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ミッドサマー感想(ネタバレ有り)

 ネタバレ有りの方のミッドサマーの感想です。綴りがmidsummerじゃなくてmidsommarらしいことに気づいた。6月24日のレイトショーを見たらしいんだけれど、寝かせまくって2か月以上が経過した。本当に向き合いたくなかった……ほぼ心の傷同然である。全然傷が癒えているわけじゃないんですけど、書いといて損はないという精神状態になれたので感想を書きます。

 あらすじ
 精神的に不安定なところのある主人公・ダニーと、いい加減別れたい元カレ・クリスチャン。クリスチャンがダニーとの関係をフェードアウトするつもりで仲間と計画を立てていたスウェーデン旅行だったが、ひょんなことからダニーにバレてしまい一緒に行くことになる。別れかけのカップルが、激ヤバカルト宗教に赴いた結果とは?

 あらすじだけ見るとなんかB級感否めない話(わたしのまとめ方に悪意があるのもそう)だし、先も読めるし、結末もなんとなくわかる話ではあるんですが、描写やら伏線やらが嫌に丁寧で、3時間ずっと「厭だ~~~~!!!」と思い続けていた。

 以下、ネタバレ含む感想。

0.はじめに

 この映画は嫌の理詰めである。「不安」という感情をとにかく視聴者に与え、かつ、それらが全くもって不自然ではなく与えられる。映画を見ている最中ずっと不安だった。ただ、わたしはずっと不安だったが、わたしの中で無意識に視点の変化が起こっていたらしく、正しい見方ではないような気がする。ということを明言しておくことで、あくまでも「わたしの」感想ですよ、と予防線を張りますね。

1.クリスチャンに愛着が湧く

 わたしは最初、主人公ダニーの視点で見ていてずーっと不安だったのだが、そういう見方をするならクリスチャンと水辺で喧嘩するシーンで怒りを燃やし、論文の題材を被らせる時点で失望し、最後性交の義を行うところで憎しみを覚えるべきだったのだ。というか監督のインタビューとか見る限りそれが正しい見方だったっぽいのだが、後半に行くにつれて濃くなるクリスチャンの視点がその見方を阻害した。

 なんか、3時間も共にしてるもんだからクリスチャンに愛着が湧いてしまった……。本当に何にも考えてなくて行き当たりばったりで生きてて、その結果、そんなに合意でもないまま薬を盛られて異国の女とセックスさせられるクリスチャン、とにかくかわいそう……。最終的に生きたまま焼き殺されるし。

 クズ野郎ではあるんだけど、憎めないところがあるな~~~と思ってしまった。ただのクズ男なら、ダニーと別れたいのに別れられないうじうじをやってなさそうだしな。

2.死への恐怖

 みんなおなじみ、アッテストゥパン(Ättestupa)のシーンに始まり、最終的に生贄として燃やされるまで、たとえそれがホルガの一員であったとしても「死への恐怖」が其の儘描かれている。本当に嫌すぎ。

 70年周期で死ななくてはならない、生贄が必要(たぶん共同体の人数合わせのために)ということが常識として教え込まれていたとしても、「死への恐怖」には打ち勝てない。悲壮な顔をし続けるおばあさんもそうだし、死ぬのなんて怖くないよ、と言う青年たちもそう。結局、死ぬ間際にはものすごい恐怖と対峙し、絶望の中死んでいく。

 「死ぬ」とは恐ろしいことだ、というのをよくわかっているのが、死さえも信仰に組み込まれていて一見おざなりにしているかのように思えるホルガの方だった気がした。実際粗末にしているのは自殺願望のあるダニーであり、本当に自殺してしまったダニーの妹なのかもしれない。

 嫌すぎ。

3.わたしの話

 人生で初めて見たスプラッタ含むホラー映画がこれでした。最悪。そして多分人間男女の性行為もこの映画で初めて見たような気がしていて、本当に最悪。わたしが何をしたっていうんだ。

 ミッドサマーがどういう映画なのか知らないまま一緒に見に行った友人にも悪いことしたな……と思っている。本当にごめんね。なんかトラウマになってるみたいだし。これはトラウマになるし、わたしもなったので許してほしい。わたしたちはこの恐怖に苛まれて生きていくんだと思う。

 死への恐怖が強すぎて「死にたい」と思う機会が少なくなった。思うたび「死にたくない! 死にたくない!」と叫んでいる。本当に死にたくない。

 そして何が嫌って、この映画をそこそこ人に進めている愉悦部的な人間がいることですね。頼む、死んでくれ。恐怖に絶望してそのまま死んでくれ。な~にが「面白かった!」だよ。面白かっただけじゃすまない心の傷を負うのがこの映画だろうがよ。お前は責任が取れるのか? 一生恨まれるぞ。場合によっては事件が起こるかもしれない。少なくとも友達が一人減る。

 映画としては本当によくできた物語で、明るいのに怖い、華やかなのに恐ろしい、植物をこんなにも異質なものとして魅せる演出に感動するしかなかった。伏線もしっかり張ってあって、よく考えると、あれ? みたいな箇所(90年に1度要素はどこにあったのか?)はあったけれど、そこには目が向かないようにできている。

 けれどこれを見ない人生が歩めるのであれば、見ないまま人生を終わらせてほしい。でもだからといってWikipediaだけ読んで知った気になるな。これは映画であり、映像と音楽が掛け合わされた状態が最高で最悪なんだ。頼むから軽率にパロディしたりしないでくれ。最悪人が死ぬ。

 わたしの勧めで見たと思ってほしくない。でも見たなら感想を教えてほしい。わたしはどうやったって責任が取れないので、わたしのせいにしないで自分の意志で見てください。

 最悪の映画でした。

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映画『ミッドサマー』公式サイト 絶賛公開中より引用

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