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#40 私がこの仕事を選んだ理由/くろさわかな

往復書簡 #40 のやりとり
月曜日:及川恵子〈背中を押されて今がある〉
水曜日:泖〈真剣なお遊び〉
金曜日:くろさわかな〈好きが盛れないから無理を削る〉

好きが盛れないから無理を削る

わたしはいわゆる「IT企業」で、サーバを管理したりWEBサイトを作ったりの仕事をしています。

Windows98の登場でパソコンがより身近になって、さらにINS64回線+テレホーダイというコンボ(※1)が普及した頃。学校で友達にインターネットとはなんぞやということを教えてもらい、親にねだってmacを買ってもらいました。デザインをするにはPhotoshopという高額なソフトが必要で(※2)、それを使うにはmacがいいんだという噂を耳にしたので、Windowsではなくmacだったのです。
インターネットも勉強に必要だからと回線工事もしてもらって、23時になったら夜な夜な友達とICQでチャットをしたり、ポストペットを送り合ったりしました。楽しかったなあ。

ホームページの作り方を教えてくれたのも、その友人でした。ジオシティーズとかTripodとか、当時も無料で使えるサーバはたくさんありましたが、今ほど簡単にはつくれなくて、わたしはそれが逆に燃えました。パズルをしているような気分です。ただ、コンテンツとして提供できる情報がなにもないので、自己紹介とかお気に入りのページ集とか、どうしようもない内容でした。未だに中身そのものよりもガワを作る方が好きです。

学生時代はバイトも色々やりました。新聞配達をしてみたり、飲食店でホールスタッフをしたり、ホテルの清掃業をしたり、結婚式場の裏方だったり。どれもあんまり長続きしませんでした。清掃業は体が動かなくなってくるし、結婚式場は人が多くてクラクラしました。色々やってみて、自分は体力がないなということと、人が多いと疲れるんだなということがわかりました。だから、もうそういうバイトを選ぶのはやめようと思いました。

最後にやったバイトが、今仕事をしている会社のインターネットカフェ受付業務です。座りっぱなしで混雑もそれほどしないインターネットカフェの受付は、自分にぴったりの仕事でした。続けるうちに、ホームページが作れるならちょっと作ってみてと言われ、受付業務から徐々に仕事内容が変わっていきました。卒業が近づき、進学するか就職するか悩んで(入試の勉強も就職活動をするのもどちらも嫌だった)バイト先に相談したところ、よければ正社員にするけどと言われたので、そのまま入社した次第です。

わたしの場合、仕事を「選んだ」というよりも、できないこと・やりたくないことを除外していった結果、残ってくれた仕事がこれだったという方が正しいかもしれません。
粘土で少しずつ形を作っていくように、好きなことを膨らませて大きくしていく人もいれば、大きな木の塊を掘っていくように、好きなことを手探りで削り出していく人もいる。多分わたしは後者。そろそろ出来上がりのイメージを持たないとだめなんじゃないかという年齢になってきましたが、どんな形になるのかがわかるのはまだまだ先のようです。


くろさわかな


※1 昔はインターネットを接続するのに電話回線を使っていたので、インターネット接続中は電話が通話中になってしまっていました。それを解決してくれたのがINS64回線という1回線で2通話同時に使えるサービスです(速度もアップしました)。テレホーダイは23時から翌日8時までの通話が定額になるサービスなので、通話料を気にせずインターネットをするには必須のサービスでした。

※2 当時のPhotoshopはテキストを確定したら再入力も再配置もできない仕様で、とてもじゃないけどポスターだのフライヤーだのを作るのには向いていませんでした。解像度の意味もよくわからなかった私は、低解像度で印刷物を作ったりして、文字がめちゃくちゃギザギザしていました。

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