マガジンのカバー画像

エッセイ

30
運営しているクリエイター

#習慣にしていること

熱狂する「Air」の作りかた -iPadを買うか買わないか本気で悩んだ話-

熱狂を生み出すにはどうしたらいいか。その答えは、「焦らすこと」である。 話は8月末に遡る。 「iPad買ったんだよね」 友人が見せてきたものは、iPad Pro。やや縦長で、スタイリッシュに輝くその機体を、得意げに手に持ちながら話しかけてきた。 「どうして買ったの?」 自分の口から出てきた言葉は、「いいね」でも「格好いい」でもなく、なぜそんなものを買ったのか、であった。 と言うのも私は学生のころにiPadを持っていた。その時に自分が所持していた理由はまさに「格好い

なんでも治す祖母の魔法の知恵袋

「あったかくして、揉めば治るよ」 それが祖母の口癖であった。 共働きの両親を持つ私は、幼稚園から高校まで祖母の家に預けられた。夜遅くになって帰ってくる両親。顔を合わせる時間は週末を除けば殆どなく、どうしても両親と関係性を深めることができなかった。毎晩家に連れて帰りたい両親と、祖母の家から離れたくない自分。帰りたくないと玄関で言うたびに、両親は哀しい顔をしていた。 そんなことは露知らず、祖母は孫の私を甘やかしてくれた。食べ物を用意してくれたり、買って欲しいものを買ってくれ

「壁際」から向き合う世界

壁際が好きな人は世界中にいる。それが、国際交流の経験から得た学びの一つだ。   大学生の時にフィリピン人の女性と付き合っていたことがある。国際交流プログラムで知り合い、意気投合。総勢で300人近い青年たちが集まる企画であったが、立食パーティや文化交流のタイミングで輪の中心にいることが苦手だった私は、常に人の輪から離れ、壁際にいた。隣を向けば、毎回同じメンツが揃っていた。言語や文化が異なるにも関わらず、集団が苦手な人は苦手なのだと、かなり感動した。その中の一人に彼女がいた。一目

ダニに教わった、熱中する趣味の見つけ方

「ちょっと布団で寝られそうにないから、部屋がきれいになったらまたくるね」 彼女と半同棲生活をはじめて8ヶ月、今まで何不自由なく過ごしてきた。このままなんとなく過ごしていれば、ずっと一緒に過ごすことになるのだろうと思っていた。その矢先、事件が起きた。この話は、目に見えない不安との戦いを通して得た「熱中」に関する人生訓である。 きっかけは、彼女が家に泊まった時、足が痒くて寝られないと言われた時である。 とても嫌な予感がした。家の掃除は割と丁寧にしている。6畳一間の部屋には、

ボディソープの切れ端を捨てたとき -日々の積み重ねと向き合う-

毎朝、シャワーを浴びてから仕事に行く支度を始める。その日、ボディソープに手を伸ばすと、ちょうどあと2〜3回使うと無くなってしまう程度の量しかないことに気づいた。詰め替え用パックを買っていたので、お風呂場で先端を切って開ける。切った先端のゴミを洗面台に置き、ボトルに詰め替えて一安心をする。さあ、仕事に行こう。 仕事から帰ってくる。夕飯を作らなきゃと思いつつ、結構疲れたのでまずはお風呂に入ることにする。シャワーをひねると、朝に詰め替えたパックの先端の切れ端が洗面台に置きっぱなし

バッティングセンターで苦手を打ちかえした話

在宅ワークで疲弊していたので、休日くらいたまには外に出ようと大塚駅にあるカフェに入った。 しかし、寒い。外の気温とうって変わって、とにかく寒いのである。初夏のあるあるだが、外界の気温と中のクーラーの気温の差が半端なく、ものの10分で腹を下してしまったのである。このままではまずい。とりあえず外に出て暖まろうと、カフェのバルコニーに出た。 バルコニーからは「のれん街」という居酒屋街が見渡せる。看板には「ハッピーアワー1時間500円飲み放題」という文字が見えた。これは飲むしかな