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狂おしいほど美しいアンの言葉⑨―――やさしくするつもりがあれば

when people mean to be good to you, you don’t mind very much when they’re not quite⁠—always. 
    (L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)

相手に良くしようとするつもりがあれば、まったくそうでないときでも、まったく気にならないものでしょう……いつだって。


〈アンの狂美ポイント〉
やさしくされなくても、「相手にはやさしくするつもりはあるんだ」と思い込めば、やさしくされた気持ちになれる 


〈この言葉の背景〉
男の子の養子を求めていたマリラ(後の養母)は、手違いでやって来てしまったアンを引き取ろうとはみじんも思わなかった。翌日、マリラは馬車を出し、仲介したスペンサー夫人のところにアンを連れていく。ただ、その場所は少し遠いところにあり、二人だけのドライブの時間となった。プリンスエドワード島の美しい景色が続く道中、マリラはアンに生い立ちについて尋ねる。そして、その辛い身の上話を聞く中で、かつてアンを引き取った人たちがアンに良くしたのかとマリラが質問する。そのとき、アンは上記の言葉を返した。


〈周辺の原文〉
“Were those women⁠—Mrs. Thomas and Mrs. Hammond⁠—good to you?” asked Marilla, looking at Anne out of the corner of her eye.
“O-o-o-h,” faltered Anne. Her sensitive little face suddenly flushed scarlet and embarrassment sat on her brow. “Oh, they meant to be⁠—I know they meant to be just as good and kind as possible. And when people mean to be good to you, you don’t mind very much when they’re not quite⁠—always. They had a good deal to worry them, you know. It’s very trying to have a drunken husband, you see; and it must be very trying to have twins three times in succession, don’t you think? But I feel sure they meant to be good to me.”
Marilla asked no more questions. Anne gave herself up to a silent rapture over the shore road and Marilla guided the sorrel abstractedly while she pondered deeply. Pity was suddenly stirring in her heart for the child.
      (L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)

「あんたは、そこの奥さんたち――トーマスの奥さんやハモンドの奥さんから良くされたのかい?」と、マリラは目の端でアンを見ながら尋ねた。
 アンは身をよじりながら「う~ん」と唸った。そして、彼女の繊細な小さな顔は突然赤くなり、その額に困惑の表情が現れた。
「えぇ……きっとそうするつもりはあったんです。トーマスの奥さんやハモンドの奥さんが、本当はできる限り私に優しく良くしようとするつもりだったことは、私にはわかっているんです。相手に良くしようとするつもりがあれば、まったくそうでないときでも、まったく気にならないものでしょう……いつだって。あの奥さんたちは、自分たちのことで精一杯だったんです。夫が飲んだくれだったり、続けて3組の双子が生まれたりしたら、とても大変だと思いませんか。私は、あの奥さんたちが私に良くしようとするつもりがあったってちゃんと感じられるんです」
 マリラはそれ以上何も言わなかった。アンは、海岸沿いの道に広がる歓喜の風景に全身を委ねるように見とれていた。マリラは馬を導きながら、深く思いをめぐらした。突然、彼女の心の中でこの子どもへの哀れみが湧き起こった。

『赤毛のアン』の物語の舞台となったプリンスエドワード島ではなくて、鎌倉の風景です

〈おことわり〉
原文の翻訳は編集部員によるものなので不正確かもしれません。
正しい訳は邦訳の出版物をご参照ください。

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