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司法試験過去問解答例

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2020年7月の記事一覧

H24司法試験 憲法

第1 〔設問1〕
 1 提起すべき訴訟
 Dは、A寺への助成が政教分離(憲法(以下省略)21条1項、3項、89条)に反することを理由に訴えを提起したい。
 もっとも、政教分離は国家の宗教への中立性を要求する制度的保障にすぎず、個人の権利を構成するものではないため、国家賠償のような主観訴訟を提起することはできない。
 そこで、客観訴訟として、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、B村知事に対し、

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H24司法試験 行政法

第1 〔設問1〕
 1 処分(行政事件訴訟法(以下省略)3条2項)
 処分とは、公権力の主体たる国または公共団体の行為であって、国民の権利義務を形成し、その範囲を確定するものをいう。
 処分性については、対象行為の法的性質および、対象行為に対して抗告訴訟を提起することが適切かという観点から判断する。
 2 本件計画決定の法的効果
 本件計画決定がなされることにより、計画施設区域において建築物の建築

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H24司法試験 民法

第1 〔設問1〕
 1 小問(1)
 Fは、Aが甲土地をBとの売買契約(民法(以下省略)555条)により承継取得し、FがAを相続した(882条、887条、896条本文)ことを理由として、所有権(206条)が自己にあることを主張したい。そのためには、Bが甲土地の完全な処分権限を有していなければならない。
 甲土地は、Cが所有していたが、Cは死亡した。Cには、子としてD及びEがいた。BはDの唯一の相続

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H24司法試験 商法

第1 〔設問1〕
 Hは、Pの得票数を集計した時点で、Q及びRの得票数については議場で集計しないで、B、C、D、Pの4名だけが取締役に選任された旨を宣言した。Q及びRの集計をしないことは不当ではないか。
 1 役員は、株主総会の決議により選任される(会社法(以下省略)329条)。この総会決議においては、「役員選任の件」が議題であり、個々の取締役の選任案は、全て独立した議案である。そうであれば、原則

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H24司法試験 民訴法

第1 〔設問1〕
 1 小問(1)
  (1) 請求原因②について
   ア 本件連帯保証契約書について
 契約書は、真正に成立したことが証明されれば、契約書記載通りの契約が成立したことを証明する性質を有する(処分証書)。
 本件連帯保証契約書は処分証書であり、XB間における保証契約の締結が直接推認される。
 したがって、直接証拠としての意味を有する。
   イ Bの印章による印影が検出されている

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H24司法試験 刑法

第1 甲が、A社社員総会を開催せず「社員総会議事録」を作成したことについて、有印私文書偽造罪(刑法(以下省略)159条1項)が成立しないか。
 1(1) 甲は、社員総会議事録を作成し、それを交付することによって、社員総会を経たと見せかけようとしているため、「行使の目的」が認められる。
  (2) 甲はA社の代表社員である。甲は「代表社員甲」と署名し印を捺印しているが、これは「他人の印章」といえるか

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H24司法試験 刑訴法

第1 〔設問1〕
 1 捜査①について
 捜査①は、甲に対して発付された捜索差押許可状に基づく捜索(刑事訴訟法(以下省略)218条1項)として行われているが、これは適法か。
  (1) 乙宛ての荷物であること
 本件捜索差押許可状は、「甲」に対して発付されているが、荷物は「乙」に宛てられている。それでも捜索①は適法か。
   ア 219条1項により、令状に被疑者の記載が要求される趣旨は、表示された

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