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もしもChatGPTがあなたの会社のCEOだったら

最近、AIの話題が熱いです。従来よりAIという言葉は知られていましたが、実際に私たちが利用する世界とはどこか無縁な、映画やSFの世界といった印象でした。しかし、ChatGPTtが登場したことによって用途として個人利用、ビジネス、教育、研究などの多方面で活用できることがわかり、一気にAIが身近になる人が増えることとなりました。

そうなると、今後は会社のトップや上司がAIにとって代わられるということは十分に起こりえる話なのかもしれません。

実際に会社のCEO(最高経営責任者)をChatGPTに交代させ、1か月で赤字の会社を黒字に転換させた会社が、ポルトガルのスタートアップの会社ですが登場し始めました。

スタートアップの会社だけあって話題作りのためにしたのかもしれないですし、たまたまうまくいっただけかもしれませんが、指示をChatGPTを始めとしたAIにお願いするところは今後増えてくると考えられます。
人間が考えて判断するよりも、沢山のデータを元にして下すAIの方が優秀であるシーンはAIが進化するにつれ増えていく可能性が高いためです。

例えば、2023年5月30日にChatGPTに、あなたがもしMicrosoftのCEOだったらどのように経営しますかと聞いてみました。すると、まあそれっぽい回答を受け取れました。今回はChatGPTとCEOをキーワードにして考察していきます。

AIに依頼すると、人間では到底できない早さで最適解を出してもらえる世界に対して、作成までものすごい時間がかかる仕事をしている業界や人間もいます。例えば、アニメーション映画監督である高畑勲です。

高畑勲といえば、太平洋戦争末期の神戸を舞台にした「火垂るの墓」という代表作があります。高畑勲や宮崎駿が所属しているスタジオジブリがまだそれほど有名でなかったころに火垂るの墓は劇場公開、同時上映だった「となりのトトロ」同様、時間が経つにつれ評価が増え、結果的に沢山の人が視聴する日本でも代表的な作品になりました。

日本テレビが終戦記念ということで8月15日に近づくと、火垂るの墓が金曜ロードショーで放映されたため「戦争がいかにむごたらしいのか」「戦争は二度と起こしてはならない」というトーンで語られること多かったようですが、高畑勲は「かわいそうな戦争の犠牲者の話にしたくない」とインタビューで語っています。

この映画をよく見てみれば、主人公である14歳の少年・清太は親から遺産をもらいながらも、周りの大人達とのコミュニケーションを取れないために親戚の家から家出しており、その結果として妹を死なせ、自分も自責の念から死を選んでいます。

戦争時代の話であり「死」などの描写もあることはあるのですが、実際は現代の私たちにも共通している題材を盛り込んで高畑勲は映画にしているのです。

しかし、そんな監督の思いとは裏腹に、反射的に見れば「戦争反対」にとらえることができなくもなく、その当時はそう考える人が多いからこそ商業的にも成り立っていたと言えます。
観客は監督の想いなどは関係なく、自分にとって面白いかどうかで判断するわけですから両者に相違が起きてもおかしくはないわけです。

そして、火垂るの墓以降の作品には戦争ものの作品が相次ぐこととなりました。「戦争反対」というテーマに対して否定する者は叩かれるので声を出しません。クライアントにもウケがよく、ある程度数字が見込めたためです。

そのあたりを見抜けた人は、火垂るの墓を他の戦争映画とは違うものとして認識していて、見抜けない人は同じカテゴリーものとして把握していたわけです。

では、今回のChatGPTと並んでもうひとつのキーワードであるCEOとは一体なんなのでしょうか。日本におけるCEOは日本の法律で定められている会社の機関や役職ではありません。しかし、アメリカの経営スタイルにならって、日本の経営にも1990年代からソニーを筆頭に導入されはじめました。

では海外でのCEOはというと、経営の最終責任を持つ者の役職であり、株主(所有)と経営(執行)を明確に分離して考えます。そのため、日本よりも海外のほうが会社に対してドライに考えている節があります。そんなCEOの役割は主に以下の3つです。
①業務の統括責任者
②経営計画の策定
③利害関係者への説明

①CEOは業務を全体的に見る立場として、何を指示するかが仕事です。先ほどとりあげたポルトガルのスタートアップはCEOであるChatGPT が指示したタスクを、創業者が毎日1時間かけて実行していました。

②CEOは会社がどのように成長していくのかという計画を立てる必要があります。同社のChatGPTはAIが生成したデザインを際正せるようなTシャツを販売することに重点を置き、AIが10項目のビジネスプランを策定しました。

③CEOは株主や取引先などに対して説明を行う必要があります。同社のChatGPT は投資家を募り、初期投資1,000ドルから始めて、同社の株式25%と引き換えに2,500ドルを調達しました。

こう考えてみると、ChatGPT がCEOを務めることはできないことはないのかもしれません。

ただし、いくつかの問題もはらんでいます。特に大きいのはプロンプトの内容と責任の所在です。
プロンプトとはChatGPTのような対話型のAIに対して指示や質問のためにあなたが送信する会話文のことです。この会話文によってChatGPTがアウトプットする質は変化します。そのため、誰がどんな内容をプロントに書き込むかが問題です。

そしてもう一つが責任です。企業経営執行責任者(CEO)であるChatGPTがあまり良くないアウトプットを基に行動すれば損失が発生する可能性があります。その損失の負担は所有者である株主が結果的に引き受ける必要があります。


では、もしあなたが入社した会社のCEOが株主が了承したChatGPTだとしたらどうでしょか。あなたは部下として、指示されたことに対して人間の上司と同様に従うことになるでしょう。その意味ではChatGPTが立場上、上司になっても問題ないように見えます。

今回取り上げた事例だけでなく、社会にChatGPTが深く関わりあっている社会に突入した時代になった場合、あなたが選択できる行動はいくつか考えられます。

1つ目は、今までと同じように過ごすという方法です。新しい技術に対しても動ぜず、いままでの生活を行います。上司がChatGPTに代わったところで、人間の上司と同じように指示を受け入れればいいだけです。
メリットは「何も考えなくてもよい」。デメリットは「動向を把握していないので、ますます将来どうなるか予想ができなくなる」という点です。

そして2つ目の選択肢は自分自身もChatGPTの使い方を学び、①部下として優秀な成果を出す②独立してフリーランスになる③自分も資本家となり会社の株主になる、といった行動をとることです。


メリットは「新しい技術を習得して人よりも先に進み、ChatGPTを覚えようとしない同僚や競合に対して優位性を持つことができる」という点です。もしかしたらAIの技術を器用に使いこなすことによって圧倒的な生産性を出すことができる人になれる可能性があります。

デメリットは「いつまでも新しい技術を追い求める必要がある」です。常に他者と比較し、半永続的に優位性を保つために、心休まる時がないかもしれません。年齢がある程度になってくるとキャッチアップするのも、どんどんしんどくなっていくこともあるでしょう。

そして3つ目が違う世界線に生きるということです。世界線とは別の世界、パラレルワールドといった意味。たとえば、大学教員である落合陽一氏はマタギドライブという概念を提唱しています。マタギとは土着の宗教観や自然観に基づいた猟師たちのことであり、都市部とは違う世界を生きています。都市部の人から見ればマタギの人たちの生態はよく分からず、実態がわかりません。メリットは「自分らしく生きていける可能性が高い」デメリットは「多くの人が採用している選択肢ではないので、実態がみえづらくどうやったらなれるのかよく分からない」という点です。


ChatGPTを開発したOpenAIの歴史を簡単に説明してみます。OpenAIはオープンソースかつ非営利団体として2015年12月に発足しました。その時にイーロンマスクを始めとした起業家から約10億米ドルの資金提供を受けています。しかし、その後はソースがクローズドされていき、営利組織としての色を強めていきます。2019年に子会社で営利組織のOpenAI LPを設立。同年7月にMicrosoft社より10億米ドルの出資受け入れ。2022年9月にMicrosoftと独占ライセンス契約を締結。2023年1月には同社から100億米ドル出資を受け、Microsoft社は49%の株式を取得しています。Microsoftの株主はCEOに対し、儲からないことをしたら許すでしょうか。するはずがないですね。となると、、、、。今後の動向に注目です。


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