2020年〜2023年同人誌装丁まとめ×7冊!
0.まとめの経緯
2020年10月のオンライン同人イベントに向けて初めて同人誌を作り、その楽しさに目覚めてから丸4年。個人誌3冊、合同誌(暮村主催)4冊の合計7冊の同人誌を世に送り出して来ました。
凝りに凝った渾身の一冊から、肩の力を抜いて気楽に作ったおまけ本まで、様々な装丁を試していたところ、「暮村がどういう装丁で作ってるのか知りたい!」というお声を複数方面から頂きました。
そこで、4年間の同人活動の振り返りとしてまとめてみたのがこの記事です。どういう装丁で本を作ろうか迷ってる方の参考になるといいなぁと思います!
1.真説 カリスト封竜戦記
人生初めての一冊は、目も眩む程のホログラムPP×金箔押しでキラッッッキラに輝かせたかった。輝かせた。
子どもの頃集めていたアニメのキャラのカードって大抵レアカードはホログラムや文字の箔押しで豪華に輝いてたじゃないですか。それが綺麗でたまらなく好きで。自分の同人誌もそうしたかった。した。
ホログラムPPに金箔押しってちょっとくどいかと心配したけどやって良かった。超眩しい…!!!私好みですね。
PPと喧嘩しないよう、箔側はホログラムを避けて普通の金箔押しにしたのですが、その結果反射の仕方がPP部分と箔部分でうまく分かれてくれて、黒井さんにデザインをご依頼したタイトルもハッキリ浮かび上がりました。
ただ、ホログラムPPの特性として表紙全体が反射する模様でコーティングされるので、その分描かれているイラストは見辛くなります。表紙絵をちゃんと見せたい場合は、模様の無いPP加工にしたほうがいいですね。後述のマットPP加工は、光が反射しにくく絵が見やすいのでオススメです。
(暮村はキラキラ優先なので結果に大満足してます。)
そして、プリントオンのアジアンペーパー遊び紙マーブルブルー!サイトの写真だと気付かなかったのですが、手漉きの分厚い青紙に金銀インクでマーブル模様を付けてるんですよ。なので一冊一冊模様が全然違う。美しい…!
このシリーズの紙は色を変えて、また使いたいですね。
ちなみに本文用紙はやや厚めの白上質紙110kg。これくらいしっかりしてる方が私は好きです。
なお、こちらの本は再版の在庫がございます。
以下のBOOTHにて頒布しておりますので、もしこの記事を読んで実物を手に取りたくなった方がいらっしゃいましたら是非どうぞ!
【再版】真説 カリスト封竜戦記/オルドビス販売部
2.解説 カリスト封竜戦記
モノクロ絵でも、クラフト紙の表紙だとこんなに雰囲気出るんだなーと感心した一冊。
1冊目の「真説カリスト封竜戦記」にノベルティとして後書きペーパーを付けようと考えて書き出してみたらうっかり1万2000文字書いてしまい、紙一枚に収まりきらなかったので作った「後書き本」。需要を完全無視した自己満足の極致。
予定通り、「真説カリスト封竜戦記」のおまけとして無料で押し付けました。
流石に2冊目もフルカラーの真面目なイラストを描く気力が無かったので、自キャラの略画をモノクロで書いて表紙にしたのですが、クラフト紙の質感でいい雰囲気が出ましたね。キラキラしなくてもこれはこれで全然アリ。全然雑な感じがしない。
遊び紙には、プリントオンの秋フェア特典を使って「セレクション遊び紙 ヴィンテージゴールド ブロンド」を付けました。くすみのある落ち着いた金の反射が素敵な紙ですね。
掛けた労力の何倍もリッチな仕上がりになったと思います。
本文のキンマリ紙はクリーム色がかった紙なのですが、文章メインの場合、この色合いが読みやすいですね。
3.蒼穹に帆を揚げよ
パール調に煌めく特殊紙とレインボーゴールド箔押しの美しい一冊!
人生で初めての個人誌を作った翌年に、人生で初めての公募合同誌(アンソロジー)主催にチャレンジさせていただいた。
「pixivファンタジアAOS」という企画の、「ルナス帝国」に属するギルド「砂国精鋭部隊ラクハナダ」の前日譚を描くギルド合同誌でした。
いや〜〜黒井澪さんデザインの装飾的なタイトルロゴに、いもーすさんご作画の空と海の壮大な広がりを感じる表紙イラストが最高ですね…。
パール調の粒子が入った紙は何種類かあるのですが、このシェルルックNツインスノーは表も裏もパール調にキラキラしているので、この紙をセレクトしました。輝きは最大限欲しい。
細かな粒子の反射でイラスト全体が柔らかく煌めいていますね。
そこに、角度によって赤にも青にも色合いを変えるレインボーゴールド箔が強めに光って、輝きのバランスがとても良い。まるで表紙全体が宝石のようだ。
そして遊び紙に選んだ「アジアンペーパー ペーズリーブルー」は、手漉きの青紙に金インクでペーズリー柄が描かれていて、とても綺麗でした。イメージカラーが青×金のアラビアンイメージのギルドなので、遊び紙はこの紙一択!
マーブルブルーよりは紙が薄めかな。手漉きの厚みのムラで、穴が開く寸前みたいに向こう側が透けるくらい薄くなってる部分もたまーにあるので、丁寧に扱わないとですね。
この装丁の難点を挙げるとすれば、「表紙の紙が柔らかい事」ですね。
硬めのアートポストを更にPP加工で補強した「真説カリスト封竜戦記」に比べて、印刷所からの配送過程で角折れ本が多く出来てしまいました。予備を多めに入れて頂いたにも関わらず、献本と予約分を除くと当日頒布できる美品が殆ど無かった。
シェルルックNツインスノーは、美しさはピカイチですが、配送による本の折れのリスクが比較的高いので、そこの覚悟が必要ですね。
でももう一度使いたい…だってめちゃくちゃ綺麗なんだもん。PP加工を乗せれば多少は補強になるかな??
4.解説 揺籃の時を越えて
pixiv factoryで肩の力を抜いて楽〜に作った一冊。
タイトルで想像つくかもしれないけれど、一度あることは二度ある。
一つ前の合同誌「蒼穹に帆を揚げよ」の中に収録した25ページ漫画「揺籃の時を越えて」の後書きをTwitterで語ろうとしたら、うっかり筆が乗って10000字以上書いてしまったので本にした。後書き本の再来である。需要は考えてない。私が欲しいから作るのだ。今回は勢い余って書き下ろし小説も付けた。
でもこの本、流石に合同誌のおまけに付ける訳にはいかないので単体頒布したのですが、ちゃんと買われてるんですよね…ありがとうございます!
人生初めての合同誌主催でエネルギーを使い果たしていたので、前回の解説本同様、力を入れずに完成させることを目指しました。pixiv factoryは、画像をドラッグしていくだけで入稿できるのでめちゃくちゃ楽です。
同人誌初心者に勧めたい印刷所ですよ。
またしても自キャラ単体モノクロ略画なので、紙質で情報量を増やそうと思い、エスプリエンボス モメンをセレクト。名前の通り木綿のキャンバスに描いたような面白い質感が出ました。
今回くらい軽率に作る本ならいいですが、紙の凹凸が激しく、インクの乗り方に濃淡が出るので、色の再現性を重視したい絵には向かないですね。私の塗り方とは違いますが、厚塗りだと絵画のような質感とムラが出て面白いのかも?
なお本文紙はキンマリ系のクリーム色で読みやすく、紙の厚みがしっかりあるのが大変私好み。
5.HIGHCARD ボウケンノキセキ
特殊加工無しでも華やかハッピーフルカラー!
なんと2021年は人生初の公募合同誌主催にチャレンジしながら3名集まっての再録合同誌も作って後書き本まで作っていた。我ながらすごいな。何でそんなに動けたんだ?
pixiv企画「pixivファンタジアMOH」に投稿した作品の再録合同誌。イラストと漫画と小説が混じっているので、イラストに合わせて本文フルカラーの本にしました。
pixivファクトリーには特殊加工オプションが無いため、この本には装丁も遊び紙も一切無いのですが、全体がフルカラーで鮮やかに仕上がってるので、これはこれで大変気に入っています。表紙の3人集合絵頑張ったし、背表紙と裏表紙の元気なピンク色超可愛くない??
表紙は若干薄めの紙ですが、配送による折れはありませんでしたね。
初めて使ったマットPP、反射が抑えられてイラストが大変見やすいです。
本文もマットコート紙にしてあるので同様。
pixivファクトリーの印刷は、少し色が濃いめに印刷される気がしますね。
装丁に拘らずにサクッと一冊出したい時のpixiv ファクトリー、大変便利!BOOTHでオンデマンド販売にすれば在庫持たなくていいのもありがたいです。
6.Marsch der Frammen(マーシユ・デル・フラメン)
赤小口染め×メタリック表紙の擬似全面箔押しという新境地!タイトルはドイツ語で「炎の行軍歌」の意味。
pixiv企画「Pixiv ファンタジアLS」のギルド「強化兵士隊アイゼンバイル」の合同誌でした!
とにかくこの年は小口染めをやるぞ絶対やるぞという意気込みでいた。やった。
ついでに、表紙にはギラつく反射が欲しいけれど、箔押しとは違う事がやってみたかった。なのでやった。
背幅12ミリという極厚本だったので小口染めの赤がとても目立つ一冊になりました。
合同誌の要項で「なるべく絵は断ち切りより内側に収めて!」とお願いをして、執筆者の皆様にご協力頂いたお陰で、側面にインクの黒が殆ど出ず、綺麗に真っ赤に染め上がりましたね。大満足。
メタリックペーパーに白抑えをして印刷し、反射させたい箇所のみ白抑えを抜く擬似全面箔押しは、迫力があります。
ただ、メタリックペーパーの上にインクの層が被さるので、箔押しよりは反射が抑えられるかな。全面をギラつかせたいか、ワンポイントで眩しく輝かせたいか…といったやりたい表現に合わせて仕様を変えるといいでしょう。
遊び紙はミランダしんく。すごく細かなガラス粒子で全体がラメラメに煌めくミランダシリーズの紙は、どの色も大変美しくて私好みです。紙の厚さもしっかりしてるので、破れの心配がないのも嬉しい。また別の色を使ってみたいですね。
なお、こちらの合同誌も僅かながら残部があり、BOOTHで頒布をしております。
イベントで買い逃していたり、この記事を読んで興味を持たれた方は以下のリンクをご確認ください!
『Marsch der Flammen』-強化兵士隊アイゼンバイル合同誌-/オルドビス販売部
7.DECENNIUM(ディセニウム)
異形の本に相応しくギラつくホログラム赤箔押し×ワニ革風遊び紙!
タイトルはラテン語で「10年紀」。pixiv交流企画「九壇ノ籠」の開催十周年を記念して製作した公募合同誌。記事執筆時点で最新の本です。
今回10冊よりも少ない部数で発行することになったので、初めてSTARBOOKSを使いました。プリントオンと比べると特殊加工のオプションは少ないのですが、箔押しの種類の多さはピカイチの印刷所ですね!
本文のモノクロ印刷は、プリントオンよりもトーンっぽく粒感があり、薄く仕上がるような気がします。
ガラスの破片のような、あるいはステンドグラスのような模様の浮かぶ「リフレックス」シリーズの箔には前から興味があって、使う機会を伺っていたので、念願叶いました。
リフレックスレッド箔、色と輝きの「強さ」が最高だな…!!!!!
ホログラムPPのオプションがなかったので印刷面保護はマットPPにしたところ、イラスト部分は反射がなくなったので、箔押し部分が際立ちました。ギラッギラする!
頑張って表紙に九壇ノ籠公式キャラクターを3名も描かせていただいたので、PP加工については、今回は絵をしっかり見せるマットPPが正解でした。
表紙紙のアートポスト紙は厚さ・硬さ的には申し分ないですね。PP加工の影響で若干そり返ってるので、重くて平坦な物の間に挟んで真っ直ぐにしないと。
さて、遊び紙。当初はシルバー系に反射するキラキラ紙を考えていたのですが、途中でクロコGAの存在を知って、入稿前に仕様変更しました。
「九壇ノ籠」は、人間が異形の獣に変異してしまう疫病に立ち向かう世界観なので、鱗のようなデコボコのエンボスが掛かったこの紙の方が合う気がしたんですよね。キラキラよりも優先したい表現がある。
漆黒の紙にしたので、ワニ革財布のような高級感をも感じられますね。今年も会心の出来でした。
おわりに
以上が暮村が作った同人誌の装丁まとめとなります。
この記事を読む方の参考になるように、客観的な視点で各装丁のメリット・デメリットの両方を書くよう意識しました。ですが、主観的には、どの本も私のやりたいことを詰め込んだ最高の一冊で、私の宝物ですね!!
こうして好き放題やれているのは、私だけの力ではなく、毎年デザインにご協力頂いてる黒井さんや、表紙絵を作成頂いたいもーすさん、合同誌にご参加頂いた執筆者様方に日頃より応援したり見守ってくださってる方々のお陰だと思ってます。
いつもありがとう!今後もまた自分の情熱の迸るのに任せて色々作っていきますね!!