師よ、ご覧あれ!私はやりました!

この穢れた女を、潰して潰して潰して、ピンク色の肉塊に変えてやりましたぞ!


どうだ、売女めが!


如何にお前が不死だとて、このままずっと生きるのなら、何ものも誑かせないだろう!


全て内側、粘膜をさらけ出したその姿こそが、いやらしい貴様には丁度よいわ!



ヒャハ、ヒャハッ
ヒャハハハハハハーッ……


どうしてこうなっちゃったかな…。
目の前には、凄惨という言葉では足りないほどの血の海と、その中心で楽しそうに叫んでいるアルフレート君。いつもの狩装束に金の三角錐の兜までかぶる気合の入りようだ。
アンネリーゼが座っていた玉座には丁寧に細切れにされた肉片が鎮座している。どうやらまだ生きているようだ。血族の女王なだけはある。

あれから夢に一度戻り、面白半分でアルフレート君に会いに行った俺も俺なのだが。
未開封の招待状を見せると、目の色を変えて飛びついてきた。そこまでは想定内だったのだが、その足でカインハーストに向かうというのでヘムウィックまで送ってやった。
お互い、この街を清潔にいたしましょう…。」
とだけ言い残すと、早々に馬車に乗って行ってしまった。
置いてけぼりを食らった俺は夢からまたカインハーストの玉座で目覚めたというわけで、そしたらこの状況だったわけだ。

物腰柔らかで顔もハンサムなアルフレート君がねえ。こんな狂気を抱えているとは、たまらないね。これだから聖職者をからかうのはやめられないよ。

…おお、あなたでしたか!
見てください!あなたのお蔭で、遂に私はやりましたよ!
どうです!素晴らしいでしょう!これで師を、列聖の殉教者として祀れます!

ヒャハ、ヒャハッ


私はやったんだああああああああ!!!


ヒャハハハハハハァーッ!!!

興奮冷めやらぬ様子だ、一応俺も血族になったことは黙っておこう、このまま殴り掛かられてもおかしくない。
そういえばあの不愛想な騎士はどこへ。
いたいた、こいつもまた細切れにされている、最後まで言葉を発しなかったのだけは気になるが、仲良くできそうな男ではなかったからまあいいだろう。
長居する気もあまりない、彼の気が変わらないうちに立ち去ろう。

夢に戻り、ゲールマンの爺にアルフレート君が所属している処刑隊とやらについて聞いてみたが、かなり昔のものだそうだ。
そもそも、カインハーストへの行き方を知らなかった時点で疑問ではあったが、本当に彼は処刑隊の人間だったのか。
今となっては知る由もないが、まあ彼も夢に囚われている一人だったのだろう。それが成就してなによりだ。

余談だが、聖堂街の片隅に自害したであろうアルフレート君と、彼が建てたこじんまりとした祭壇があった。
祭壇には師匠の形見であるあの冠が祀られていた。
彼の夜は終わったのだろう。うらやましい限りだ。

獣狩りの夜はまだ終わらないというのに。


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