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もう替え玉なんてしないなんて・・・

これは2014年、7年前に書いた文章です。さすがに最近は熊本に住んでいることもあって、何年も長浜ラーメンは食べていません。

久し振りに元祖長浜屋に行ったら、
ラーメンが一杯500円になっていた。
僕が大学生の時は、一杯250円だった。
大学時代にはよく友人と行ったものだ。

僕もその友人もお酒は飲まないので、
飲んだ後に行っていたのではなく、
普通に食事をして、その後に、
「じゃあ、長浜にでも行きますか?」と、
どちらからということでもなく言い出し、
最後には元祖長浜屋へ行って、替え玉をするのが常だった。

ラーメンが250円で替え玉が50円だったから、
全部で300円だった。
確かに安かったが、安いから行っていたわけではない。
もちろんお腹が空いているからでもなく、
ただ「そういうもの」だから、
毎回食べに行っていたのだ。
どんなに満腹でも、
最後に「じゃあ、長浜行きますか?」と言うのが、
二人の暗黙のルールだったし、
「それは絶対に断ってはいけない」というのが、
ルールだったし、
「替え玉どうする?」と聞かれれば、
「するよ」と言うのがルールだった。

共同幻想論で言うところの、
対幻想というやつであろうか?
ごめんなさい、小難しい事言って。
そもそも僕は微妙に猫舌で、
それまでラーメンはあまり好きではなかったのだ。
だから、最初はその友人に付き合って食べていたのだが、
いつしか長浜ラーメンは僕のソウルフードになっていた。

250円だった長浜ラーメンは、
消費税が導入された時に300円に値上がりした。
そして僕は大学を卒業して東京に就職した。
その頃東京ではとんこつラーメンは一種のブランド商品で、
一杯700円から900円くらいだった。
元々ラーメンがそんなに好きではなかった僕は、
それからまったく長浜ラーメンを食べなくなった。

僕が福岡に戻ってきた時には、
その友人も福岡に住んでいたのだが、
もうお互い結婚して自分の家庭を持っていたので、
大学時代のように一緒にラーメンを食べに行くことはなかった。

そしてその後、その友人は病気で死んでしまった。
僕は何回目かの転職で中央区の港にある会社に勤めるようになり、
毎日長浜屋の前を通って通勤するようになった。
その頃、道路拡張で元祖長浜屋(がんそながはまや)が移転することになり、
その前後に「長浜家(ながはまけ)」という、
血縁関係のない親戚のような店ができ、
さらにもうひとつ「長浜家」という、
腹違いの兄弟のような店もでき、
元祖長浜屋もわけのわからない、
「仁義なきラーメン戦争」に巻き込まれて、
いつしかラーメンは一杯400円に、
替え玉は100円になっていた。

その頃、僕はふと、久しぶりに、
長浜ラーメンを食べてみようという気になって、
元祖長浜屋に行ってみた。
相変わらずの店内で相変わらずの味、
あまり愛想も良くないし、
あまりおいしくもない。
でもラーメンを食べて、替え玉もした。

しかし、ちょっと食べきれなくて、
苦しかったのである。
あの頃は、よく満腹の状態で、
これを全部食べていたなと感心した。

それでもそれ以来、時々元祖長浜屋に行って、
ラーメンを食べ、必ず替え玉をした。
なぜなら、それがルールだったからだ。
それからも僕は3ヶ月に一度とか、
半年に一度くらいのペースで長浜屋に行っていたが、
できるだけ替え玉はするようにしていた。

自分なりの墓参りのようなつもりだった。
しかし、量的に食べるのがつらい時もあったし、
僕自身が、入院したりして、
ダイエットとかに気を使わなければならない状態になったので、
自然に元祖長浜屋からは足が遠のいていた。

そして久しぶりに元祖長浜屋に行ったら、
ラーメンが500円になっていたのである。
今でもラーメンを290円くらいで出す店は、
福岡市内に何軒かある。

味はどうかといえば、あまりおいしくはないのだが、
元祖長浜屋だってそんなにおいしくはないぞ。
だからといって
「もう元祖長浜屋になんて行かない」なんて言わないし、
「もう替え玉なんてしない」なんて、言わないよ絶対。

僕が大学時代にわたせせいぞうという漫画家の
「ハートカクテル」という漫画が人気だったのだが、
その友人はその漫画が好きだった。
この話、店がラーメン屋でなくて、
輸入雑貨屋とかだったら、
「ハートカクテル」みたいな話になってたんだけど・・・・

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