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Plastic Tree Live Chronicle全部聴く(9)

ラスト。

Disc 16-17 「Symphonic Concert 【Act II】」(2020年11月17日@LINE CUBE SHIBUYA)

[DISC1]
眠れる森
リプレイ
蒼い鳥
ガーベラ
まひるの月
ツメタイヒカリ
アンドロメタモルフォーゼ

[DISC2]
幻燈機械
メルト
春咲センチメンタル
真っ赤な糸
バリア
「雪蛍」
雨ニ唄エバ
スピカ

彼らにとって2度目のオーケストラをバックにしたライブの模様を収録したアルバム。同名の映像集にも付属していたので珍しくは無いものの、クオリティが高くまたコンセプトも他にないもののため再録されたのは何となく納得できるような気がする。

「メルト」や「バリア」など意外な選曲もあるものの、全体的にはプラスティック・トゥリーというバンドに求められる美しさや耽美さをオーケストラというひとつの装置によって増幅した、と言えるような内容になっている。男子限定の際にも触れたが、ライブハウスでの荒々しい演奏もこのようにオーケストラを率いたホールでのきらびやかな公演も魅力的にこなしてしまうのがプラというバンドの面白さであることは間違いなく、世界観の芯がはっきりしている一方でいい意味でミーハーな側面をその長いキャリアの中で武器として存分に活かしているのがわかる。

あくまでメンバー4人によるバンド表現を軸としつつその延長上にオーケストラという手足があるような演奏は、彼らがオルタナティヴ・ロックと呼ばれるようなジャンルをやっていることもあってかなり独特の質感がある。以前にもストリングスを導入したことがある「ツメタイヒカリ」のような楽曲は素直に、また「リプレイ」のように早口のオルタナティヴ・ロックはやや苦心のあとが見えるアレンジとして結実している。

全体的にバラードが多いのは間違いないが、それ以外の表現、たとえばギターロック的な轟音をオーケストラの表現に置き換えるなどの工夫が凝らされており、それぞれの楽曲を聴き込んでいたとしても新たな発見があるのではないかと思う。

ライブCD-BOXという作品集がこのオーケストラ・ライブによってフィナーレを迎えるのはとても良くできていると思う。歴戦のファンもそうではないという人(はおそらくボックスセットは買わないと思うが)も楽しめる豊かなアレンジ精神に満ちた作品だ。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。