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#67 私の地元のいいところ/くろさわかな

【往復書簡 #67 のやりとり】
月曜日:及川恵子〈40年目にしてわかることがある〉
水曜日:泖〈なんですか、どこですか〉
金曜日:くろさわかな〈どこにでもありそうですが〉

どこにでもありそうですが

わたしの地元で一番有名なものは「一目千本桜」です。

桜は、春一番が吹く時期に合わせるかのように花開くので、あっという間に散ってしまいます。満開の景色が見られるのは1年間のうち1週間くらいでしょうか。一番いいタイミングでお花見に行けるのは、地元民の特権だなあと思います。

だけど、桜が咲いていない時期の桜並木もわたしは結構好きです。
夏は青々とした葉っぱが涼しげだし、冬は夕焼けと黒い枝のコントラストがパキッとしてきれいだし。
桜の木を剪定しているところを見るのも、「よしよし、ちゃんと手をかけてもらっているな」って嬉しくなるんですよね。
満開じゃない時期の桜並木は、他の木と代わり映えもしないので、どこにでもある風景かもしれませんが。

地元のいいところを思うとき、そういう、どこにでもありそうな情景ばかりが浮かびます。白石川の上空を渡り鳥が飛んでいくところとか、バイパスの裏に広がった田んぼとか。だからなかなか人に伝えるのは難しい。でも例えば、同じセブンイレブンでもあっちの店舗よりこっちの店舗の方が好きだなーってことありませんか? その微妙なニュアンスを説明するには、いろいろな情報を引き出してこなければならなくて、さらにそれが自分の価値観でもあるから、理解されない部分も絶対あります。自分ですらよくわかっていなかったりしますからね。さらに言語化することの高い高い壁。超えられる気がしません。

…とはいえ、わたしにとって地元は、誰かに自慢したり有名になってほしい場所というわけではないので、魅力が伝わらなくてもいいんです。ただ一緒に”暮らし”を作っていく場所。いいところも悪いところも、お互いに受け入れてもらう相手。変わっていく風景もたくさんあって残念に思うことも多々ありますが、変わっていくからこそ、それに合わせてわたしも変化していけるんだと思います。

くろさわかな


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