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素晴らしきかな上級者向け-『きグルみっく★V3』レビュー

1話の時で物語が始まっているアニメが好きだ。既に関係性が構築されており、キャラクターはその世界への理解がある、そんな状態で設定や人物像を推測しながらの物語体験は貴重で、他に替えがたい良さがある。
しかし、きグルみっくはそんなジャンルを完全に超えてきた。

5話では主人公あづきが友達むつみの母親のアイスを食べてしまい、代わりのアイスを買いに沖縄へ行こうとする。その道中には敵が立ち塞がり、あづきは変身し戦闘する。5話では大まかな関係性と設定が示され、6話の予告ではむつみがのちに変身することがわかる。申し訳ないが、1話の紹介はできない。この作品には1話から4話までが存在していない。はじめから再生したはずが5話が再生されている。だから、仕方ない。

5話が終わったら次は18話、それが終わると12話。めちゃくちゃ話が飛ぶのはまだわかるんですけど、話数まで反転するのはいよいよだよ。12話は、18話で既に登場したキャラクターの初登場回っぽい。ご理解いただけると幸いだ。

狂気のOVAはこの全3話で終わる。

長いこと続いてる海外ドラマを途中から観せられ、途中から観はじめた海外ドラマが途中で打ち切られる、そんな感覚に陥るこのアニメの魅力を紹介しよう。

ナンセンスと魔法少女

オーマイガー、おたくの好きなもの全部じゃないか。
このアニメの基本的な流れは魔法少女もの(ただし、汲んでいる文脈は明らかに特撮)で、そこにナンセンスなギャグとしょうもない下ネタを加えている。
ナンセンスにもセンスが要るが、このアニメはセンスがある側のナンセンスだ。素晴らしい。魔法少女の造形、コンセプトにもセンスが光り、これまた良い。下ネタさえ合えばなんとかなりそうだ。

特撮パロディ

オーマイガー、一部のおたくが泣いて喜ぶものじゃないか…
本編のナレーションは明らかに特撮を意識している。そんなことする意味がないので、おそらく監督・斎藤久さんの趣味だろう。
予告では痛快奇怪ヒロインシリーズという単語が使われているが、これは仮面ライダーシリーズのジャンルである痛快SF怪奇アクションを明らかに意識している。普通に3とせずひねりを加えたV3というタイトルも、仮面ライダーシリーズ3人目の仮面ライダーV3を模倣している。

本意ではないだろうが、ナンセンスでとち狂った脚本に特撮パロが加わったおかげでなんとか理解できる要素が増え、また、5話(1話)に突然登場する怪人も「まあ、そんなもんか」といち早く設定を把握することができた。

肉体の描写

現在放送中の『お兄ちゃんはおしまい!』(以下おにまい)は幼女の肉体を描くことに熱心である。おにまいによって日本アニメの幼女は"イカ腹"という大きな転換を迎え、くびれありが支配的だったロリコンアニメに一石を投じた。
しかし、話題のおにまいより14年も早く、幼女のイカ腹を描いたアニメがあり、それがきグルみっくだった。流石に肉体描写の緻密さでは最新アニメ・おにまいに敗北しているきグルみっくすだが、昔のアニメだからこそ、堂々と幼女の乳首を描写する狂った采配を取れている。これも監督の趣味だろうか…?

上級者向けアニメ

上級者向け、という言葉があるわな
ハイコンテクストな作品や、作者は病気な作品をこう呼ぶことが多いこの言葉だが、この作品は両方の性質を併せ持つ♡
ポプテピピックなんかが上級者向けアニメに数えられることが多いっぽいので、『きグルみっく★V3』はその上を行く超越者向けということになるかもしれませぬな

まとめ

『きグルみっく★V3』は文脈を読む力が高度に求められるアニメ。いわゆる上級者向けアニメと呼ばれる部類で、如何に脳みそをアニメに最適化できているかのベンチマークに役立つかもしれないですね。
あとシンプルに面白い。どうせ3話合わせて30分ちょいしかないし機会があれば観るといいと思う。ただし、ファンになってしまった場合本当に供給のないジャンルなので、草分け人になれます。頑張れ


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