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狂おしいほど美しいアンの言葉⑥―――ガラス扉の向こうのケイティ・モーリス

it just broke my heart to leave Katie Maurice. She felt it dreadfully, too, I know she did, for she was crying when she kissed me goodbye through the bookcase door. 
      (L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)

ケイティ・モーリスと別れるとき本当に心が張り裂けそうになりました。彼女もそれは同じだったみたいです。私にはそれがよくわかりました。だって、彼女が私に本棚のガラス扉越しにキスをしたとき、泣いていたからです。

〈アンの狂美ポイント〉
ガラスに映る自分の顔を他人だと思い、その目から流れる涙を見て悲しみを知る


〈この言葉の背景〉
マリラに自分の生い立ちを語ることになったアン。孤児院に入る前、まだ小さかったアンはある家族の召使いとして働き、辛い日々を送っていた。遊び相手もいない。空想好きで話し好きのアンにとって、話し相手がいなかったことは辛かった。そこで架空の友達を作った。その貧しい家には本棚があり、片方の扉だけガラスが入っていた。そこに映る女の子を、アンは“友だち”にしたのだった。しかし、後にアンはその家族から見放され、また別の家族のところに行かなければならず、その“友だち”とも別れなくてはならなくなった。上記の言葉は当時の心情を語ったもの。


〈周辺の原文〉
We used to pretend that the bookcase was enchanted and that if I only knew the spell I could open the door and step right into the room where Katie Maurice lived, instead of into Mrs. Thomas’ shelves of preserves and china. And then Katie Maurice would have taken me by the hand and led me out into a wonderful place, all flowers and sunshine and fairies, and we would have lived there happy for ever after. When I went to live with Mrs. Hammond it just broke my heart to leave Katie Maurice. She felt it dreadfully, too, I know she did, for she was crying when she kissed me goodbye through the bookcase door. There was no bookcase at Mrs. Hammond’s.
      (L. M. Montgomery. Anne of Green Gables. Standard Ebooks.)

私たち(アンとケイティ)はよく本棚に魔法がかかっているふりをしたんです。その魔法さえ知っていれば、ガラス扉を開けたとき、トーマス夫人の保存食や陶磁器を置いている棚ではなくって、ケイティ・モーリスが住んでいる部屋に直接足を踏み入れることができるって。そうしたら、ケイティ・モーリスが私の手を引いて、花と太陽と妖精があふれている素晴らしい場所に連れて行ってくれて、私たちはそこで永遠に幸せに暮らすんです。だから、 ハモンド夫人と一緒に住むということになって、ケイティ・モーリスと別れるとき本当に心が張り裂けそうになりました。彼女もそれは同じだったみたいです。私にはそれがよくわかりました。だって、彼女が私に本棚のガラス扉越しにキスをしたとき、泣いていたからです。

『赤毛のアン』の物語の舞台となったプリンスエドワード島ではなくて、鎌倉の道です

〈おことわり〉
原文の翻訳は編集部員によるものなので不正確かもしれません。
正しい訳は邦訳の出版物をご参照ください。


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