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ウクレレと学び

昨年秋からウクレレを学び始めた。きっかけは、寄席で見たウクレレ芸人・ぴろきにはまったことだった。半世紀ほど前、6歳からピアノを習っていたが中学に入ってクラブ活動でバレーボールを始め、突き指をしまくってしまったために、いつの間にかフェードアウトしてしまった。以来、何か楽器を習いたいとは思っていたが踏み出せずにいた。だがウクレレに飛びついたのは、ぴろきの漫談を見て「これならできるかも」と思ったからかもしれない(それは大きな誤解だったことを思い知るのだが)。妻にも背中を押され、思い立ったが吉日とばかり楽器店で買い求め、個人レッスンにも申し込んでしまった。

以来、月2回ペースで習って来た。レッスンは1回45分。簡単な曲を弾きながら、基本的なメロディ(旋律)とコード(和音)を憶えることから始まった。数か月経ったところで、メロディとコードを組み合わせたソロにステップアップ。半年経ったところで発表会への参加を打診され、先日、人前でお披露目をする羽目になった。発表会前の1か月のレッスンは演奏する曲の練習に集中した。

先生の教え方も、ウクレレそのもの。いい感じでゆるく、リラックスさせてくださる。レッスン場は狭いながら音響環境も良く、まるで自分が上達したような錯覚を与えてくれる。

習い始めてから、改めてぴろきの漫談を観ると、けっこう高度なテクニックを使っていることに気付いた。自分がやってみて初めて、プロのテクニックに気付く。いや、プロとはテクニックをテクニックと感じさせないものなのかもしれない。

演奏会の翌日。つまり今朝、ウクレレを習い始めて演奏会に至るプロセスを改めて振り返ると、そこには人が学ぶ上でのエッセンスが詰まっていることに気付いた。

まず「誰かに言われたわけではなく自主的に始めたこと」。それが根源的なモチベーションになる。

2番目は「指導者(先生)が、ポジティブなフィードバックを繰り返しながら少しずつハードルを上げ、無理なくレベルアップさせること」。つまり、段階的に足場をかけてもらうことで自己肯定感を保ちながら上達していく。

3番目は「演奏会という目標を設定すること」。アウトプットは最大のインプットだと言われる。人前にさられることで緊張感が高まり、練習にも熱が入る。これは、人が社会的な刺激に対して感受性を身につける「ソーシャライゼーション(社会化)」の原理に当てはまる。

演奏会までの1か月は、一日も欠かさず時間を見つけて課題曲だけを繰り返し弾くことにした。必ずひっかかる部分では、どうやれば解決できるのかを考え工夫を凝らした。これは、働く人が主体的に仕事への認知や行動を変え、やりがいを持って仕事に取り組むことでパフォーマンスを高める「ジョブクラフティング」にも通じる。

4番目に「妻という身近な応援団がいたこと」。教える、教えられるという上下の関係に加え、斜めの立場から見守り励ましてくれる存在が、安心安全に何かを学ぶ上で欠かせない。

いま多くの組織では、リスキリングという名のもとにスキルアップを丸投げしているような傾向が見受けられる。それによって迷子や孤立する働き手が増えていくのではないか、という危惧を私は抱いている。

実は私は緊張すると手が震える癖を持っている。いくら練習しても、いざ本番になったら手が震えだし演奏できなくなるのではないか・・・という恐れをずっと抱えて演奏会の当日を迎えた。しかし、少しばかり緊張から指が思うようには運ばなかったが、大きな破綻は無く演奏を終えることが出来た(と思う)。

反省点ありまくりの結果だったが、今朝は「来年の演奏会めざして、あと1年頑張ろう!」という気持ちになっている。そうした気持ちにさせてくれた背景には、ここに書いたような学びのメカニズムがあったのではないだろうか。

そして何よりも大事なのは、演奏会までのプロセスが「楽しかった」ことだ。

#ウクレレ   #学び  

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