親の車にて

今更、ながら、DVD『HASYMO HAS/YMO』を観た。Sketch Show、Human Audio Sponge、再結成YMOと続いていく流れの中にある、ちょうどCMに「RYDEEN 79/07」の演奏風景が使われた2007年ごろのライブを収めたものだ。

僕はYMO世代ではないのだが、彼らの音楽は音楽的な物心がつく前から聴いていた。というか、彼らの音楽もまた僕を音楽聴取に向かわせる一因だったのだと、今にして思う。

父の車からはさまざまな音楽が流れている。父という人は趣味人で、彼から受け継いだ文化的資産は多い。なかでも、ドライバーズ・ミュージック、カーステレオから流れてきた音楽は幼少期の僕を、そして驚くべきは今でもなお、虜にし続けている。Jimi Hendrix、Deep Purple、Duke Jordan、シーナ&ザ・ロケッツ、そしてYMO。今となってはベタに感じるところもあるが、どれも好きなアーティストだ。

DVDを再生し、一曲目、「以心電信」のイントロが流れた瞬間の高揚は言葉にしづらいものがあった。正直、今はYMOをあまり聴かないし、Sketch Showの方が音楽的に思い入れが強い部分もあるのだが(なにせ通して一番好きな曲は「Chronograph」なのではないか、というぐらいだ)、そしてYMOとSketch Showの楽曲の盛り上がり方の差(言うまでもないが、YMO曲の時にだけ歓声が上がる)など、色々思うところはあるのだが、それでも素晴らしい映像体験だった。やはりきちんと今様に(といってもそこは2007年のものではあるが)アップデートされた音楽性だったことに嬉しくなる。

小学六年生、まだ学習机に向かっていた頃、父が少しばかり良いステレオを用意してくれた(知人からの払い下げだったと記憶しているが)。テレビゲームばかりやっていた当時の僕にはYMOの音色がストライクで、カセットにダビングして、何度も聴いた。視覚の面白さ、その圧倒的なインパクトを知るのはDVDの時代になってからだ。

YMO、という存在の大きさ、偉大さ、功罪などについて今は冷静に理解しているつもりだ。それでもやはり、彼らの演奏を聴くと、観ると、浮かぶのは小学生の頃、車の中で、或いは学習机のステレオから聞こえてきたテープの音を思い出す。原体験は呪いだろうが、その先に今があることを思えば、決して悪いまじないではなかったのかもしれない、などと思ったり、する。

good time, bad time, everytime and sometime
this time, in no time, anytime
                                                       Sketch Show「Chronograph」

投げ銭してくれると小躍りしてコンビニにコーヒーを飲みに行きます。