見出し画像

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想(ネタバレあり)

 いや、本当に良かったわ。しつこいけど、しばらく頭から離れないくらいには良かったです。ただ、一回だけでは全部記憶し切ってくれない人間の脳が憎い!(笑)

 とゆーことで、昨日観に行った、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の感想をかなり勢いで書いていきます。一度見ただけなので、間違いや勘違いが含まれている可能性が無きにしも非ずなことを予めご了承くださいまし。勿論ネタバレありで、深い考察・解説要素はなく、"感想"どまりというか、それ以上でもそれ以下でもないものになりますので、何卒。



1.繰り返しの、その先へ

 まぁ、タイトルにある反復記号𝄇からも考えられる安直な感想にはなるんですが、見終わった後に色々考えているとテーマ、メッセージ性としては、この通りに受け取れたものが多かったので、この結論でスッキリできた自分がいました。

 単純に世界設定面でも:序から始まったこの新劇の世界に対してループしてるんじゃないかっていうとこも、今回カヲルくんが""円環する物語""などと言っていたので、出回っていた考察通りな気がします。「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」とかの謎がやっと解って良かったです。

 で、ループつまりは繰り返しなんですけど、"その先へ"と付けたのは、シンジくん達が旧劇とは異なる人生を歩んだから。これに尽きます。
 作品の外側から見た単純なリメイクでは終わらせない、作品の中で生きている彼らの人生が旧劇とは違うものになるようにと。作品としての終りを私達は見るけれど、そこで終りではなく作品内の世界にはちゃんとその先がある、続いているんだというのが最後のシーンで想像できるのが本当に良かった。旧劇では申し訳ないけど、そういう想像は全くできなかったから…。旧劇との違いとして、

 シンジも、アスカも、レイも、繰り返し(エヴァの呪縛)の先に新しい居場所を見つけていったし。

 加持さんも、ミサトさんも、繰り返し(日常)の先の未来に新しい子を託すための最期を選んだし。

 ゲンドウやユイも、繰り返し(人類補完計画)の先にある世界で出会うことができたし。

 カヲル、マリも、繰り返し(ループ)の先にいる愛する人を迎えに行ってくれました。

 "先"は、"外側"、"超えた"、"上位"とかの認識で大丈夫です(敢えて表現統一していて、若干無理やりな解釈だと思われても仕方がないかも)。とりあえず上記以外のキャラ達も含め1人1人が、(旧劇と同じ人物像ではありながら)繰り返しの中で、もう一度はない、次こそは絶対に。と強く意志を持ち、歩みを止めず、進んでいく姿が強く映ったということ。その姿は胸に迫るものがあったということが伝われば幸いです。

 あとは、マヤさんの「これだから若い男は」と繰り返す言葉の真意が最後の最後で変わるところや、シンジのシンクロ率∞が収束して0と表示されるところなんかも、"繰り返しの、その先へ"と想えなくはないです。エンドロールで流れた宇多田ヒカルさんの「Beautiful World」もDa Capo Versionと表情を変えているし、何より単純に、この『エヴァンゲリオン』という作品そのものが、セルフオマージュを交えながら"繰り返しの、その先へ"、今作を以って位置づけを変えたこと、変えなければならない、というのは殆どの人が想うところかもしれません。

 改めてまとめると、旧劇と似たような流れでありながらも、どこか異なる部分を徐々に魅せてくれた新劇ですが、本当に満足のいくエンディングだったということです。率直に『エヴァンゲリオン』という作品でこういうのが見たかったから…。旧劇のエンディングがあまりに悲しくて『エヴァンゲリオン』を好きと言い切れない自分がいてそれが凄く嫌だったんですけど、:破を見て衝撃を受けた後それは殆ど無くなり、今作を見て完全に無くなりました。気持ちが綺麗に救われた。やっぱり最終的にはハッピーエンドが好き。



2.初めての感覚が引き出す感情

 なんかそれらしい見出しをつけましたが、何が言いたいかと言うと、映画体験として初めて味わうものがあったということです。それこそ、体験してきてもらったら絶対わかるから。としか言えないような感覚。語彙力なくなるくらいの(笑) この作品に限らず、映画館映えする、映画館で見るからこそ、味わえる感覚っていうのはあって、臨場感、没入感なんかが分かりやすいところですよね。昨年に『:破』の再上映があって、当時映画館で見れなかった身としてはくっそ観に行きてえ!と思い、観に行ったところ、やはり実際家のモニターで見るのとは違うものを身体全体で味わえました。だから余計に好きな所を好きだと再認識できたのも良かった。

 そして今作は、そういう感覚にとどまらず期待以上のものを沢山くれて。ホント感覚的な事だから適当な言葉が中々見つからないんですが、何というか一言でいうなれば、"退屈しない"つくりだったんです。映像も音響もセリフも、何もかもが。この作品上映時間175分ってことで3時間近くやったらしいんですけど、それを感じさせないつくりになってたのマジで凄いと思って…。見てる最中も、思考しながら見ているシーンもあれば、呆然としてしまうシーンもある、湧き上げってくる感情も様々。だけど、疲れはしないし、常に程よい新鮮さや刺激が走ってる。パンクしてしまうくらい情報量自体は物凄いけれど、それで余白が埋まってしまうような提示の仕方ではない。違和感があるのに、嫌じゃない違和感でその極限がどこかへ誘ってくれている。どっからどう体験しても、一度今作と対峙したら終わるまで目が離せないシークエンスで見事に埋められていたと思います。

 時間軸や空間軸の意識が強く、シーンが変わっても舞台となる場所同士の距離や、移動時間、体制なんかが曖昧にならない。同軸で動いているのなら、それぞれの場所で、それぞれのキャラにおいて、ちゃんと時間や空間が作用している。この辺りは、実写映像のマインドがしっかり出ている証拠なのかなとも思います。しかも、エヴァは同時に動いているものが多いから、本当に大変だったろうなぁ…凄えなぁ…と心の底から思います。

 邪念が一切入ってこない、作品外に意識が飛ばされないって、作品に夢中になって時間を忘れている感覚そのもので、凄い尊いものだと思うんです。中々自分からそうしようと思ってもできる事じゃないから。環境やその時々の心理状態にもよるだろうし、いくつかの条件をクリアして、完全に作品とコミュニケーションが取れたような時にしか味わえない感覚。それが終始、最初っから最後まで続いてくれた。そして、その感覚は視聴中も、視聴後も今迄にない感情を引き出してくれました。きっと、僕なんかよりずっと前から今作を待ち望んでいた人はもっと凄い想いをしたんだろうなって思います。この感覚は一度きりで、二度目以降の視聴では絶対にないと思います(ただ、他の感情が湧き上がってきてくれるはず)。



3.特に印象に残ってる、好きなとこ

 ひたすら、特に印象に残ってる好きなシーンとかセリフをいくつか書き残していきます。キリないっちゃないので、厳選したつもり…。

●アスカがシンジにレーションを口に詰めこむシーン。旧劇の「首絞め」なんかを彷彿とさせるシーンではあったんですけど、その前後からもう彼女の優しさからであることは明らかだったので、シンジをそっとしておいてやってとは思いながらも、いいねいいね!と思いながら見てました。映像自体も一人称視点みたいでリアルで凄かった…。初めてみる感じだった。

●別レイが第三村で色んなことを学んでいくシーン。基本的に皆の事が好きだけど、特に綾波レイが好きな自分としては、これ以上ない幸せの連続だった。シンジの言葉を借りるけど、綾波は綾波だったもの。一々、可愛かったなぁ…。制服着させてくれたおばちゃん達まじナイスよ。あと、ラストの髪が伸びたレイが出てきて「そっくりさん」の記憶も持ち合わせていてもう完全に救われた。ありがとう。

●シンジがもう一度、エヴァに乗る事を決意した諸々のシーン。ミサトさんやミドリ、サクラのやり取りがあるとこですね。泣きとしてはあそこがピークだった。もうずっと泣いてた。こういう思い遣りのぶつかり合いみたいなのって涙腺を確実に仕留めてくるんよな…。そして、ここでもキスをした旧劇とは違う、"その先へ"を示してくれたシーンだったと思います。よかったなぁ…ミサトさんの最期も悲しくて泣いてたけど、むっちゃ素敵でした。

●戦闘シーンは、アバンのパリでのも好きだけど、南極でのが凄かったな。付いていくのに必死だった。あれだけスケールのデカい激しい事をしながらも、キャラの台詞を細かく挟んで感情移入まで促されたら堪らんです。戦っている機体、人全員カッコよかった。あと、「マイナス宇宙」とか「空想上の架空」とか、終盤でエヴァらしい新用語のラッシュは最高でした。何だろね、言葉選びのセンスが良すぎるんだよな(笑)

●ゲンドウのアディショナルインパクトが発動して、映像表現が見たことないものになっていくシーン。ミドリが「なんか変!」って見事に代弁してくれた(笑) あの凄まじく不気味なんだけど、この世の美しいでは表現できないものをまとっている感じ、質感は中々表現できないと思うというか、ホント初めて見るやつだった。もっかい見たいシーン、ナンバー1です。

 こんな感じですかね。他にも好きなシーンあった気がするので、早く2回目以降見たいし、円盤も欲しいわね。



4.さいごに

 ほとんど勢いで書いたので、ちぐはぐな文章になってるかもですが、ここで出来るだけ綺麗にまとめたいと思います。

 自分は放送当時から『エヴァンゲリオン』という作品を追ってきた身ではないし、想い入れはむっちゃ強いって訳ではないけれど、それでも一つの作品の終りに立ち会えた事自体は感慨深いものがありました。エンドロールが沁みる沁みる…。

 数年前にTVシリーズと旧劇を初めて見た時に、何だこれは…よくわからんけど、凄え。ただ、このエンディングがなんか…皆あんなに頑張ってたのに悲しすぎないか…余韻が最悪じゃん…っていうのが率直な感想としてありました。

 やっぱキャラはちゃんと作品内で生きてて、送ってきた人生があって、これから続いていく人生だってあるはずで…っていう、生の実感みたいなものを一番大切にして普段からアニメなどの作品に触れている自分からすると、キャラはこんなにも好きなのに、どうしても作品としては好きにはなれなかった。

 けど、そのモヤモヤを徐々に払ってくれたのが新劇でした。『:序』では明らかに人と人との温もりが増していた…。『:破』ではシンジが本能に限りなく近い意志を示してくれた…。『:Q』では何だかんだあっても、最後はアスカとレイがシンジを迎えに来て連れていってくれた…。そして、今回の『シン』では終りだけど、続いていく"その先"を魅せてくれた。完全に救われました。キャラの人生も、自分のモヤモヤも。細かい世界設定は理解し切れていないのに、ここまで面白い!と感じさせてくれるのは、キャラ全員の人間性が尋常じゃないくらい強く出ているからだと思うし、だから自分はこの作品が大好きなんだと今は自信を持って言い切れます。

 今作を制作してくださった皆様、その他関係者の皆様、ずっと心に残り続ける素敵な作品をありがとうございました!感謝の気持ちでいっぱいです。こんなご時世ですが、もう何回か劇場に足を運ぼうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?