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奇跡のチームのはじまり

今日は6月2日だった。
結婚式の記念日はすべてカレンダーに登録しているはずなのに
今日のこの日は登録し忘れていたみたいで、

ふと1年前何していたんだろうと思い返したら
相変わらず私は結婚式をつくっていてそれが「奇跡のチーム」のはじまりの日だった。

だから急いでPCを開いて
この結婚式のプレイリストを聴きながらこの文章を書いている
乱文でもいいから、残したいと思った。センチメンタル感ありそうだけどもういいや。
奇跡のはじまり、を、今残すことに意味があると思った。

ハッピーエンドが生まれた日

ふたりと私が初めて会った日
ふたりが新婦様のお父様に結婚のご挨拶をしに行く日
過去の話を全部してくれた日
そのすべての日からこのコンセプトが生まれた。

金沢の小町通り。ゴーシュという、チーズケーキが美味しいお気に入りの喫茶店。
私とアートディレクターの望月は2018年大した夏休みも取らずに結婚式をつくり続けていた。
ちょっとゆっくりしようと真冬に夏休みをとった。
それでも仕事をしていないと落ち着かない私たちは、結婚式のことばかり考えてた。

おもむろにふたりに聞いた話のメモを取り出して
私はコンセプトをつくり始めた。
今日は良いものができそうな気がしていた。

ふたりの顔を思い出しながら、話のひとつひとつを考えていく。
彼女は小さい頃どういう表情でお父さんに話しかけていたんだろう。
彼は彼女に気持ちを伝えた時どんな目をしていたんだろう。
ふたりが一番幸せな時はどんなふうに笑うだろう。
10年先、お互いどんな表情で見つめているんだろう。

幸せになることに臆病なふたりだった。
ドラマのような人生も経験してきた。
「私なんか」「俺なんか」そんな言葉を笑いながら話すふたりだった。
その、ちょっと眉毛を下げて笑う顔が、ふたりらしさでもあった。

そうやってぐるぐる考えた後、
私はひとつの言葉を、ふたりの名前の横に書いた。

“ ハッピーエンド ”

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これは結末が決まっている物語
なにがあってもすべてはハッピーエンドに向かっていく
だから、私なんか、そんな言葉は置いて自分の人生、思いっきり生きて

そんな想いを込めて私は最後の文章をこう綴った

わたしたち、幸せになっていいよね

ふと顔をあげて、
望月に溢れるようにふたりの話とコンセプトの話をした
独りよがりのハッピーエンドではなく
この物語を聞いた人がじんわりを幸せになるような、そんな名作の結婚式をつくりたい

うん、いいですね。カタカナが、良いと思う。

そういって望月はフォントの話をしたりする。頭が同期する感覚がそこにはある。
きっと思い描いているものが同じ。これは良い結婚式になる。

結婚式が怖いことがある

そこから当日まで準備を進めるわけだけど
結婚式が怖くなることがある。

人生で一度しかないこの日、
人生を変える、そんな可能性を秘めた日、
何かが始まり、何かが動き出す日。

ふたりで言えば「ハッピーエンドの1ページ目が開かれる日」だから。
どんな幕開けを迎えるかで、ふたりの人生はきっと変わる。
おこがましいかもしれないけど、
そう思っていなければこのコンセプトはふたりに渡さない。

覚悟がいる。

私は割と淡々とすべてをこなす方だけど、
ふたりとの付き合いはもう1年以上になっていたし、彼の血が滲むほどのサプライズの努力も、彼の友人の彼への想いも、彼女のお父様の素直な寂しい気持ちも知っていた。
1日をつくるにはきっとふたりを知りすぎていた、そんな感覚。

だから、チームのメンバーにも頼った。一緒につくるクリエイターのみんなにも頼った。当日しか関わることのないキャストにもふたりのことをたくさん話した。多分、初めてくらいには弱さ全開だったと思う。

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一人でつくるなんて到底できない。

わたしたち幸せになっていいよね

このコンセプトをつくった時、私にはイメージした一枚の景色がある。

ふたりの披露宴の退場、ぎゅっと腕を組んだふたりは
大きな歓声の中笑顔で歩いていく。
そして、最後振り返り、もう一度みんなの顔を見渡す。
みんながふたりにたくさんのフラワーシャワーを浴びせる。
「幸せになれよ」そんな言葉が飛び交う。
ふたりは手を繋ぎ、ぎゅっと強くもう一度握って、こう思う
「そうだよ、私たち、幸せになっていいよね」

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photo by Ryota Okamoto(Kuppography)

この一枚を残すには、司会者がタイミングを合わせて掛け声をかけ、
カメラマンと映像カメラマンがかぶらないようにこの一瞬のカメラ位置を確認し、キャストはゲストに確実に花びらを持ってもらい、音響が絶妙なタイミングで音をあげ、照明担当がスポットライトをタイミンよくつけ、会場スタッフは全員会場内にいない状態をつくる。

すべてはハッピーエンドのはじまりのため。

奇跡のチームとは

タイミングよくプレイリストが、あの大号泣したアイノカタチの音源にきた。

彼は、私たちのことをこう言ってくれた。

りくちゃんたちは、奇跡のチームだ
お客様のことを本気で考えて一切妥協がない
りくちゃんだけじゃなくて、みんながそうなのがとてもよくわかる

あの日、奇跡は起きていない。
純粋にふたりの幸せを全員が願っていた、だけ。
でも、一人欠かすことなく、全員が。

今、私の耳で流れているアイノカタチ。
彼が、数ヶ月彼女に秘密でサックスの練習をして吹いたサプライズ。
アルバイトもして、数時間も車の中で練習をした。
本番懸命にサックスを吹く彼を見て、私は泣いた。
もちろんだと思う。
でも、その横では今日初めてふたりと会ったキャストが泣いていた。
彼の奥に見える会場担当高田さんも顔を真っ赤にして泣いていた。

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これが、奇跡のチームの正体だと思う。

わたしたちはいま、

こう書きながら、とても悔しいことがある。
あの日から、私は人生をかけて誰かを幸せにすることをより考えるようになったと思う。責任や覚悟も怖さも。同時に、その幸せも。

私たちは今でも奇跡のチームでいられてる??

そんなことをふと自分に問いかけてみるけれど
それを確かめる場所すらない。
お客様にも会えない、あの奇跡を感じることもできない。
くそーって気持ち。
結婚式がつくれないのは、やっぱり私はとてもいやだ。
なにも状況は変わらないけれど、でも、私は、結婚式がつくりたい。

奇跡のチームと。
それを信じて、その1日を任せたいと思ってくれているお客様と。

きっと、今でも私たちは奇跡のチームでつくれる。
どれだけ期間があいたとしても。
みんなの中に根付いている。
誰かの人生に想いを馳せることも、誰かのために自然と行動できちゃうお節介なところも。

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photo by  Ryota Okamoto(Kuppography)

結婚式で、会いましょう。
ふたりには家族が増えた。1年、おめでとう。


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