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#66 欠点は利点/くろさわかな
【往復書簡 #66 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈それなりのものはそれなりに。〉
水曜日:泖〈不完全人間代表〉
金曜日:くろさわかな〈衰えるって悪くない…かも?〉
衰えるって悪くない…かも?
レーズンパンが好きです。
今朝もマーガリンが入っているレーズンロールパンを食べてきました。
レーズンロールパンも美味しいですが、一番好きなのはヤマザキの「塩バターフランスパン(レーズン)」。そのままでもいいですが、これをカリッとトーストするとめちゃくちゃ美味しいんですよ…。
食べすぎるので、逆にあまり買わないようにしているくらいです。
レーズン、子どものときは大嫌いだったのに。
おやつに出てくるレーズンが入った蒸しパン(マーラーカオ?)も、お土産にいただくマルセイバターサンドも、レーズンを予めよけてから食べていましたし、給食のサラダにレーズンが入っていたら牛乳で流し込むくらいには嫌いでした。
萎びた見た目にねちゃねちゃと歯にまとわりつく食感、味も甘ったるくて、全然美味しいとは思えなかったんですよね。
基本好き嫌いのないフクフクとした子どもでしたが、レーズンだけはお腹が空いていても食べませんでした。
それが今や、レーズン入りの方をあえて選ぶようになるとは。当時の自分が知ったらびっくりでしょう。
おとなになると、子どもの頃苦手だった食べ物が食べられるようになるというのはよく聞きます。本当かどうかはわかりませんが、一説によると、舌の機能が衰えて敏感に感じていた苦味や渋みといった不快な味を感じなくなるから、とか。だとすると、わたしの舌は衰えちゃったということになるわけですが、衰えることで美味しく食べられるようになるなら衰えも悪くないなと思います。
正直、昔から味の違いなんてよくわからない「貧乏舌」でしたが、それに衰えがプラスされて磨きがかかってしまって、繊細な味の違いなんて絶対わかりません。究極だの至高だのの超高級レーズンパンを出されようが、「これも美味しいしヤマザキのも美味しい」って並列で語っちゃう自信があります。
料理人やソムリエや料理評論家にはなれませんが、なんでも美味しく食べられるのはありがたいことです。ストライクゾーンが広いと、不快になりにくいですし。
きっと恋愛も人間関係も、「刺さる」「許せる」範囲が広い方が人生ラクに生きられるのでしょうね。
だけどそれは味覚と同じく生まれ持った個性が強く出る部分だから、「ラクに生きたいからストライクゾーンを広く持てるように頑張ろう」とはできない。どうすればいいんですかねえ……。
そのあたりもいい具合に衰えてくれたら、もっとこころ穏やかに過ごせるのかしら。年をとって「丸くなる」ってそういうことかなのかな……?
くろさわかな
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