名を書けなかった理由)①

Tomoki Hirata feat Luciana and Nick Clow - Facing Up (Original Mix)

このFacing Upのビデオが撮影されたのは1997年。

初期のビートマニアでおなじみの楽曲「All Night 」のシンガーAngelとの出会い。

そのきっかけはこのビデオ撮影の時であり、

ビデオの中でフューチャリングシンガーとして歌っている

ルチアナとニックが彼女Angelの紹介者であった。

今でも当時の記憶を思い出せるが、

この時の自分は、

1年前に別れを告げられてしまった彼女のことをまだ引きずっていた。

そんな精神状態でこのミュージックビデオ撮影にも挑んでいたのだが、

撮影の合間も暗い表情が目立つ自分を見て気の毒に思ったのか、

カップルでもあるルチアナとニックがある提案をしてきた。

「トモキ、聞いて!

私たちの家にニュージャージーからきたアメリカ人の子がいて、

もうひと月以上ウチに居候してるの。

彼女もシンガーよ。

紹介の場を作ってあげるから、一緒に曲でも作れば?」

「その子、キレイ?」

と冗談まじりに聞くと、

「美人でセクシーよ!歳はあなたよりふたつ下の28」などと言う。

女性がいうキレイは当てにならないと思いつつ、

歌はどうでもいいので、

元カノを忘れたい一心から、

その女性シンガーを紹介してもらう約束をした。

後日、紹介の場と指定されたポートベロー地区のパブに行ってみると、

ルチアナとニックのカップルのそばに金髪の女性が座っていた。

「ヘイ、トモキ! 彼女はレベッカよ!

ニュージャージーからきた生粋のアメリカン。

でもオリジナルのファミリーはイタリアからの移民なの」

目の前にいるレベッカは、

ルチアナの言った通りのセクシーな美女だった。

挨拶もそこそこに、少し照れながらレベッカにジョークを飛ばしてみた。

「ファミリーってことは、お父さんはイタリア系マフィアとか?」

すると、彼女は笑みを浮かべてくれた。

ルチアナが口を挟む。

「レベッカの苗字は○○○○○っていうの。イタリアっぽいでしょ(笑)」

確かにその苗字はモロにイタリア人っぽい苗字だった。

ルチアナはイタリア人の父とイギリス人の母から誕生したハーフで、

容姿と性格はすごくイタリア人っぽい。

でも、レベッカの容姿はイタリア系よりも

アングロサクソン系に見えたことの方が印象に残っている。

そんな感じでパブでの4人のミニパーティーが始まると、

酒が飲めない自分以外はみんな飲みまくってて

途中からかなり支離滅裂な会話になっていたと思うが、

それでも何度もルチアナが「レベッカの歌を聴いてあげて」と言うので、

翌週予定のスタジオセッション前の

空いた時間に彼女の歌声を聴く約束をしてその夜は別れた。

約束の日、

早めの午後にスタジオに行ってレベッカを待ってると、

彼女は予定より少しだけ遅れて現れた。

軽く抱擁しながら挨拶をした後、

さっそく自分が作ったデモ曲をルーム内のモニタースピーカーで

繰り返し彼女に聴いてもらった。

すると、10分ほど黙って足でリズムをとっていた彼女は

不意に立ち上がりヴォーカルブースに入るや否や、

ものすごい音量でパワフルな歌声を乗せてきた。

「うわっ、ホンモノのソウルシンガーだ!」

でも、同時に疑問も湧く。

何で彼女ロンドンにいるんだ?

こんな素晴らしいシンガーならば、

ニュージャージーから近いニューヨークでも活躍の場はあるはずだ。

実際、この頃のニューヨークでは、

まだ多くのソウルフルなガレージやハウスミュージックがヒットしていた。

「レベッカ、次のアルバム契約取れたら、

是非キミをフューチャリングしたいんだけど、

それまで待てないから、自分の曲で1曲歌ってくれないかな」

「この曲で?」

「そうだね。もう少しエディットするけど。

とにかくマネージメントにも話すからさ。

彼らが動かなきゃ、自腹で経費出すし、

セッション代としてアドバンスで半金渡すよ」

こんなやり取りを経て、2週間後にスタジオとエンジニアを押さえ、

ヴォーカル録りをすることが決定した。

その件をルチアナに報告すると、

「サイコー!何か起きればいいわね」と喜んでいたが、

相変わらず元カノを引きずっていた自分には、

1人の女性というよりもヴォーカリストとしての

レベッカにしか興味が持てなく、

後日エディットしたデモ曲を渡すためにカフェで彼女に逢った時も、

ビジネス的な対応してしまった。

そんな調子でボーカル録りの日を迎えることになっていくのだ。

続く

Tomoki




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?