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鳥飼茜にリスペクト

これは7年前にFacebookに書いていた文章です。
あの頃は鳥飼茜の「先生の白い嘘」を読んでいたんですね。


最近少し時間ができたので、
TSUTAYAでマンガを借りたり、DVDを借りたりして鑑賞している。

特に日本のマンガは、テーマも多種多様で、
内容的にも奥の深い作品がある。
しかし世の中のマンガをすべてチェックできるはずもなく、
時々全く知らなかったマンガや作者と出会ってビックリする。

最近は鳥飼茜という作家の「先生の白い嘘」という作品に
かなりの衝撃を受けた。
これは高校で教師をしている、20代の女性が主人公で、
友人の交際相手に強姦のような形で処女を奪われ、
そのままズルズルとその男の暴力的な支配に耐えているのだが、
その支配から逃れたいと思っていて、
教え子の男子生徒と、少しずつ近づいてゆく、
と、あらすじを書けば、原作の繊細な設定や、
描写の機微が台無しになってしまうが、
このようなセンセーショナルなテーマの作品は、
踏み出すのにちょっと勇気がいるし、読後感も重いので、
書評などで興味を持っても、手に取るのには躊躇がある。

以前はマンガ喫茶に読みに行っていたが、
最近は老眼がひどくなって、なかなか読むのがつらくなってきた。
今はコミックレンタルに本当にお世話になっている。

最近読んだ面白かったマンガ、海野つなみの「逃げ恥」や、
いくえみ稜の「あなたのことはそれほど」
荒木光の「僕たちがやりました」
冬川智子のマンガなどは、すべてコミックレンタルで読んだものである。

かつてマンガが広く浸透していった時も、
貸本マンガというのが、重要な役割を占めていた。
これは低賃金の勤労青年が、銭湯の帰りに貸本屋に寄って、
マンガを借りて帰り、読んでいたことから始まっているのだ。

その貸本マンガの世界から、
白戸三平、水木しげる、つげ義春などが出て、
大手出版社の雑誌で活躍していた手塚治虫などのマンガ家と対抗し、
日本のマンガ文化の底辺を広げてマンガ表現に多様さと奥深さを加えた。

鳥飼茜はインタビューでこのように述べている。
「女として生きていて男の人から受ける
性的な不条理とか理不尽さみたいなものを、
私生活では都度都度人に不満としてこぼしていたんだけど、
喋ってもあまり伝わらないので、
ちゃんと物語として表現して伝えてみたいと思っていました。」

なんというしっかりとした考えで書かれているのでしょうか。
このような動機で書かれているので、
それなりにしっかりした、立派な物語になっています。
そのうえ大衆の興味をそそるような、
エンタテインメント性も多分に兼ね備えています。

特にマンガには絵というものがあって、
登場人物の微妙な表情を画力の高い作家は的確に描きます。
このマンガの主人公、原美鈴も、
「あなたのことはそれほど」の有島麗華も、表情がとてもいいのです。

まず、あまり美人ではないということ、
かといってそれほどブスでもなく、
それこそ本当にどこにでもいるような、やや暗めで、比較的賢めな、
ウェーブしたロングヘヤ―や、フリルのついたスカートなどで、
男社会で評価されていくような女ではない、
そういう感じを女性作家はうまく描きます。
それはもう残酷なくらいに的確です。

僕はそういう表現をリスペクトします。



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