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03. 裁判傍聴記✐-電車内のトラブル-


この記事は、私が裁判傍聴した時のことを、記録するために書いています。


私が記憶に残った3つの裁判について、書き記したいと思います。
2つ目は、このような事件も裁判になるのか、と驚かされた裁判です。
同時に、被告人が唯一女性であった裁判でもあります。


File2.暴力行為等処罰に関する法律違反


罪名:暴力行為等処罰に関する法律違反
被告人:20代女性

被告人が電車内を歩いていた際、座っていた女性の足が邪魔だったため、一方的に蹴りを入れた、という事件でした。

被害者からすると、車内は空いていたため、自分の前を通る必要はなかったし、そもそも蹴られる理由もわからない。
さらに、事件の後、隣の車両へ移る時に、中指を立てて挑発してきた、と被害者はかなり怒っていて、厳罰を希望しているそう。

被告人は知的障害があり、日常生活の小さなことが気になるため、その度に問題を起こしているそうです。
今回のような暴行事件は4回目で、いずれも罰金刑を受けています。
視野が狭く、柔軟性が全くないことに加えて、適切な判断ができないため、それらの修正を図るプログラムを受けていました。
また、昔受けたいじめによって、コミュニケーションが苦手であり、やられたらその場でやり返すべきだという、偏った考え方をしていました。

普段の生活では、プログラムを支援しているAさん、そして母親の監督があるものの、目が離れてしまうタイミングで、いつも事件が起きるそうです。


感想


被告人は、障害のせいか声が小さく、発言が聞こえづらかったです。
はっきり話す感じでもなかったため、自分の考えを答えているのではなく、言われた通りに話している、といった印象を受けました。

特に、はいorいいえで答えられない質問に対しては、かなり答えることに時間がかかっていました。
反省しているか問われた際には、繰り返し同じことを述べていました。
 今後は事件を起こさないように気をつけます。
 人の足を蹴ると迷惑がかかるため、蹴ってはいけなかった。
 違う車両に乗ればよかった。
こういった発言ごとに、蹴った自分が悪いのではなく、そのような環境自体が悪い、と言いたいように感じ、「自分は悪くないスタンスでいるんだな」と思いました。

その時、私は、本当に被告人が一方的に足を蹴ったのか、という点に疑問を持ちました。
もしかしたら、被害者に何か暴言を吐かれたのかもしれないな、前に何か嫌なことをされたのかもしれないなーと。
ですが、もしそうだったとしても、人の足を蹴ることは悪いことであり、その部分の反省は絶対必要だと思います。
自分は悪くないと思いながら、反省の言葉を口にしている姿は、少し心が痛みました。
人の足を蹴っても、日常の不満は何も変わらないし、何も好転しないってことが、被告人に伝わればいいなと思いました。

最も気になったのは、Aさんと母親の発言です。
2人共、被告人が反社会的な行動をしないように、これまで以上に監督すると言っていました。
Aさんと母親はおそらく良い人で、被告人を一生懸命支えているんだろうなってことは伝わってきましたが、”世間・他人に迷惑をかけないように”ということを、あまりにも気にしすぎているように感じました。
法廷での建前かもしれませんが、もっと被告人の生活の自由度が高まればいいなーと。
私は知的障害に詳しくないですが、被告人のような障害をもつ人々の集まりであったり、そのような人々がルールに縛られることなく、過ごすことのできる場所はないのかな、と思いました。

この裁判を傍聴しながら、公平な判断を下すことは、とてもとても難しいんだな、ということに気付かされました。
どこまでを障害が理由としていいのか、裁判中考えていましたが、難しく、答えが出る前に裁判が終了してしまいました。



判決


後日、判決が出ました。

懲役6ヶ月、執行猶予2年間

常習犯であるが、その背景に偏った考え方があることは間違いなく、本人の反省と、これまで通り周りからの支援が続くことを踏まえた判決でした。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


引用写真
絵本:せんろはつづく
作: 竹下 文子
絵:鈴木 まもる
出版社:金の星社 

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