どうしようもなくて、衝動。

2019年10月観劇。

千秋楽でした。


2年前に初めて観て以来毎年観に行っているgood morning No°5さんの舞台。こちらの劇団さんの舞台は奇抜な演出と斬新な構成から"合法シャブ"と呼ばれる中毒性の高さと、とにかく自由度の高い観劇ルールが特徴的。

演劇というのは映画と違って基本的に公演中は飲食や私語は禁止なのだがこの演劇は常時飲食OK。携帯も切らなくていいとのこと。音の出るお菓子なども食べていいし前説でも「静かに観ていただきたい瞬間など一秒たりともございません。」と粋な説明をされる。開演前にキャストの方々が会場内にて直接売り歩いているので、声をかけて私もおつまみ(お菓子詰め合わせ)を購入し、公演前に客席でポリポリとおせんべいを食らった。普段の舞台鑑賞でこんなことは出来ないので不思議な感覚〜と思いながら後ろを振り向くとコンビニ弁当を食べてるお客さんもいた。激強。素敵。

あと公式グッズが100円で売られていたので買ってみたら裏にオリジナルソングの歌詞が書いてある黄色い旗とたくあん2つがもらえた。このたくあんは、たくあんに関するシーンの際に匂いを嗅いだりして4DXで味わってもらおうという意図とのこと。普通に公演中に美味しくいただいた。旗はクライマックスらへんで振った。


千秋楽はチケット代が爆安な値段になるのもgmn5さんの特徴。今回は12周年ということで1200円だった。演劇の相場は大体5000〜6000円なので良心的すぎる価格。その代わり座席はVIP席以外床に体育座り(一応クッションあり)なので、会場の端から端まで客でぎゅうぎゅう詰めになる。まぁ安い値段というのはそういうこと。「VIP席の方と下々の皆さん」と痛快な前説を飛ばす煌びやかな澤田さんの姿も毎年の馴染みとなっている。



この舞台に関してはストーリーを説明することはとてもとても難しい。フェルマーの最終定理と同じくらい難しい。序盤からパズルのピースをバシャっとひっくり返して元々なんの絵だか全く分からないような手探りの状態が続くのに、最後には「あぁこういうことだったんだ。」と勝手に頭が理解するような、そんな作品。歌あり、踊りあり、芝居ありとボリュームも満点である。

試しに文字に起こしてみると

ピンクだらけのサンリオグッズ?を集めたファンシーショップを営むおじさん、そこには教師との恋仲に悩める修学旅行生や、売れたくて仕方ない女優が買い物に来たりする。観光客も来たりして客足はそこそこのようにみえる。が、間をたっぷり取ったと思ったら急に店主が奇声をあげてファンシーショップの壁を破壊しだし、周りのセット等を全てばらまきだす。全て破壊し終えステージがすっきりしたと思ったらふんどし姿のキャストやゾンビたちが登場しマイケルのスリラーを踊り狂う。

大体こんな感じの序盤。

わけが分からないと思うが実際に観てるこちらもずっと「?????」と思っている。が、あまりの訳わからなさに面白くなって笑ってしまう。ちなみに女優さんもふんどし姿になっている。さすがにニップレスだが手ブラシーンもあったりするしもはや乳首さえ見せなきゃ大丈夫みたいなワイルドさに毎年度肝を抜かれている。

あまりにも大胆な場面転換が何度もあるためその度に「どういうこっちゃ」となるが、何気ないセリフやシーンの切り替えが思わぬ伏線になっていたりするので何故かスッキリしてくるのだ。


あとは1分に1回女性とキスしなければ死ぬ病気になって舞台上でキス祭りが始まったり

刑務所から脱獄してきた花魁(というか芸者?)姿の女が舞台下からいきなり登場したり

キャストによる超絶早口&長台詞&体全体を使ったアクションが繰り広げられたり(これは恒例)

人の恨みつらみを書かれた壁が命を宿して擬人化して暴れまくったり

売れない女優がふんどし姿にたくあんをぶら下げてオナラおばさんとしてちょっと人気になったり

幼女に欲情するおじさん(にしか見えないが一応男子高校生役)たちが床を転げ回りながらリコーダー四十奏を始めたり

バイトに恋した店員が自分のことを記憶に刻み付けるためあらゆるハラスメントをぶつけたり

人々を照らすミラーボールマンが現れて空を飛んだり


ハイライトだけ集めたら本当に訳が分からない。ひとつの演劇を観ているとは思えない。8つくらい観てるんじゃないだろうか。

女優として売れたいと言っていた女性がふんどし姿にたくあんぶら下げてくるし、さっきまで学生だった人が次の場面では急にエリート(?)サラリーマンやキャリアウーマンやバーの店員になっていたり、と思ったらまた学生に戻ったり今度は八百屋になっていたり要所要所で命を宿した壁が暴れたりチャッキーにそっくりなチアキが登場して持論展開したりと、とにかく規則性の無い場面転換なので前半では気づけなかったが、それらは全て時系列は前後するものの、人生の移り変わりを表している様子。

ただ流れとしては起→承→転→結でなはく

起→混沌→混乱→無秩序→結

というような感じなので、後半になるにつれようやく紐解けるような印象。前半は紐つけた暴走馬に振り落とされひたすら引き摺られるような感覚だった。良い意味で。



冒頭で出てきたファンシーショップのおじさんは最後の最後にポッと再び出てきて「それぞれが可愛いと思うものを選べばいいよ。」的なことを静かに語っていた。この何でもない当たり前のような台詞が、この演劇の大部分を語っていたように思える。

衝動でいい。やりたいことをやればいい。すぐに結果はついてこないかもしれない。意味などなくて訳などなくて、ただ溢れてくる衝動に振り回され悩まされることもあるけれど、時は流れるし明日はくる。衝動でも欲望でも、自分で選んだのならそれでいいし、それがいい。最後にはみんなで裸になって笑って踊ろうよ。

というような舞台だった。

と思う。

最後にはみんなで物理的にほぼ裸になって笑って踊っていたし。裸というかふんどしだけど。


この恐ろしく拙い文章からどんな演劇か想像することは果てしなく難しいと思う。ただとにかく終始風邪をひいた時にみる夢のような光景だったし、混沌とした非日常の空間を味わえる舞台だということが砂粒ほどでも伝われば万々歳である。


ちなみに以前書いた「ストリップ学園」の続編、「ストリップ海峡」が今度公演予定なのだがこの劇団さんも携わるとのこと。面白いことにならないわけがない。存分に狂った演劇が出来上がりそうだ。



この舞台を観終わった後、アーティストのライブを観に来ていた後輩たちと久しぶりに会うことになっていたので、待ち合わせ場所の浅草駅で待っていたが何故か会えず、互いに困惑。よく見たら私がつくばエクスプレスの方の浅草駅に到着していたので結局雨の中歩き直した。前回といい駅にスムーズに辿り着く機能が脳に搭載されてない。

その後は無事に会えて飲み交わした。私の終電の関係で1時間半くらいしか飲めず、話し足りなかったのでオールしてしまいたい衝動に駆られた。

が、翌日の予定を考慮して大人しく解散した。

理性的な僕ら。




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