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パーキンソン病を軽減!?MRI画像を元に超音波で手術するというテクノロジーでユニコーンになったイスラエル「InSightec」に迫る!

イスラエル発のユニコーン企業であるInsightecは、画期的な医療技術を提供しています。同社は、非侵襲的なウルトラサウンド治療に特化し、がん治療や神経障害の革新的なアプローチを実現。その革命的な技術は、世界中の医療界で注目を集めています。

つまり、MRIと超音波を組み合わせた、メスを使わないMRガイド下集束超音波治療(FUS)はという外科的治療法を提供しています。

そこで今回は、イスラエル発のユニコーン企業であるInsightecについて迫っていきます。

より詳しく知りたい方は、こちらの公式サイトをご覧ください!

1.サービス概要|InSightecとは

InSightecは、MRIガイド下集束超音波(MRgFUS)で脳深部のターゲット細胞を治療するExablate Neuroという医療機器を提供しています。また、独自のMRgFUS技術を脳以外の身体部位に適用する機器・サービスも提供しています。

*CEマーク取得年。CEマークとは、EU(欧州連合地域)で販売される指定製品に貼付を義務付けられる安全マークを意味します。(https://www.digima-japan.com/knowhow/europe/16515.php)

Exablate ProstateはFDA承認を取得しておらず、ヨーロッパ、オーストラリア、ロシアで承認を取得しています。

(https://www.insightec.com/treatments/urology/prostate-cancer/regulatory-approvals)

InSightecの主力製品は脳神経治療に用いられるExablate Neuroです。本製品リリース前はExablate Body Systemという体の異なる部位の治療用途で製品開発していましたが、十分なトラクションが得られなかったようです。(MedCity)

誰のどんなペインを解決している

InSightecのコア技術であるMRgFUSとは、高密度焦点式超音波治療法(HIFU)にMRIによる高精度の撮像、温度フィードバック、震えのモニタリング組み合わせた高度の超音波治療法です。この技術を用いることにより非切開で脳深部の治療ができ、本態性振戦やパーキンソン病患者の震えの症状を軽減し、患者の早期社会復帰につなげます。

(https://www.insightec.com/products/exablate-neuro/overview)

ただし、手のふるえの症状軽減を目的とする治療法です。病気そのものを治す根治治療ではないようです。パーキンソン病の治療法としては薬物投与が一般的ですが、患者によっては薬物投与の効果があまり見れらないケースがあるようです。その場合、従来は高周波で治療部位を熱して熱凝固させる高周波凝固術(RF)か、脳の視床にある神経回路へ電気信号を流して異常な神経信号を邪魔することで、ふるえの症状を軽減する脳深部刺激治療(DBS)が一般的に用いられてきました。MRgFUSはこれらに代わる新たな治療法として期待されています。

価格感やどんな市場に対してのソリューション

InSightecがExablate Neuroを提供する市場はアメリカ、ヨーロッパ、中国、日本などの先進国市場です。日本でもInSightec Japan株式会社を介して医療機関への製品提供を行っています。(InSightec Japan)

2.企業概要(2023年8月10日時点)


3.創業の経緯、ファウンダーBIO

創業者のKobi Vortmanはイスラエル工科大学にて電気工学の学士と電気光学のPhdを取得しました。また、彼はエルサレム・ヘブライ大学で物理数学の学士も取得しています。そして、RAFAELでマーケティング、事業開発、オペレーションやエンジニアリングといった数々のポジションを経験しました。また、Diasonics Vingmed Ultrasoundでは代表兼CEO、ElscinTECではジェネラルマネージャーを経験しています。Elbit Medical Imagingでは代表として独自ブランドのMRgFUS技術のの責任者でもありました。この技術は現在のInSightecに受け継がれています。InSightecはElbit Medical ImagingとGE Healthcare(以前のGE Medical Systems)の共同で設立されました。現在でもGE Healthcareは同社の筆頭株主です。InSightecでVortman氏が手がけてきたMRgFUS技術を発展、市場展開しています。
(https://biography.omicsonline.org/israel/insightec/kobi-vortman-phd-170325)

2014年にはInSightecのCEOとして、Vortman氏に代わり医療機器業界での豊富な経験を持つMaurice R. Ferré氏が就任しています。Ferré氏は外科ロボットの会社MAKO Corp.を16.5億ドルでStryker Corp.に売却した実績を持ちます。Ferré氏の就任後、Vortmani氏は同社取締役会の副会長となり戦略推進、製品ロードマップの実現を担っています。(Medicity)

InSightecは現在、本態性振戦はパーキンソン病など脳神経治療分野に注力していますが、創業当初は子宮筋腫など別分野に注力していたようです。しかし、その分野では医療機関から十分なトラクションが得られなかったようです。(MedCityNew)2014年のCEO交代以降、InSightecはFDAや各国の承認機関から脳神経治療における当社製品(ExAblate Neuro)の販売承認(InSightecニュースリリース)を取得しています。また資金調達も活発になりバリュエーションも増加していきます(後述参照)。Kobi氏よりもMaurice氏の経営センスが優れていたということでしょうか。

4.過去のラウンド概要

InSightecの過去のラウンドは以下の表のようになります。1999年創業という20年以上の歴史がある企業だけあって資金調達もこれまで10回とかなり多く実施しています。Series Dまでの初期のラウンドは、Elbit Imaging Ltd.とGE Healthcareが中心となって数千万ドル規模の投資を6回行っています。Elbit Imaging Ltd.は主に不動産と医療関係の企業に投資を行うイスラエルの金融会社です。GE Healthcareは米ゼネラル・エレクトリックの構成企業であるヘルスケアカンパニーです。InSightecは両企業の共同で設立されたという背景があります。外部のキャピタルからの調達はSeries E以降のKoch Disruptive Technologies (KDT) などからの投資です。KDTはアメリカ・カンザスにあるベンチャーキャピタルで高成長が期待されるテック企業に投資を行っています。Series FではKDTから単独で$150 Mの投資を受けており、この投資の後バリュエーションが$1.3 Bとなり創業から21年目にしてユニコーンの仲間入りを果たしています (MedCityNews)。

5.業界の動向、分析

InSightecも取り扱う高密度焦点式超音波(HIFU)という技術は世界各国の企業が関連製品を開発・販売しています(Market Research.com)。
例をあげると、仏EDAP TMS米Sonacare Medical中Haifu Medical韓ALPINIONなどです。InSightecもイスラエルの企業なのでやはり各社拠点は先進国に集中しています。治療用途としては前立腺癌治療子宮筋腫治療各種腫瘍の治療が挙げられます。InSightecのように脳神経治療にHIFUを用いている例は数少ないようです。

6.競合との差別化ポイント

InSightecと高密度焦点式超音波(HIFU)技術を扱う競合をまとめた表は以下となります。(競合企業はMarket Research.comから数社をピックアップ)

高度な医療機器技術を扱うということもあってこの分野の市場は、アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本などの先進国が中心となっています。

InSightecは競合企業と比較し従業員数、バリュエーションともに頭ひとつ、ふたつ抜けています。各社が扱うHIFUという技術自体は医療分野で広く使われている技術のようで、子宮筋腫、前立腺癌、静脈瘤、乳腺線維腺腫など非切開手法として医療機関で用いられています(SonaCare MedicalのHPより)。一方で、InSightecでは、このHIFU技術とMRIの技術を組み合わせた複合技術をMRgFUSと称して独自技術に昇華してます。MRIを使うことで超音波の集束位置を正確に決定し対象となる部位を的確にターゲッティングし熱凝固させることができます(http://www.onc.akashi.hyogo.jp/fus/index.html)。これにより、本態性振戦やパーキンソン病などの脳神経治療に用いることが可能となります。

2016年、主力製品であるExAblate Neuroについて本態性振戦の治療用途でFDAからの承認を受けています(InSightecニュースリリース)。同じく2016年に、ヨーロッパ、イスラエル、そして日本の厚生労働省からも同様の承認を受けているようです(InSightecニュースリリース)。また、2020年には厚労省からExAblate Neuroの適応を薬物療法で十分な効果の得られないパーキンソン病に対して拡大する承認を得ました(PRTIMES)。日本での販売名はExAblate 4000です。

当然特許申請も積極的にしているようで、アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本などで計82件の特許がHitしました (Espacenetにて調査)。

このように、InSightecは技術をバックアップするための積極的な特許出願と各国での販売承認の迅速な取得により脳神経治療分野において圧倒的な存在感を示していると言えます。

より詳しく知りたい方は、こちらの公式サイトをご覧ください!

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