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【そのNFTはいつか消える?】NFTの永続性について - 作品データがIPFSにあっても安心してはいけない理由

NFTが生まれたことで、デジタルデータの取引が急速に盛んになりました。

「ブロックチェーンによって中央集権的なプラットフォームに頼ることなくデジタルデータが永続的な価値を持ったことで、これまでにない巨大な市場が生まれた。」

NFTを知った当初、そのように理解していました。
しかしながら、現在取引されているNFTは、永続性という観点では疑わしいものが溢れています。

ブロックチェーンに書き込まれているのはメタデータのURIだけ

NFTはイーサリアム等のブロックチェーンに、そのトークンIDと所有者のアドレスが刻まれています。尚、多くのNFTはブロックチェーンに作品データが記録されていません。作品のメタデータへのURIだけが書き込まれている場合がほとんどです。CryptoPunks等の特殊なフルオンチェーンNFTを除いて、OpenSea等で流通しているNFTのほとんどがそうなっています。画像や動画といった巨大なデータをブロックチェーンに直接書き込むのはコストが高過ぎるためです。

ブロックチェーンに記録されているメタデータのURIは、ブロックチェーンの外にあるメタデータファイルを指し示しています。

また、メタデータは作品の名前や説明、作品データへのURIが記録されているだけで、メタデータにも作品データ自体は記録されていません。

ブロックチェーン、メタデータ、作品データの関係

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メタデータはどこにある?

ブロックチェーンの外にあるメタデータですが、その保管場所は個々のNFTによって異なります。いくつかのパターンを確認してみます。

① OpenSeaでメタデータが "Centralized" と表示されている作品の場合

スクリーンショット 2022-02-12 18.32.06

これはOpenSeaのサーバー上にメタデータが置かれています。
https://api.opensea.io/api/v1/metadata/{{コントラクトID}}/{{ID}} というURLが割り当てられていました。
つまり、この作品の寿命はOpenSea次第となります。

② OpenSeaでメタデータが "Frozen" と表示されている作品の場合

スクリーンショット 2022-02-12 19.10.41

これはIPFS上にメタデータがあります。
IPFSとは分散型のファイルシステムで、ブロックチェーンのように中央集権を必要とせずファイルを保管できる仕組みです。詳細は後述します。
メタデータURIとして https://opensea.mypinata.cloud/ipfs/{{CID}} が割り当てられており、 ipfs://{{CID}} でもアクセスできます。
つまり、OpenSeaで生成した作品であってもフリーズしておけばOpenSeaに関係なくメタデータがIPFS上に存続します。

③ CryptoPunks の場合
元祖NFTであり非常に人気のある CryptoPunks ですが、NFTの規格であるERC-721登場前に作られたものであるため、メタデータURIという概念がありません。その代わりイーサリアム上にその画像データが直接書き込まれています。つまり、CryptoPunks の寿命はブロックチェーンの寿命に依存します。NFTはブロックチェーンの永続性を元に成り立っているため、CryptoPunksは最初のNFTプロジェクトでありながら最長の寿命を持っていると言えます。
CryptoPunksはその作品データが非常に軽量ゆえにブロックチェーンに書き込めている稀なケースですね。

尚、CryptoPunks を ERC-721 に載せた Wrapped Punks というものがありますが、Wrapped Punks のメタデータは wrappedpunks.com のサーバー上に配置されています。しかしながら作品データ自体がイーサリアムに存在するので、やはり CryptoPunks に限ってはメタデータURIの永続性はあまり気にする必要がありません。

④ Mutant Ape Yacht Club の場合
OpenSeaにおいてCryptoPunks に次いで人気の Mutant Ape Yacht Club ですが、メタデータは boredapeyachtclub.com という独自のサーバーに置かれておりIPFS化されておりません。つまり、Mutant Ape Yacht Club の寿命はその運営組織に依存しています。
累計24万ETH以上売り上げている実績あるNFTプロジェクトにおいても、その永続性はブロックチェーンやIPFSとは無関係な独自サーバーの寿命次第となっています。

作品データはどこにある?

続いて、作品データの保管場所ですが、これも個々のNFTによって異なります。一般的にメタデータがIPFSに置かれていれば作品データもIPFSに、メタデータが独自サーバーに置かれていれば作品データも同じサーバーに置かれています。

システムの寿命は、そのシステムを構成している要素の内、一番寿命の短い要素によって決まります。せっかくメタデータをIPFSに配置していても、作品データを独自サーバーに置いてしまうと、永続性が大きく下がります。ちなみに Mutant Ape Yacht Club のメタデータは独自サーバーに保管していますが、作品データはIPFSに保管されています。

IPFSなら本当に安心?

IPFSはブロックチェーンのように中央集権を必要とせずファイルを保管できる仕組みですが、その永続性はブロックチェーンとは大きく異なります。

ブロックチェーンは、参加している全てのノード(マシン)が全てのデータを保持します。ブロックチェーンに参加しているノードがすべて消えない限り保存されているデータは残り続けます。

一方、IPFSに参加しているノードは、すべてのデータを保持しているわけではなく、必要になったデータだけ保持して、必要なくなったら破棄します。
偶然すべてのnodeから破棄されると、そのデータはIPFS上から消滅します。

IPFSからデータを消滅させないためには、ピン留め(pinning) といって、どこかのノードに「このファイルを必ず保持しておくように」と設定しておく必要があります。自前でそのようなノードを用意するか Pinata のようなサービスを使います。IPFS上のデータの寿命は、そのデータをピン留めしているノードの寿命と、ピン留めしていないノードがデータを保持している確率によって決まります。

ピン留めしているノードによって大きく信頼性が変わってしまうIPFSですが、特定のノードに頼らずファイルを永続化させるための仕組みとして Filecoin があります。Filecoin は、ファイルをアップロードするユーザーが使用料を支払い、ストレージを提供する側がそれを対価として受け取ります。ストレージ提供側にインセンティブを発生させることで、データの永続性を確保しているのです。OpenSeaのフリーズ化は、このFilecoinを利用しています。

NFTの永続性まとめ

NFTの寿命を決める要素は以下の3つです。
 1. ブロックチェーンの寿命
 2. メタデータの寿命
 3. 作品データの寿命

1. ブロックチェーンの寿命を疑ってはNFTを扱うことができないので、これは無視して良いかもしれません。ただしイーサリアムのようなパブリックチェーンではなくプライベートチェーン上にあるNFTの場合は、運営元の信頼によるでしょう。LINE Blockchain や 楽天のブロックチェーンの場合、その寿命はそれぞれの運営会社の寿命より短い可能性が高いでしょう。

2. メタデータの寿命 と 3. 作品データの寿命は、それぞれ配置されている場所によって決まります。独自サーバーに保管されていれば、そのサーバーの信頼性次第。IPFSならばピン留めされているのか、Filecoinを使用しているのか確認しましょう。また、購入後は購入者自身でもピン留めをした方が安心です。

ブロックチェーンという新技術によって、急速に盛り上がりを見せるNFT市場ですが、すべてのデータが永続的ではなく、そのリスクを理解して利用することをお勧めします!

不明な点、ご感想などあればコメントよろしくお願いします!


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