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エヴァの呪い

※シンエヴァのネタバレを含みます。

 今になって思えば作品とキャラを壊して終わらせようとした旧劇が結局は議論や二次創作の種になって失敗してしまったことが「呪い」だったのだと思う。それはそうだろ、最後の最後に「気持ち悪い」で突き放されて、納得して終われるかよ。かといってその後25年間オタクがエヴァのことを考えて綾波でシコリ続けてきたかというとそんなことはなく(そういう狂人もいると思いますが......)、現に俺もシンエヴァの前は完全にエヴァは消化済みの過去はまっていたコンテンツで、シンエヴァ観たところで、たぶん何の感情もなく劇場を後にするんだろうとぼんやり思ってた。それがまさかいい方向に裏切られるとは全く予想してなかった。

 思い入れぬきで作品として見ると粗は多いと思う。第3スラムの集団生活を通して生きることの豊かさを綾波が知るみたいなプロットは確かにベタベタだし、エヴァのない世界を作り直すというストーリーはめちゃくちゃで、そんなこと言い出したら何でもアリだろと思うし、アクションシーンも新しい技術と方法論を取り入れた挑戦だったにしても何が何だか分からないという感想だし、サイクロプスゲンドウが自分の脳を拾う描写とかギャグにしか見えず、登場人物は真剣なのに状況がシュールで笑ってしまうシーンは他にも散見される。だから、この作品で何が提示されて、何が腑に落ちて、どうしてエヴァの終わりを清々しく見送ることができたのか。

 エピローグで提示されたのは、旧エヴァを通して苦しみ続けてきた子どもたちの未来であり、エヴァの外の世界での居場所を見つけて生きてる姿だった。考えてみると、たしかに大人になったシンジくんやアスカやレイをうまく想像できたことはなかった。なぜなら旧劇において最後に示されたのは、キャラクターたちが不幸にあえぐ姿、とかだったらまだしも、割れた綾波の顔が水平線の向こうに沈む浜辺で、アスカの首を絞めて一度は受け入れた他者をまた拒むシンジくんと、その頬を撫でながら、啜り泣きだしたシンジくんを気持ち悪いと突き放すアスカという想像を超越した風景で、そこに明るい未来を見出すことは完全に不可能だった。いくらオタクによるSSやスピンオフで救われたシンジくんたちが描かれようとも、少なくとも俺の中でそれは全くリアルではなく、イメージの中のシンジくんたちは報われない14歳の少年少女のままだった。もしかしたら制作陣やキャストにとってもそうだったかもしれない。だからこそ何がなんでも前向きな未来へ成長したキャラクターが踏み出そうとするエピローグを提示するというカントクの強い意志を感じたし、旧エヴァの子どもたちそれぞれにパートナーができていること、例えばアスカとケンスケとかオタクが反発することは容易に見えてるだろうに、それでも二人を結ばせたことは、その意志の象徴だと思う。25年間エヴァで人生狂ったままだった子供たちがエヴァの外の世界でそれぞれが居場所を見つけて、新しい物語をはじめようとしている姿、それこそが呪いを解く鍵だったんだろう。マジでアスカとケンスケという組み合わせには納得いってないし、レイとカヲルが並んでたのは兄妹みたいな関係だからだろ、そうだと言ってくれと跪いて懇願したい気持ちでいっぱいだし、だけどシンジくんたちが長い旅路の果てにありふれた幸せを手にしてる姿を見て、よかったと思えて、それと共にエヴァが完結したという事実に、気持ちよく納得できるとは自分でも本当に思ってもみなかった。もう仕組まれた世界の中で居場所を求めて叫ぶ子どもたちはいなかった。

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