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Plastic Tree Live Chronicle全部聴く(6)

Disc 10-11 「『Black Silent/White Noise』最終公演」(2016年10月10日@東京国際フォーラムA)

 [DISC1]
〜Opening〜
うつせみ
フラスコ
みらいいろ
メルト
くちづけ
ピアノブラック
時間坂
サナトリウム
影絵
サイレントノイズ

[DISC2]
シンクロ
メランコリック
スラッシングパンプキン・デスマーチ
マイム
バリア
静かの海
剥製
曲論
あバンギャルど
クリーム

シングル「念力」発売の際に付属した映像の音源。本ボックス収録の中では珍しく『樹念』じゃない普通のライブであり、シングル「サイレントノイズ」発売時のツアーとして行われたものの中から千秋楽公演を収録している。

セットリスト的には当時の最新アルバムである『剥製』からの楽曲を中心としてライブでの定番曲などを織り交ぜたものとなっている。

アルバム再現や男子限定、オーケストラ共演など特徴的な公演の音源が多い中、シンプルにいつものツアーで見せる表情が楽しめるこの音源は逆に貴重でもある。そもそもこのボックスでしかまとまったライブ音源は聴けないわけで。

また、『剥製』というアルバムも当時のプラを代表するような、ひとつの集大成としての作品であったことを考えるとこのセットリスト、時期の音源はとても意味のあるものだと言えるだろう。おそらくシングルリリースに合わせたツアーのため演奏したであろうカップリング曲「静かの海」がその後のセットリストで定番入りし次のアルバムである『doorAdore』にまで収録されるのも今となっては面白い。

「マイム」、「あバンギャルど」、「曲論」といった定番のアッパーチューンが並ぶ一方でオープニングを飾るのが「うつせみ」だったり、シングルの「瞳孔」ではなくアコースティックな「時間坂」を演奏していたりするのも興味深い。「時間坂」から「サナトリウム」、「影絵」と続く「サイレントノイズ」手前の流れは静的な美しさの山場として特に強く印象に残る。

また、正氏がベースからギターに持ち替えアキラ氏がシンセサイザーやPCを操るエレクトロシューゲイザー「ピアノブラック」やアルバムのタイトルトラック「剥製」での竜太朗氏のヴォーカルが見せる表現の美しさと妖しさにはゾクッとさせられる。本ボックスセット付属のインタビューによると、プラスティック・トゥリー初期のコンセプトは『ザ・キュアーのようにロバート・スミスとそれ以外であること』だったらしいが、有村竜太朗という、日本でUKロックをやるために生まれてきたような人間のカリスマ性たるや。

前述の通り、特殊なライブ盤の多い本ボックスセットの中でライブ・アルバムとして普遍性の高い1枚であり、演奏の質も高いところでまとまっているいいアルバムだと思う。たとえばこのボックスセットがバラ売りされるとしたら1番に薦めるんじゃないかという、ライブバンドとしてのプラスティック・トゥリーの魅力がストレートに伝わる作品だ。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。