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生きざま

今日のお教室に、1年半ぶりにある方がいらっしゃいました。

ますみさん(仮名)88歳。

私が編み物教室を始めた2ヶ所目のお教室に、最初からいらして下さった方です。

以前は大阪に住んでらして、そこで編み物教室にも通われていたとの事で、毎週毎週、ご自分で綺麗に編まれたセーターを着て来て下さってました。


ご主人様が亡くなられ、長男さんご夫婦と同居する事になった話。嫁姑問題。

ご主人様との馴れ初め。ご主人様の看病の話。

新婚時代の話。

出産時の事故で、次男さんが脳に障害を持ってしまった話。現在は施設に入って自立されている話。

娘さん夫婦の話。

等々、たくさんお話を聞き、お写真もたくさん見せて頂きました。

ある時、お店のスタッフがますみさんの事を「おばぁちゃん」と呼んでしまった時には、「おばぁちゃん、おばぁちゃんって!あんたのおばぁちゃんと違うよ❗」とビシッと言い放つ。

私の事は「先生、先生」って、可愛がって下さいました。


3年前の夏かな。お教室の近くにお住まいで、いつも歩いて来られてたのですが、猛暑で出歩くのも危険だからと、長男のお嫁さんにストップされ、暫くお教室をお休みされました。

そして、2ヶ月後にお教室にいらした時に、少し異変を感じたのです。

今まで綺麗に編まれていたのに、ミスが多くなった。そして、編み方について、何度も何度も質問される様になった。

毎週毎週、編むスピードが落ちていった・・・。

夏の間、何処にも出歩けなかったんですって。

いつも、「ここに来るのと、デイサービスに行くのだけが楽しみ!」と言っていただいてたのに。

一年であっという間に、カギ針編みが編めなくなりました。

毎年、手編みのセーター等をデイサービスで行われる作品展に出品されていて、デイサービスのスタッフさんや入所の皆さんから「ますみさん、すごいね!」と誉められた事を自慢されていました。

今年はマフラーにしましょうか!?

棒針で2目ゴム編みだけのマフラーを何とか編んで、作品展に出品。


その後、ガンが見つかった。


長男のお嫁さんからは、いじめの様に、毎晩のご飯は「ししゃも一つと一握りのほうれん草だけ」とか「こんな小さい(親指と人差し指で輪っかを作る)ハンバーグ一つ」だったとか。

今までたくさん編まれたセーターを見て、「死んだ時に、一緒に燃やしてあげますわ!」って言われたって。

「寝たきりになっても、よう世話しませんからね!」とも言われてるとか。

悲しいお話もたくさん聞いた。


ガン治療のため、暫くお休みします・・・と連絡をいただいてから1年半。

ずっと、ますみさんの事が気になってました。


先日お店から「今日、娘さんご夫婦とますみさんがお店に来られて、ご予約をいただきました」とお電話をいただいた。

「お元気そうでしたよ❗」


そして今日、久しぶりにますみさんと再会。

娘さんが車椅子にますみさんを乗せて、連れて来てくれました。


ずいぶん小さくなられたな・・・。

とても優しい顔つきで、穏やかに見えた。


長男さんのお家は出られて、今は娘さんご夫婦と一緒に過ごされているとか。

「何回もね、病院出たり入ったりしてね、暇でしてん」「娘の所でね、婿さんがようしてくれますねん」「娘がね、お腹いっぱいなるくらい作ってくれますねん」「下の息子とはね、会えてないけど、お母ちゃん、来んでええ!って言いますねん。コロナやからね」「長男とこはね、嫁さんと二人は仲良ろしいねん」・・・。


ゆっくりだけど、お話が止まらない。


「ますみさん、今はしんどい事とか無いの?全部、上手い事いって、良かったね🍀」本当に心底そう思った。


「あっそうや、大きい文字の・・・クロスワードの買わなあかん」

これは、以前からのますみさんの楽しみの1つ。

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2時間後、娘さんがお迎えに来られました。私がクロスワードの事をお伝えすると、

「もう、ベッドの上に置いてあるやろ?もう1つ買おうか😅」

「毎日言いますねん」と私にこそっと。笑


「そしたら、また私が仕事休みの時に来させてもらいます。」

ますみさんは、これから毎週来る気まんまんだったのですが。


そういえば、病気の事は詳しく聞かなかったな。大丈夫なのかな。

他に生徒様もいらして、ちゃんとしたお教室が出来なかったのですが、事情を説明すると優しく理解して下さいました。


ますみさんの波瀾万丈な人生。身をもって人の生きざまを見せていただいてる様。


ますみさん、またいつでも待ってるからね。またお元気な顔を見せて下さいね🍀





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先日、可愛い毛糸たちをGET❗️


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