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法定通貨は安全か?

 フランスでは与党連合が議席を大幅に減らし、左派連合が第一党になったようです。年金受給年齢の引き上げが国民には不評だったようで、この先、揺り戻しがあるかもしれません。与党連合は財政規律を守るために、年金受給年齢の引き上げを実行しましたが、財政規律を守る、というのは国民には耐え難いようです。
 どこの国も同じですが、政府の予算は増え続けます。それが、経済規模の拡大に伴う税収増なら良いのですが、実際には経済の拡大以上に予算は増え続けます。ではその不足分はというと国債を増発する、すなわち、法定通貨を刷って発行量を増やすという手段に出ます。インフレというのも結局は通貨の発行量が増え、価値が下がった結果、物の値段が相対的に上がるという側面があります。
 アメリカもコロナ禍でドルを大量に発行しました。結果としてインフレが起こったという結果に見えます。今はその反動で引き締めということで発行量を減らしていますが、別にドルを発行するのをやめたわけではありません。この先もずっと法定通貨は発行され続けるでしょう。
 日本も当然のことながら、日本円を大量に発行しています。ずっとデフレでしたが、ここに来てインフレ傾向になっています。日本の場合、異次元金融緩和で大量に円を刷りまくったわけですが、なかなかインフレにはならず、デフレでした。それには様々な理由があるのでしょうが、結局日本経済が縮小均衡だったため、いくら円を刷っても、使ってくれる人がいなかったのかもしれません。そして、そろそろ経済が少し上向きになってきたと思ったら、海外で色々なものが上がり、それを買おうとすると、円が価値を下げてた、という状況に見えます。

 どの国も同じで、国民の見かけ上の利益増への目眩しを続けなければいけないので、法定通貨は発行量が増え続け、価値がどんどん下がるというのが実態です。
 この先、ビットコインがどういう位置付けになっていくのかはまだ不透明ですが、仮にそれなりの資産として一般化した場合、厳密に発行量が決まっているため法定通貨とは真逆の資産となります。金に例えられますが、金は希少価値があると思われていますが、それは現在の調査の結果であり、枯渇したわけではありません。極端ですが、もし、月に大量に金があったらどうなるでしょう。
 過去にスペインが強大だった頃、スペインはアメリカ新大陸から大量に銀を持ち込み、結果として最後は銀の価値が下がりました。金もその可能性はあります。それと比較してもビットコインの発行量は増える要素がありません。もちろん、ビットコイン保持者、マイナー、開発者の3者が合意の上発行量を増やしましょうというコンセンサスを取り、プログラムを改変すれば発行量を増やすということができる可能性があります。ただし、誰も得をしません。なのでこれが実行される可能性はかなり低い。

 どこまでも発行量を増やし、価値を下げ続ける法定通貨に対し、発行量が決まっていて、価値を下げる要素が少ないビットコイン。法定通貨が下がり続けるなら、そのリスクヘッジとして発行量が増え続けないもので防衛するという考え方はアリではないでしょうか。
 最近、ドイツ政府が押収したビットコインを売却しているようですが、価値を下げ続けるユーロを手元に増やし、価値が下がりにくいビットコインを売却するという考えようによっては愚かな策をとっているようですが、果たして結果、どうなるのでしょうか。10年後くらいには答えが出ているかもしれません。

 法定通貨は絶対だという考え方があるようですが、法定通貨はリスクだらけです。ユーロはヨーロッパの結束に頼っています。しかし、今、ヨーロッパでは極右政党が勢力を伸ばし、EU内はガタガタしています。毎日、世界情勢の不安を報じ続ける報道を見ながらも、法定通貨は絶対に大丈夫だと思っていられるのは不思議といえば不思議です。

 一方で、見かけ上、量が増えていかないとみんな不満が溜まるので、価値は下がれど、量は増える、というインフレ通貨の誘惑は断ち切れないかもしれません。だとするとビットコインのようなデフレ資産は不人気になる可能性もあります。たとえ、10万円が時間が経って昔の5万円の価値しか無くなっても、今、15万円持っているほうが満足感が高いかもしれません。実は昔の7万5千円の価値しかなくても減った感じはしない。この感覚に抗えるかどうかは人の心理を考えると厳しいかもしれません。

 絶対に確実な資産はなかなか見つかりませんが、法定通貨が一番安全だと考えるのは少し、いや、だいぶ危険なような気がします。

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