記憶にて

僕は記憶力が悪い。

ここのところ、手元のCDと本をまとめて処分している。単純にものが多くなったのと、クラウド化のあおりで冷静になり、聴ければ良いか、読みたくなったら買い直せば良いか、という判断のためだ。

本に先立ってCDを処分したところ、2000枚ほどあったのが200枚以内には収まった、のではないかと思う(正確にはカウントしていないが)。よほど所持していたい、買い直せない、などの理由で棚に残したものだが、独特の洗練がなされた趣味の良い棚が出来た、のは嬉しい誤算というか。

冒頭にあんなことを書いておいて何だが、僕は2000枚ほど所持していたCDを、ほぼ全ていつどこで購入/入手したかを憶えていた。3,4枚ほど記憶にないCDが存在したが(それはそれで問題かとは思うが)、まあ、誤差の範囲だろう。

減らしたからには増やせるぞ、というのはまったく愚かしいコレクターの考えだが、早速ブックオフにCDを買いに行った。ポータブルプレイヤーから流れてくるBGMはTelevisionの再結成アルバムだ。

ふと思う。僕はこのバンドの存在を、どうやって知ったのだろう?

このアルバムを買ったきっかけは覚えている。十代の頃、今はもうない、地元のブックオフを模したチェーンの中古店で見かけて安かったからだ。あれ、Televisionのアルバムって2枚しか無いんじゃなかったっけ?と疑問に思ったことまで思い出せる。その時はあまり面白いと思えず、一度売ったのだった、と思う。

では、その頃の僕はTelevisionというバンドをどこで知っていたのだろう?

一度考えてしまうとどんどんわからなくなってくる。僕は雑誌を購読する人間ではないし、ロック名盤某、みたいな本は高くて買えず、当時眺めていたWEBは、今でも閲覧するようなページを除いてまったく記憶にないし、それらはニューヨーク・アンダーグラウンドについて解説しているようなもの、でもない。

僕はいつから、こんな風に、音盤に対して異常なまでの執着を見せる人間になったのだろう。

結論としては、『憶えていない』以外に出てこないのだが、それでも、いやだからこそか、不思議なものだ。何もかも憶えている、というのもそれはそれで辛いところもあるだろうが、こう思い出せないものばかりだと歯がゆくなる。

NHKの人気番組ではないが、ぼんやり生きていると気づいたら変な立ち位置だったり、人生に迷っていたりするものだな、という話、なのかもしれない。違うかもしれない。

眠い。

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。