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工房ぐるり

「樹から木へ」

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私達は北アルプスの麓・長野県大町市にて、夫婦で木工房を営んでいます。

お皿やカッティングボード、マグカップなどを中心に暮らしの周りの木工品を制作。作風の根源には「樹から木へ」というテーマが一つ大きくあります。銘木ではなくても一本一本その土地で生きてきた木のストーリーを大事にし、木の魅力を引き出すこと。作品の持ち手に自然の枝を使っているのにはそんな思いも含まれています。

どこにでもあるたった一本の枝でも、切り取ってフォーカスするととても豊かな表情をしています。自然の樹木そのままの姿を残す枝から、木が育ってきた背景を想像してもらえると嬉しく思います。

長野で木工をするということ

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長野県の木曽にある上松技術専門校で木工の基礎を学んだ私達は、信州の自然に包まれた環境に魅せられ2013年にここ大町市美麻に家族で移住を決め、2016年より「工房ぐるり」として活動を始めました。

「ぐるり」という屋号には、
身近な暮らしの周りに寄り添ったものという「ぐるり」
世代を超えて愛されるものづくりという「ぐるり」
自然の恵みに感謝して持続可能な循環を目指す「ぐるり」
林業の方々が伐った樹が、私達の加工を経て製品に変わり、使い手の皆さんへ届くというサイクルの「ぐるり」
など、さまざまな意味を込めています。

長野に移住してからより「木」というものが身近な存在となりました。数十年前までは暮らしの中でなくてはならない存在だった「木」。身近な里山の樹は厳しい冬の暖の為薪や炭となり、生活のための道具をつくり、樹皮や樹液までも活用されていたかもしれません。山の樹から生まれるものにはその土地の暮らし全てに必然性があったのだと思います。

現代の暮らしではその必要も無くなってしまったのかもしれませんが「樹にまつわる環境は無くしてはならない」と日々感じています。そのために何ができるのか、この土地ならではのものづくりを通して模索していきたいと思っています。

新しい拠点

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今年8月に場所を少しだけうつし、新しい工房に移転しました。

森の中にポツンと建つ大きな倉庫。これまでの倍の広さになった作業場と静寂に包まれる広い敷地は、よりものづくりに集中でき、作風にも新しい影響をもたらしてくれると予感しています。周りは様々な広葉樹やカラマツに囲まれ、工房裏の林道を5分ほど歩き森を抜けると、北アルプスが一望でき菜の花や蕎麦畑が広がる中山高原に出ることができます。白樺は長野県の県木ですが、なかなか木材としては活用されていないというのが実状です。中山高原には白樺の森もあり、昨年から製作している白樺シリーズにもこの森とつながれると希望を抱いています。

ここ数ヶ月は新しい作業場の環境づくりに集中しています。来年までには、作品を展示できるショールームのオープンを目指して改装していく予定です。常に目標であったクラフトフェアまつもとが中止になってしまったことはとても残念ですが、今年は新しい環境づくりの年として、格好のタイミングだったのかもしれません。

ハマっていること

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ここ最近は燻製料理にハマっています。一斗缶で作った燻製器でつくるベーコンやスモークチキン、燻製玉子などは格別な美味しさです。製作の過程で出るさくらやくるみのおがくずをチップにし、ロケットストーブで木端を燃やし珈琲豆を煎る。わずかですが最後まで木材を使い切れることにも小さな喜びがあります。これも一つの「ぐるり」かなと感じています。少し落ち着いたら、新しくなった環境での庭キャンプや、雪の季節にはスノーシューを履いて中山高原へ散歩できるのも待ち遠しく思います。