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エッセイ

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#コラム

ムダ毛と一緒に全部を水に流そうじゃないか

「ああ、やっちまった…」 深夜、自宅の鏡の前でひとり立ち尽くした。もう後戻りできない。でもこの日、あることを手放すことで、日々に微かな希望を感じた気がした。 話は2日前に戻る。 仕事の繁忙期につき、どうしようもなく忙しい毎日を過ごしていた。PRの代理店で働いていた私は、毎日深夜に家に帰っていた。業務が忙しいあまり、疲労が元であり得ないミスをしてしまう。そうした失敗は雪だるまのように積もる一方で、仕事の自信はどんどん溶けていく。どうしよう。本当に追い詰められていた。 ス

人生という線を紡いでいく

「あなたと別れたい理由は3点あります」 1ヶ月だけ付き合った彼女の言葉は、プレゼンテーションの冒頭のようで妙に印象に残っている。 その日は仕事のイベント開催前日の夜であった。明日から始まるイベントの成功を祈りつつ、ワクワクと緊張に押し潰されそうな夜であった。憂鬱な気持ちで寝ようとすると、彼女から電話がかかってきた。 「実は話したいことがあるんだ」 たわいもない話をしていると、急に言葉のトーンが変わる。この時点で、何かを察した自分の脳のシナプスが繋がる感覚がした。そして、話

偏見が広げる世界 -マレーシアのボルネオインターン紀行 ホームレス編-

「アイムルッキングフォーマイハウス」 灼熱の炎天下、遠い異国の土地で道ゆく人に声をかける。あたりには日本人はおらず、ぼろい車の排気ガスや、剥き出しの工事現場から、風が得体の知れない匂いと共に砂塵を運ぶ。両脇にはスーツケース。なぜこんなことになってしまったのだろう。 大学3年生の終わり頃、就職先が決まった私は、所属する会社の海外部署にどうしても所属したかった。ただ、学生が海外の部署に所属したい! と叫んでも願いを叶えてくれるほど大人は甘くないと考え、学生のうちに実績を作ろうと

熱狂する「Air」の作りかた -iPadを買うか買わないか本気で悩んだ話-

熱狂を生み出すにはどうしたらいいか。その答えは、「焦らすこと」である。 話は8月末に遡る。 「iPad買ったんだよね」 友人が見せてきたものは、iPad Pro。やや縦長で、スタイリッシュに輝くその機体を、得意げに手に持ちながら話しかけてきた。 「どうして買ったの?」 自分の口から出てきた言葉は、「いいね」でも「格好いい」でもなく、なぜそんなものを買ったのか、であった。 と言うのも私は学生のころにiPadを持っていた。その時に自分が所持していた理由はまさに「格好い

なんでも治す祖母の魔法の知恵袋

「あったかくして、揉めば治るよ」 それが祖母の口癖であった。 共働きの両親を持つ私は、幼稚園から高校まで祖母の家に預けられた。夜遅くになって帰ってくる両親。顔を合わせる時間は週末を除けば殆どなく、どうしても両親と関係性を深めることができなかった。毎晩家に連れて帰りたい両親と、祖母の家から離れたくない自分。帰りたくないと玄関で言うたびに、両親は哀しい顔をしていた。 そんなことは露知らず、祖母は孫の私を甘やかしてくれた。食べ物を用意してくれたり、買って欲しいものを買ってくれ

「壁際」から向き合う世界

壁際が好きな人は世界中にいる。それが、国際交流の経験から得た学びの一つだ。   大学生の時にフィリピン人の女性と付き合っていたことがある。国際交流プログラムで知り合い、意気投合。総勢で300人近い青年たちが集まる企画であったが、立食パーティや文化交流のタイミングで輪の中心にいることが苦手だった私は、常に人の輪から離れ、壁際にいた。隣を向けば、毎回同じメンツが揃っていた。言語や文化が異なるにも関わらず、集団が苦手な人は苦手なのだと、かなり感動した。その中の一人に彼女がいた。一目