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~番外編No.5~ 商店街の空き店舗を若者の活躍の場に ー飯山市若者会議 「まちっと」ー

番外編はCRENECTIONのメンバーが外部の団体で執筆をした記事を掲載します。今回は日本青年館の記事を掲載します。

キーワードは「拠点づくり」

 こんにちは。日本青年館note学生記者でCRENECTIONの代表城田空です。
 今回は日本青年館が主催する「全国まちづくり若者サミット2022」の実行委員であり、飯山市若者会議の代表である西川遼馬さんに取材させて頂きました。西川さんは飯山市若者会議の拠点「まちっと」で、僕は自宅からzoomでの取材になりました。
 私事にはなりますが、第一回の日本青年館ノートで多摩市若者会議を取材した経験と日本青年館が主催する「全国まちづくり若者サミット」に登壇し、神奈川県横須賀市で空き家を活用した地域活性を行う(一社)NELDという団体でスキリングというインターンをしていた経験があります。今回の拠点づくりをしている団体にお話を聞くのは飯山市若者会議で三度目になります。今回はこの「拠点」をどのように捉え、どう地域活性に活かしていこうと考えているのかを探りました。

提言づくりで終わらない

 飯山市若者会議の歴史は2014年まで遡ります。この頃、人口急減や超高齢化といった我が国が直面している諸課題に対し、政府は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」という戦略を打ち出し、各自治体における特徴を活かしながら持続可能な社会を創生することを政策として打ち出します。各地方自治体に対しても「地方版総合戦略」の策定が努力義務として規定され、これを受けた各自治体では「地方版総合戦略」を策定するべく市民の意見をまちづくりに取り入れる動きが起きてきました。ここで着目されたのが「若者会議」です。少なくない自治体で「若者会議」といった名称で若い世代の政治参加や意見表明の場が設置しました。飯山市若者会議もその一つです。飯山市若者会議は2015年に飯山市地方創生総合戦略策定に向けた提言書を提出。本来であればそこで役目が終了ですが、会議に集まったメンバーでこれからも何か出来ないかと話が発展、活動を継続させていくことになりました。

 ここで、発足からどんな活動をしてきたのか、先程紹介した「まち・ひと・しごと・創生総合戦略」で語られる長期ビジョンと照らし合わせながら、活動を紐解いてきましょう。
 総合戦略の中で定義されたビジョンが三つあります。

 ① 東京一極集中の是正
 ② 若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現
 ③ 地域の特性に応じた地域課題の解決

 飯山市若者会議は特に②と③のビジョンに合わせた活動が多いように感じました。②の若い世代に対しての活動では、「若ショック」という若者と地域の架け橋になるようなイベントを主催していました。地元に残って働いている人や、都会で働いている人など若者からすると少し先輩の人達から社会人の生の声を聴ける取り組みです。
 地方にとってみれば、若者の人口流失は大きな課題です。地方としては若者が地元に残って欲しい。しかし、この「若ショック」のテーマを見ると地元に残って働いている人はもちろん、都会に出て働いている人にもフォーカスしています。
 若者が求めているものは何か、地域のためだけでなく、若者にとって本当に必要なことをイベントにしているのだなと、若者に対しての愛を感じました。個人的には若ショックのポスターに書かれている、お祭りを連想させる歌舞伎役者の絵がかなり好きです。

若ショックのチラシ

 最近では主に③の地域の特性に応じた地域課題の解決に力を入れています。特に今回取材するきっかけにもなった「まちっと」のリノベーションの様子はSNSに投稿されるごとに関わる人が増えていき、地域の人と一緒につくっているというのが伝わってきます。
 前振りはこのくらいにして、さっそくインタビューを進めてまいります。この「まちっと」とはどんな場所なのか、飯山市若者会議で会長をつとめている西川遼馬さんに聞きました。

台風19号の水害がきっかけ

城田 まず、「まちっと」ができるまでの経緯を教えてください。
西川 「まちっと」は飯山市の本町商店街にあります。もともとここは、飯山城の城下町として400年もの歴史があり、今もなお市の中心地としての機能があります。ところが、2019年の台風19号による千曲川決壊によって大きな水害が発生しました。商店街も浸水の被害があり、一部の店舗が再開のめどがたたず、解体の検討が始まったことを聞きました。商店街のメイン通りに面しており、すごく大きなウインドウガラスもあって、解体するのにはあまりにももったいない。そう思い、若者会議の活動拠点として活用させてほしいとお願いしたところ、安価に賃貸契約を結ぶことができました。壊すくらいなら貸してほしいという思いが通じました。

2019年の台風19号で濁流と化した千曲川

城田 活動拠点として活用させてほしいとお願いした際に安価で賃貸契約を結ぶことが出来たのは、立ち上げ当初から飯山市若者会議が地域のために活動をしていたという信頼から生まれたものだと思いました。地域で活動するには地元の人達の信頼がなければいけません。そんなひたむきな姿を地域の人は見ていて、その結果がこういった拠点づくりの時に活かされるのだなと思いました。
 ところで、「まちっと」という名前に込めた思いを聞かせてください。

西川 飯山の人はよく「ま、ちっと」といいます。これは「まあ、ちょっと、寄っていったら」のような意味で、飯山の方言ではないでしょうか。この「まちっと」に「街」と「人」を見いだし、まちと人が行きかい交流する場所になってほしいという願いを込めています。

城田 まちと人が行きかい交流する場所という想いは、他の拠点づくりをしている団体と同じですね。「ま、ちっと」の意味にも飯山の人達の優しさが溢れていて交流の場としてゆっくりと時間が流れるような安心していけるような、そんな気持ちになる拠点の名前だと感じました。

若者を主役に自分たちのペースで

城田 ところで、今リノベーション中とのことでしたが、どんな点にこだわっていますか。
西川 業者さんにお願いすれば早く出来ますが、出来るだけ自分達でやりたいというのと、自分達が集まれる時に出来ることをやっていくということを大事にしていますね。電機工事は地域おこし協力隊の方にやってもらったり、壁の塗装を地元のアーティストさんに入ってもらったりしています。早く完成はさせたいですが、色んな人に関わってもらいながら自分達の歩幅に合わせて作っていきたいです。

協力隊の方が作った照明

城田 なるほど。よくあるパターンとしてはクラウドファンディングでバッと箱を作ってしまって、そこから地域の人に活用してもらおうとしているものが多いような気がします。「まちっと」の場合は作っている段階から地元の人に関わってきてもらって、さらに先ほどの地域おこし協力隊の話のように特に若い人に関わってもらいたいという印象を受けました。なぜ地域の中でも若い人だったのでしょうか。

西川 元々飯山市若者会議のポリシーとして若い人に、地元で活動する人に光を当てたいという風に考えていて、そこに拠点作りたい!という点が重なりました。ここの拠点を地域で活動する人の活躍の場にしながら、自分達の拠点としても使おうと思っていました。

リノベーションはみんなで一歩ずつ

城田 自分が活動する拠点としてだけでなく、地域の人が輝ける場所をつくるというコンセプトにものすごく共感しました。まちづくりは自分がやりたい事、実現したいことを地域に強制するものではありません。あくまで主役は地域の人であり、最終的に活動の結果は地域の人に還元されなければならない。そういった意味で、地域の人ともに地域の人ための場所をつくっている素晴らしい場所だと思いました。 

続けることが目的ではない

城田 ところで、飯山若者会議の今後の展望をお聞かせください。
西川 メンバーが楽しく活動出来ることが一番だと思っています。続けることが目的にならず、やりたい事があってそれをやれる場所がある。それが楽しんで出来ればいいですね。だから、敢えてこの団体じゃなくても似たような団体があれば、そこはそこで活動出来ればいいのかなと思っています。
本山 今だと市から財政的な支援や場所がある。今活動しているメンバーにはここを足掛かりにしで次のステップに繋げて欲しいです。

ひな人形の展示もまちっとで行った

城田 懐が深い。僕は自分が運営している団体と同じような団体があれば、少しムッ!ってなりますし、団体のメンバーが自分の団体の活動から離れて他の団体に行ってしえば、嫉妬とは言わないけれど少し悲しいです。飯山市の若者などメンバーがどこで活動しようとも、その人が楽しく活動出来ているならそれでもいいと言えるのは、本当の意味で地域の人のことを思っているからだと思います。
自分の団体が存在する意味を見失わず、地域のために活動するメンバーが一番楽しめる方法を模索している西川さん、本山さんだからこその考え方なのだなと思いました。

リーダーのあり方を学んだ

 今回お話を伺って、何よりも西川さんや本山さんの地元への愛を感じました。飯山市にも人口減少や若者の流失など、地方が抱える共通の課題があります。地域活性、地方創生と聞くと、人口の増加や経済の循環を目的に、イベントを開催することがあります。それは必ずしも悪いことではなく、そのイベントが地域にスポットライトを当てることにも繋がるとい思います。ですが、私はその手法に違和感を覚える事が多いのです。地域の為にイベントを開き、関係人口を増やし、まちにお金を落としてもらう。地域の為になっていても、一人一人の幸せになっているのか。それが本当に地域の人が求める活性化の在り方なのかと。インタビューを通して若ショックやまちっとなど活動の節々から地域を活性化させるというよりも、地域に寄り添ったまちづくりという信念が感じられました。

西川遼馬さん

 もう一つ、飯山市若者会議のメンバーへの思いを伺い、団体運営にあたっての琴線に触れる思いがしました。自分自身もCRENECTIONという学生団体の代表として日々悩むこと多くあります。団体の方向性、活動内容、空気づくり、次の世代への引継ぎ、メンバーへのかかわり方、リーダーとしてどうあればいいのか。そんなもやもやした気持ちを抱えながら、飯山市若者会議の代表西川さんへの取材に臨んだ結果、ひとつのあり方を教えてくれたような気がしました。自分としてはこちらの方が大きかったかな。特に、飯山市若者会議を無理に継続しなくてもいい、と断言しているところにメンバーへ想いを感じました。

 「まちっと」、今度見に行きます。

千曲川と田園風景

この記事を書いた人
城田 空(しろたそら):福島県いわき市出身、神奈川県横浜市在住。クリネクション代表。趣味はボードゲームやカードゲームなど。「人と人を繋ぐソフト面でのまちづくり」を勉強中。将来は東北でまちづくりの仕事をしたいと考えている。

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