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休日バージョンの街

これは10年前の日記
この頃は競艇の中継ディレクターをしていた。
久しぶりに読んで、
なんかヴェンダースの「PARFECT DAYS」みたいな話だなと思った。

昨日の夜、仕事を終えて、
夜中に福岡市の自宅に帰って来た。
疲れていたのですぐに寝て、
今朝お腹が空いて目が覚めて、
近所のパン屋さんにパンを買いに行った。

その途中、
「あれ、今日は街が休日バージョンだ」と気付いた。

そういえば今日は土曜日、
僕は土日関係なく、
(北九州の)若松で競艇が開催されていない日が休日なのだが、
今日は偶然、僕の休日と世間の休日が一致したのだ。

街には休日バージョンと平日バージョンがある、
ということに気付いたのは、10年以上前のこと。
当時は近所の蕎麦屋で出前の仕事をしていた。

その店は、月曜だったか、水曜だったか、
とにかく週に一回、平日が休みで、
それ以外の日は日曜でも祭日でも仕事だった。

店はうちから歩いて3分くらいのところにあり、
毎朝同じ時間、確か10時30分くらいに、
(福岡市の)けやき通り沿いの歩道を歩いて通っていた。

そんなある日、やはり歩道を歩いていて、
なんとなく、本当になんとなく、
今日はいつもと街の感じが違うな、
と感じた、何が、とか、どこが、
というのはわからないのだが、
明らかに雰囲気が違うのだ。

「何が違うんだろう?」と考えてみても、
特に「ここが違う」というところはないのだが、
とにかく明らかに昨日と何かが違う。

それで、ここからがさらに根拠のない、
ある種神ががり的な体験なのだが、
突然「ああ、そうか、今日が祭日だからか」と、
なぜか心の底から理解して、納得したのだ。
その日は祭日も祭日、
ゴールデンウィークの一日目か何かだったのだが、
もちろん僕は休日ではなく、
今まさに出勤している最中であった。

しかし僕が歩いている歩道の、
半径100メートルくらいか、
あるいは一キロくらいか、
とにかくその辺りに住んでいる人たちのうち、
80パーセント以上の人は休日の朝を過ごしていて、
そのため、なんかまったりとした、
リラックスした空気が僕までを包み込んでいたのだ。

これは、「スピリチュアルな体験」とは違う、と思う。
むしろ、冬の朝に「今日は寒いなあ」と感じるような、
ごく当たり前の、体感的な体験だった。

どうも、街の総意として、
「一部の人は働いているかもしれませんが、
今日は概ね休日です」といった感じの空気が、
「休日モード」があるような気がするのである。

特にお盆とかお正月とか、
ゴールデンウィークの時とかに、
典型的にそれを感じるが、
僕くらいのプロになると、
普通の土日とかでも、
「ゆるやかな休日バージョン」を、
感じとることができるのだ。


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