おばさんだから

数日前の話。ひとりで電車に乗ったら車両内で爆睡してるミニスカートの女子高生がいて、お節介かなとは思ったけど反射的にその隣にさっと座った。その時、私の後ろで少し狼狽えたような男性がさらにその隣に座った。おそらくは私が女子高生とは一つ空けて座ると踏んで、その間に座ろうとしていたようだった。

40代から50代、黒いダウンジャケットに量販店的な無個性の黒い仕事用鞄、ジーンズ。靴も見ておけばよかった。一瞬だけ見た横顔は、うまく説明しかねる。やがて数駅過ぎると目が覚めた女子高生が降りて、どこか安心した気持ちで私は空いた方に移った。すると、反対側から家族連れが乗って来たのをいいことに、その男性は私の隣に移動してきた……!

最早心臓が凍りつきそうになっていたけど、気にしないフリしてスマホを見つつ、知り合いに凄い勢いでDMを打ってみたり前の方に身を乗り出して周囲に自分がここに居るアピールしてみたりした。まさかこの後私が降りるまで男性は乗っていて、最悪ついてこられたりするのだろうか。もし万一、そうなった場合のことも想定し続けた。その時間は永遠に思われたけれど、多分15分くらいして男性は降りていった……。

10年前の自分なら、こんなことはしなかったしできなかったと思う。おばさんになったからしたことだし、できたことだった。
話は20年以上前に遡る。当時高校生だった私は、帰りの空いた電車の中で隣の席の男性に脚をずっと太腿に押し付けてこられた体験があった。すみませんと声を掛けても寝たふり。周りにも見ている人は居らず、諦めて別の席に移ると、背後で明らかに舌打ちしたのが聞こえた。私はミニスカートではなかった。

あの女の子は駅に着くまできっと何も知らなかったと思う。それでも、過去の私を助けるようなつもりで、ものすごく怖かったのだけどそこに居続けた。結局のところ私のしたことは一人相撲で、何も意味がなかったかもしれない。でも、もしあの女の子が気づいてくれてたら、そして20年後には同じ事をしてくれたらいいなってほんのり思ったりしている。

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