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トークノミクスを理解する

前回、ミームNFTプロジェクトにおいては投機期待を高めることが大切ではないかという話をさせていただきましたが、多かれ少なかれweb3プロジェクト全般においてそれは大切です。なぜなら、これまでお金になりにくかったところに経済合理性をもたらす事こそ、web3の社会的意義の一つだと僕は思うからです。そして、この投機期待を作るために必要なのが今回紹介するトークノミクスです。

少し難しい内容ですが、web3周りで投資をやる人、商売をやる人は必ず覚えておくべき知識なので解説します。

トークノミクスとは


まずトークノミクスとは、「Token」と「Economics」が組み合わされたweb3で使われる造語です。「トークンエコノミクス」や「トケノミクス」などいくつか呼び方がありまますが、概ね同じ意味です。(おそらく)

一般的には、トークン経済の仕組み全体を表す言葉ですが、これと言った明確な定義はないので人によって意味合いが微妙に変わります。トークノミクスを理解できるようになると、以下のようなことに役立ちます。

  • トークンの需要を作り出すことができる

  • トークンの価値を上昇させたり維持させたり、コントロールすることができる

  • 参加者にインセンティブを作ることができる

  • 投資家に「なぜこのトークンの価値が将来上がるのか」を合理的に説明できるようになる


「トークン」と言うと仮想通貨のことを指してるように思いますが、NFTプロジェクトにおいてもNFTの価値を上げるためにトークノミクスを考えることは重要な要素です。

需要と供給はトークノミクスで作り出す


トークノミクスの詳しい説明の前に、一般的な経済の話として「需要と供給」「インフレとデフレ」の関係について理解する必要があります。

モノの値段は、買いたいという需要量と売りたいという供給量の力関係で決まります。売られる量より買われる量の方が多ければモノの値段は上がります。これはインフレと呼ばれます。供給より需要が多いことでインフレが起きやすくなります。
逆に、買われる量より売られる量の方が多ければモノの値段は下がります。これはデフレと呼ばれます。需要より供給が多いことでデフレが起きやすくなります。

これはトークンでも同じ理屈で、そのトークンの買われる量や売られる量でトークンの価格が変わります。投資家に「このトークンを買っておけば将来儲かるかも」と思ってもらうために、そのプロジェクトがうまくいったら、トークンの価格が自然と上がるような仕組みになるよう設計するのが理想です。

このような仕組みを考えるのがトークノミクスの役割です。

主なトークノミクスの設計要素

1,トークンの使い道(需要の創出)
2,トークン発行の仕組み
3,総発行量と流通量
4,トークンアロケーション
5,ロックアップと解除
6,Burnの有無
7,外部経済圏との連携


一つずつ見ていきます。

1,トークンの使い道(需要の創出)

トークノミクスにおいてトークンの使い道がは「=需要の創出」なので、言うまでもなく重要です。例えば、EthereumにおけるETHは主に取引手数料としての使い道があります。Ethereumというネットワークが使われると、ETHは取引手数料としての需要が高まるような仕組みになっています。その他、別のプロジェクトではネットワークのルールを変更する時の投票権で使われたり、何かのイベントの参加券にトークンが使われたりすることがあります。

2,トークン発行の仕組み

Bitcoinの最大発行量は2100万BTCで、すでに1940万BTCが発行されています。これは全てマイニングによる発行です。Ethereumの場合はETHのステーキング報酬によりETHが発行されますが、Bitcoinのように発行上限はありません。このようにトークン発行の仕組みは様々です。既に全部のトークンが発行済みで今後増えることはないというプロジェクトもあります。

3,発行量と流通量

これも混乱してしまいそうですが、発行されたトークンが全て市場で売買可能だとは限りません。BTCは1940万BTCが発行されてますが、実際に流通しているのは1500万BTC程度です。これは、マイニング事業者やクジラ(超大口保有者)が何年もウォレットから動かさずにいるからです。このように、一部のウォレットに何かしらの事情で長期的に動かされずに存在してるトークンがあります。このあたりもトークノミクスを検討する時に考慮する要素の一つになります。

4,トークンアロケーション

トークンアロケーションとはトークンの割当方式のことです。「プロジェクトローンチ初期にどのような割合でトークンを分配するか」と言い換えてもいいでしょう。例えば、20%を財団で、20%をベンチャーキャピタルに、10%を開発者やテストネット協力者にエアドロップに…といった割り当てのことです。「トークン保有=プロジェクトの保有」という考え方に照らし合わせると、プロジェクトの経済圏に特権階級ができず、かつ持続的にエコシステムが稼働する割合でのアロケーションが理想ですが、一部にトークンが偏りすぎてると批判を受けるプロジェクトも存在します。尚、トークンの割当比率は期間により変動します。

5,ロックアップと解除

web3のプロジェクトでは、VC(ベンチャーキャピタル)から資金提供を受けるかわりに、一定割合のトークンを渡すケースが一般的です。この時にローンチから一定期間はウォレットから動かさないという取り決めが行われることが多く、これを「ロックアップ」と言います。そのロックアップ期間が終わるとVCはいつでもトークンを売ることができる為、売り圧になる可能性があります。一般的にはロックアップが解除されても市場になるべく影響を与えないように少しずつ売却されていきます。

6,Burnの有無

トークンが発行され続けたり、誰かに売られたりすると、市場の供給量が増えて、トークンの価格は下がりやすくなります。もちろんそれ以上の需要を生み続ければ問題ないのですが、そんなに簡単は話ではない為「Burn(焼却)」という仕組みを導入することで、その対策を取るプロジェクトもあります。要するに、発行されたトークンを意図的に間引いて、希少性の維持機能をトークノミクスに組み込もうとする方法です。
例えば、Ethereumは取引手数料に使われた一部がBurnされるように設計されています。

7, 外部経済圏との連携

プロジェクトの外にある経済圏と繋がることで、収益の確保や流動性を高めようとするプロジェクトが増えています。その為、一見そのプロジェクトに関係のなさそうな会社の経営が悪化すると、それに連携された他のプロジェクトまで影響が派生することがあります。これはトークノミクスの理解が複雑になりやすい大きな要因です。2022年のTerraショックやFTXショックではまさにこれが起きたことで、暗号資産経済圏全体に影響が及びました。

時価総額とFDV


現在のトークンの価値を測る指標として、トークンの価格の他に時価総額とFDVが存在します。

・時価総額
時価総額とは、現在流通している額の総数で、現在の価格×流通量で計算できます。

・FDV
FDVとは、Fully Diluted Valuationの略で、日本語では「完全希薄化価格」といい、今後流通予定のものを含んだ数量の額の総数を指します。現在の価格×最大供給量で計算できます。

例えばあるトークンAの現在の価格が1ドルだとします。100枚のトークンが流通しており、最大供給量は1,000枚です。
この場合、時価総額は1×100で100ドル。FDVは1×1000で1,000ドルとなります。

時価総額とFDVの比率は、現在供給済みのトークンの割合を示します。トークンAの場合は1000÷100で10になり、より1に近い小さい数のほうが残りの供給量が少ないです。現在進行形で放出が進んでいるBitcoinは2100÷1940で1.08でかなり1に近い数字です。

時価総額とFDVに大きな差がある場合は、この比率が大きくなります。まだ供給予定のトークンの多くがロックされており時間が経過するごとに放出され希薄化が進みます。

どちらかといえば、プロジェクト運営側というよりも投資家視点になりますが、運営側も投資家がどのようにプロジェクトを見ているのかを理解することは大切です。プロジェクトの成長速度より早いトークン供給によるインフレは大きな売り圧になる傾向があります。ですので、持続可能なプロジェクトを作る際には運営側もそこは気をつけて設計する必要があるでしょう。

まとめ


トークノミクスについては僕も勉強中のため、調べながら書き連ねましたが100%を理解するには経済学、心理学など様々な分野も関わるためとても難しい分野だなという印象を持ちました。

もちろんどれだけ完璧だと思うトークノミクスを設計をしても、プロジェクトの成功は外部環境やタイミングも影響するので成功するかどうかはわかりません。が、少なくとも失敗の確率を減らす役には立つのではないかと思います。

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