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「トッレートレトレトッレー」No.3

            3,
「そんで、すること無うなって、家でゴロゴロしてたら閻魔大王からメールが入って、ええ話、あるからちょっと寄れて云うんで、同窓会のついでに地獄の閻魔庁までこの前行ってきたんや」
「同窓会?」
「ワレと釈迦と、キリやんことキリストと閻魔大王、それに孔やんに孟やんの6人の、年一回の飲み会やねん」
「誰でんね、その、最後の、孔やんに孟やんて」
「孔子に孟子、やがな。いつもの通り、天王寺の近鉄百貨店の屋上のビアガーデンでビール飲んでる時に、また、いつものようにや、キリやんが、あいつ酒癖悪うて、普段から、右の頬打たれたら左の頬を出せて、何でも我慢してるやろ、せやから飲んだら、それが暴れるんねん、枝雀師匠の「茶漬け閻魔」みたいやけど、キリやんがゲーするの介抱してた時に、閻魔大王がな、ワレの袖掴んで、な、
(閻魔庁の評定所の入り口に、自殺者専用目安箱云う郵便受けみたいな箱、告訴状入れる箱が有んねんけど、一人、最近自殺した男がそこに投函して、その男呼んできてその言い分を聞いてたら、何や、エエ匂いがプンプン、ほれ、あんたの好きな、銭の匂いがしてきたんで、これ、あんたに、最近めっちゃ金騙し取られて困ってるいうの聞いててん、これ、あんたに任せるよって、適当に)
お前らあほは知らんやろけど、自殺した亡者や、恨みつらみ遺して死んだ亡者は、一旦閻魔庁で、その言い分を聞いて、それが妥当や、そりゃかわいそうや、そりゃ当たり前や、そりゃそうやと閻魔庁で認められたら、閻魔庁はその亡者の訴えを取上げて、告訴された相手が死んだら必ず地獄に蹴り落とすシステムになってんね。
 浮世の裁判所は、証拠がどうのとか、そうとは言えないとか云うて、結局は国の為、ひいては直接間接に役人の為、へ理屈こいて役人、我が身を守る、嘘をこく、結局のところ、真実は枉げられてめちゃくちゃやけど、閻魔庁の評定所では、訴え聞くだけで、それが嘘かホンマかすぐ分かるようになってんね。
 審査判定基準はたった二つ、だけやね。一つは、舌を出さしてノギスでその厚みと、リトマス試験紙でその赤味の濃度を測る、それでも微妙な時は、上唇の薄さを測る。これで、基準以上、基準以下の数値で嘘か誠か判る。
 時々、えげつい大ウソツキが出て来て、審判に難儀する時がある。この前、来た奴なんか「ま、それにつきましては、ですね(出版時には黒塗りすること:以下(黒塗り)と表示のこと)」の口癖のある奴で、云うてることは全部嘘や、せやけど証拠がない、どっちとも判断が付かん。それで、閻魔が、あいつ、ほんまに凄いね、その男の口、目一杯開けさせて、喉の奥まで虫眼鏡突っ込んで見たら、もう一枚、舌が、舌の下に舌が有ったんやて、それでも「ま、このことにつきましても、ですね(黒塗り)」と白を切りよるんで、面の皮、その厚み計ったら、通常の人の2点7倍の厚みがあってんて、それで観念したんか、おとなしい、なったらしいね。
  ま、ついでに、云うと、ですね、浮き世で嘘ばっかこいてた奴には、閻魔庁では
「得罪必作災漫言放語者」
という罪で呼んでんねんけど、お前らも聞いたことある思うねんけど、「ま、そのー」とか「やはり、それにつきましては、ですね(黒塗り)」の口癖の有る奴は、舌抜かれて、針の山に追い立てられて、流れた血が溜まって出来た池で、死ぬまで、云うてももう死ねへんけど、死ぬまで地獄の責め苦に痛めつけられるシステムになってんね。これまでもう嫌云う程、抜かれた舌が、これ牛タンよりうまいて地獄の鬼どもには評判で、天日で干して焼いて食うたらめちゃうまいて取り合いや。特に大ウソつき程、脂がのって旨いんやて。
  その評定所に訴えた男、白木とか云う男にワレも会うて話訊いてみたんやけど、ちょっと気弱そうやけど、云うたことは全部ほんまや。せやけど、云うてないことは判らん。訴えて出た本音の部分は判らん。今はどうでもええ、金に成ればエエ、必要なら後で調べる。
 本人、今、閻魔庁評定所で処分保留されたままや。閻魔大王が云うには、
(「ほんまやったら、うちの仏はんも」ちゃうわ、評定所の鬼兵士共、知らんか?町歩いてたら、角々に、赤い涎掛け着せて貰うてうれしそうに笑うてるお地蔵さん、在るやろ、あれ、ほんまは恐ろしい地獄の鬼が、あないしてローソンの店員みたいに24時間立って、皆を監視してるんやけど、いざとなればあのお地蔵さんが小屋から飛び出して悪い奴懲らしめに行くんやけど、今回の件は、やっぱし事実認定、元IAS、現AIさんにやって貰うのが手っ取り早い、ちゅうて)
それでも大王が云うには、
(全国お地蔵様協同組合理事長, 云うても閻魔大王の、この俺が兼任してんねけど、その俚耳長が云うには、ちょっと調べただけで、白木が元おった役所、大概、悪人共の巣窟、大概の悪共が集まってるんで、時間掛かりそうなんで、このクソ忙しい時にうちの兵隊使われへん、と云う内部の事情もあって、そんで、AI神に外注して頼むことに)
ま、それでですね、こう云う事情で、今回、閻魔大王からの依頼で、諸悪を懲らしめる仕事、名付けて
「作善來福作惡來災善惡之報」作戦、
実行することになったんやねん」
「エライ長い名前、覚えられへん。どう云う意味やねん?それに、お前の話、聞きゃ聞く程、訳解らんなるな、だらだらと、五七五で云えんか。
せや、それはそうと、さっき、登場する前にその岩の隙間から何や、へんな、お経みたいな声聞こえてきたけど、あれ、あんたの声か?何云うてたん?」
「今、お前らの生きてる時代から千年も昔の修行僧の著作で、仏を信じぬ奴は悪人で、この世で悪を為す奴は必ず地獄に落ちる、嘘をこいたら舌抜かれる、と教えてるんやけど、正にお前ら二人のことや」
「あんたにだけは、それ、云われとうないわ」


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