見出し画像

青春少年マガジン

小林まことの
「青春少年マガジン1978~1983」というマンガがある。
これはマンガ家を志していた小林まことが
「少年マガジン」でデビューして
「1・2の三四郎」というヒット作を生んで、
売れっ子マンガ家になっていく、
汗と涙のサクセスストーリーなのだが、
この中にほぼ同じ時期に「少年マガジン」で活躍していて、
小林まことと新人3バカトリオとして、
いつも行動を共にしていた、
大和田夏希と小野新二というマンガ家が出てくる。
僕はもともと小林まことのマンガも、
そんなに愛読していたわけではなく、
なんとなく知っているという程度で、
大和田夏希と小野新二のことは全く知らなかった。
それでも小林まことの
「青春少年マガジン1978~1983」は
とても面白いマンガで、
何回も繰り返し読んでいた。


数年前に大量のマンガの本を
整理分類する仕事をやっていて、
その膨大な蔵書の中から、
大和田夏希の作品も、
小野新二の作品も出て来て、
初めて現物を目にすることになった。
どちらのマンガもすでに
懐かしマンガ、プレミアマンガに属する、
日焼けしてほこりにまみれた、
かなりの年代ものなのだが、
1978年から1983年頃の、
希望に満ちた少年マンガの
前向きな空気にあふれた、
若々しくて初々しい、
少年の汗臭い野球帽や、
安い駄菓子の香料のような
懐かしい記憶が甦って来る香りがする。


大和田夏希は精神のバランスを崩して1994年に自殺。
小野新二は過労がたたって1995年に肝臓の病気で死亡。
小林まことはこの「青春少年マガジン」を、
ボロボロと涙を流しながら書いたという。


これらの貴重なマンガ本と作業場で出会った僕には、
懐かしいというのでもなく、
悲惨というのでもなく、
なんとも言いようのない感情が湧き上がってきた。
おそらくそこにあった何万冊というマンガの
ひとつひとつにこんな物語があるのだろう。
知らず知らずのうちに
それを感じながら仕事していたのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?