見出し画像

#58 今一番欲しいもの/くろさわかな

【往復書簡 #57 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈とんでもない時代を生きていてえらいけど〉
水曜日:泖〈気持ちの置き場〉
金曜日:くろさわかな〈圧縮されない時間〉

圧縮されない時間

毎日毎日、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
歳をとるにつれその速度がどんどん増しているような気がしていましたが、ここ2年くらいは本当にあっという間でした。

とにかく1日が短い。
会社からまっすぐ帰ってきてもあっという間に寝る時間で、起きたらすぐまた会社に行って、帰ってきたらすぐ寝る時間で。
休日になっても、どこにも出かけられないからどうしよかなあって言っている間に気がつけばお昼。洗濯しなきゃなー、掃除しなきゃなーっていつまでも腰を上げられないでぐだぐだとしてると日が暮れていて、テレビをつけたらサザエさんが始まっています。

もっと時間が欲しい。
無駄に使って罪悪感にかられないくらいの時間が欲しい。
それがどのくらいなのかは正直わからないですが。倍あっても足りなそう。

そういえば、人は、似たような経験はすべて同じ出来事として記憶にまとめてしまう、という話を読んだことがあります。
昨日の夕食がなんだったか思い出せないとか、同僚と話した世間話の内容を忘れてしまうとかはそれなのかもしれません。
同じ24時間でも、記憶として残る時間と、一緒くたにされて圧縮されてしまう時間がある。そして、圧縮される時間が多いということは、その分だけ「生きた」と実感できる時間も短いのではないか……などと考えてしまいます。

もしかしたら、時間がたくさんあっても仕方ないのかもしれませんね。
この状況では、結局はすべて圧縮されて終わりそうで。

だから一番欲しいものは「時間」じゃなくて、「記憶として残る時間が得やすい世界」なのかな。
及川さんと同じ話になってしまいました。

くろさわかな



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?