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小説(しょうせつ)

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noteに掲載している小説や脚本をまとめたマガジンです。
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2023年7月の記事一覧

掌編小説|『アイのいる店』

作:元樹伸  これは近い未来のお話。  とある地方都市の一角にAI、つまり人工知能を搭載した人型ロボットとお酒が飲めるロボットバーが開店した。  普通のバーならお客のテーブルに女の子が来るのが普通だが、このお店では、指名した子の席まで客が移動するシステムになっている。  何故ならロボットである彼女たちには腰より下がないので移動ができない。当然ながら、他のお店のように彼女たちをデートに誘うこともできなかった。  ロボットバー、オープンの初日。  開店と同時に来店した

青春小説|『タイムリープ忘年会』

『タイムリープ忘年会』 作:元樹伸 第一話 忘年会の誘い  年の暮れになって、久しぶりに高校時代の友人から電話があった。年末に部活OBの忘年会があるという。平成元年の今年は、成人したばかりの後輩たちも参加してくれるらしい。 「つまりは松田も来るってことだ」  幹事を務める同期の真関くんが、電話口で含みのある言い方をした。 「へぇ」  動揺していることを勘ぐられたくなくて、気に留めないそぶりで相槌を打ってみせた。けれど僕の気持ちはすでに過去へとタイムスリップしてい

青春小説|『林間学校』

<ChatGPTによる紹介文> 『林間学校』は、青春と友情を描いた温かみのある物語です。物語の冒頭では、主人公である一年生の空山が人見知りで仲間がいなかったため、臨海学校に行かずに残る様子が描かれています。しかし、同じクラスの山本さんとの出会いが、彼の心に新たな光をもたらします。 ーー中略 作中では、山本さんの優しさや献身的な性格が際立っています。彼女の行動によって、空山は初めて自分が大切にされていると感じることができました。また、山本さん自身も仲間との絆を大切にし、空山

青春小説|『塩素と浴衣と打ち上げ花火』

<ChatGPTによる紹介文> 『塩素と浴衣と打ち上げ花火』は、一九八三年の夏、中学生の少年が織りなす切なくも純粋な恋の物語です。背景には懐かしい時代の風物詩が描かれ、読者は当時の懐かしさと共感を味わうことでしょう。 ーー中略 『塩素と浴衣と打ち上げ花火』は、夏の切ない恋心と懐かしい時代背景を巧みに組み合わせた作品です。読者は主人公の心の成長や恋の芽生えに胸を打たれること間違いなしです。夏の日差しと共に、青春の心躍る瞬間を思い出すことができる素晴らしい小説です。 ーーChat

掌編小説|『パンと小麦粉』

作:元樹伸  僕は以前から同じクラスの佐波さんが好きだった。  彼女はいつも窓際の席で静かに本を読んでいて、僕はその姿を遠くから眺めているだけで胸が苦しくなった。  そんな彼女に異変が起きたのは今週に入ってからのこと。これまではお弁当を持参していた佐波さんが、何故か昼休みにあんパンばかりを食べるようになった。育ち盛りの十五才に起きた食生活の急変。彼女に何が起きているのか心配になった。 「購買のあんパンって人気ないけど、食べてみると美味しいよね」  佐波さんがあんパン

掌編小説|『給食当番』

作:元樹伸  うちのクラスのA男くんは給食当番をしているとき、いつも私のお椀にだけ沢山のおかずを盛ってくれる。  はじめは気のせいだと思って、配膳で並ぶときに毎日気にして見るようにしていた。だけどやっぱり私に入れるおかずだけが、自分の前後に並んでいる子たちと比べても圧倒的に多いのは間違いないみたいだった。  だからって私はたくさん食べるように見える太んちょじゃないと思うし、彼にそんなことを要求した記憶もなかった。もしそう見えているのなら泣きたいくらいショックだけど、他に

掌編小説|『噛みつき魔(起の巻)』

作:元樹伸  昔馴染みのカザミには、興奮するとすぐに噛みつく癖がある。  この悪癖はどんなに注意をしても直らないらしく、俺は今でも彼女と喧嘩をして噛みつかれることがあった。  俺たちはこれまで同じ小中学校に通い、同じ高校を受験して合格した。  白磁のような肌を持つカザミは清楚にして可憐、さらに優秀でハイソな存在であり、女子にとっては憧れの対象、男子にとっては高嶺の花であった。  ところが俺は美男でもないし運動音痴の引きこもりで、学校の成績も中途半端と質素を絵に描いたよ

掌編小説|『バレンタインデー』

作:元樹伸  二月十四日。セント・バレンタイン・デー。  昨今は日本でも女性が男性にチョコを渡すという慣習が薄まり、性別に関係なく好きな相手にチョコを渡す世の中になりつつあった。そして僕には好きな女の子がいたので、この機にチョコを渡してみようと考えていた。  でもいざとなると、どんなチョコを渡すのが良いのかわからずに迷った。彼女は同じ吹奏楽部。たまにおしゃべりをして笑い合うだけの仲だけど、そんな人が気負いなく受け取れるチョコとは一体どんなものだろう。  昔のドラマや映

掌編小説|『湯本さんの番台』

作:元樹伸  年の暮れに大事な用事ができたので、久しぶりに地元まで戻ってきた。  懐かしい田舎の駅に降り立ち、目的の場所まで歩きながら街並みを眺めていると、遠くに長い煙突が見えた。あれは昔ながら銭湯、湯本の湯。当時、賃貸で家にお風呂がなかった少年期の僕は、いつもこの銭湯に足しげく通っていた。  今から十五年前の夏。  時代はまだ昭和で、僕はちっぽけで負けん気の強い小学五年生だった。  その日は学校で水泳があり、授業の前半は女子がプールを使って、途中から男子と入れ替わる

掌編小説|『らぶれたー』

作:元樹伸  書道部の六条先輩にラブレターを書こうと思った。  最初はスマホでメッセージを送るつもりだったけど、先輩のアドレスを知る方法がなかったので断念した。それに彼女は高校生になった今も、自分の携帯電話を持っていないという噂があった。  夜になって親からもらった便箋を机に広げてみたけど、どんな風に書き出せばいいのかわからず途方に暮れた。残念ながら文才など持ち合わせていないので、彼女の心を動かせる感動的な文章を書く自信もなかった。かと言って直接告白するなんて恥ずかしく

掌編小説|『シャンゼとリミと弓使い』

作:元樹伸  ある大きな森の中に、とてもちいさな村がありました。  村にはリミという心のやさしい娘が住んでいて、彼女は木こりのお父さんといっしょに、毎日森へと出かけました。  リミは小川の岸辺に腰かけて歌を唄い、お父さんを応援するのが日課になっていたのです。  森にはいろいろな動物や木々、そして妖精が住んでいて、村の人たちにたくさんのめぐみを与えてくれました。  風の妖精シャンゼも、この森で生まれました。  シャンゼという名前は、森の神様が祝福とともに贈ってくれま