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【特別寄稿】 岐阜発 地方創生の将来へ [ 1 ]-中部経済新聞

【特別寄稿】 岐阜発 地方創生の将来へ [ 1 ]

中部経済新聞 20.03.02 掲載

日本生産性本部 地方創生カレッジ総括プロデューサー
三輪知生

本年度は、2015年度から5カ年の国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(第1期)が最終年を迎える。

少子高齢化、人口減少、東京圏への人口の過度の集中といった課題に対応して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的として掲げた「まち・ひと・しごと創生法」が14年11月に施行され、この法律に基いて国(内閣府)が総合戦略を策定し、地方公共団体においては地方版「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定して、地方創生に関する取り組みが進められてきた。

内閣府による予算事業としての地方創生においては、「3本の矢(情報、財政、人的)」による地方への支援が行われている。

"3本の矢"で自治体支援
「改善見えず」の指摘も

「情報」の支援では、地域経済に関するさまざまなデータを地図やグラフなどでわかりやすく見える化した「地域経済分析システム(RESAS=リーサス)」の提供がなされている。地方自治体が自らの強み・弱みや課題を分析し、解決策を検討するツールとして、まち・ひと・しごと創生本部事務局が提供する、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約して可視化するシステムだ。「財政」の支援としては、地方自治体の先進的な取り組みを支援する、自由度の高い「地方創生推進交付金」ならびにインフラ整備のための「地方創生拠点整備交付金」がある。地方創生推進交付金は、各府省の個別補助金や効果検証の仕組みを伴わない一括交付金などとは異なり、地方公共団体による自主的・主体的な事業設計に併せ、KPI(重要業績評価指標)の設定とPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの確立のもと、自立性、官民協働、地域間連携、政策間連携を軸に交付対象事業を選定することで、従来の「縦割り」事業だけでは対応しきれない課題を克服しようとしている。

そして、「人的」な支援については、自治体首長の右腕となる人材を国の省庁から派遣する「地方創生人材支援制度」、担い手不足に悩む地方の中小企業の人材を、主に都会の大企業勤務経験者の転職を斡旋することによって補おうとする「プロフェッショナル人材事業」、e—ラーニングによる人材育成を目指す「地方創生カレッジ」が展開されている。

国の第一次総合戦略

これら3本の矢のうち、地方創生カレッジは日本生産性本部が補助事業者として採択されており、筆者は地方創生カレッジ総括プロデューサーの肩書で、昨年度より事業推進の一役を担っている。

地方創生においては、前述の通り国の根源的な課題が列挙されているが、そのいずれの要素もこの5年間の第1期総合戦略で著しい改善の傾向を見ることはできていないと指摘されている。本稿ではその原因(阻害要因)を探り、いま何に取り組み、これからどうしていかなければならないか、全4回にわたって論考を進めていく。

<プロフィル>みわ・ともお 東海クロスメディア(名古屋市)の社長で、日本生産性本部地方創生カレッジ総括プロデューサーとして地方創生の担い手育成に携わる。名古屋大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、修士(経済学)。



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