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T-BOX 平島鉄也

動物作品をつくっています

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小さい頃から生き物が好きで、昆虫や魚を捕まえたり飼育したりしていました。水槽の前に噛り付いていつまでも眺めていたことを覚えています。

自分が作品を制作するようになると、自然とその記憶がよみがえり当たり前のように生き物を制作するようになっていました。カブトムシを捕まえていたドキドキ感、魚の水槽を眺めていたワクワク感。「自分が感じていたそれらの気持ちを形にしたい」という思いで制作をしています。

最近になり、昆虫を捕まえに行った森や林は少なくなり、魚を釣りに行った川はコンクリートで固められ立ち入り禁止になってきています。魚も明らかに種類が減り、自分が生きているほんの数十年の間にこれほどまでに変わるものなのかと愕然とします。今まで生きてきた中で感じてきた人間の営みと自然環境の関係。人間は何のために存在するのか……。いろいろな問題を抱えつつもこれほどの科学や文明、思想を生み出しさらに前に進もうとしている私たち人間には、やはり存在する理由があるように思えてなりません。いつしか、それらをテーマにした作品も制作するようになって行きました。しかし、それはネガティブなものではなく、建築物と動物が融合しバランスを保ち存在している理想を求める形になっていきました。

作品の発想は様々ですが、基本的には動物作品が多いので「まずなんの動物にしようか?」というところから始まります。本物が観たいので水族館や動物園に行ったり、あとは図鑑を見てつくりたい動物を決めて調べます。動物には、フォルム、動き、生態、生活環境など様々な特徴があるのでその中からヒントを得てイメージを膨らませていきます。野生動物の写真集などを観ることも、動物園では分からない野生の肌艶や緊張感など本来の生き生きとした姿を感じることが出来るので大切です。一番難しいのは動物の足。間近に観られない動物は遠かったり草むらに隠れていたりして観察がなかなかできません。今ではネットの情報も多く活用していますが、なるべく実物を観るようにしています。

技術的に鋳金は、制作した作品の中身を空洞にして厚みをなるべく均一にすることで鋳造の上がりが安定したり、重さを軽減出来たりします。中を空洞にしないと重くなり過ぎたり、鋳肌が荒れたり引いて凹みが出来たりします。自分の制作方法では原型を制作し、外側を完成させたあとにわざわざ中身を堀り空洞にしなければならないことがよくあります。そのとき、折角空けたからには何か仕込みたいという気持ちが湧いてきます。開けた手間が勿体ないと思ってしまうのです。そうして中にも細工がある作品が増えていきました。

作品の構想には毎回苦労しています。悩んで悩んで、絞り出して決まっていく感じですが、原型を制作し始めて作業が進み、形が現れてくるとイメージが急に閃く事があります。なので制作し始めた時と完成の時では形が変わっていることもしばしば。

新作が完成した時はやはり嬉しいものですが、それを発表して観た人の反応を観るのもドキドキして好きな瞬間です。そして手に取って頂けると本当に嬉しいです。

制作と造形教室

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埼玉県春日部市の田んぼに囲まれた場所に工房を構え、造形教室をしながら制作活動を続けています。作品はアクセサリーやオブジェなどを、鋳金の脱蝋鋳造の技法で制作。ワックスや粘土で原型を作り鋳型に起こして鋳造する金属作品は、主に動物や自然環境をテーマとしています。作品を開くと中にも細工があったり動いたりなど、仕掛けのある作品も多く制作しています。

造形教室では年に1回工房を開放して「858-市」というイベントを開催。生徒さんの成果発表会や縁のある作家さんの作品展示やワークショップなどを楽しんでいます。今年はコロナ禍のなか12月6日~12月25日までオンラインで開催することになりました。ご興味ある方はWEBサイト(準備中)をチェックして頂けたら嬉しいです。

現在、5歳の息子と2歳の娘の子育て奮闘中。今年のクラフトフェア松本は中止になってしまいとても残念でした。来年また参加できることを期待して制作に励みます。

ラジオとヘッドルーペ

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相棒といえばいつも頭の上に乗っているヘッドルーペでしょうか、既に老眼になり欠かせない道具になっています。制作の時には動物資料を観ながら原型を制作することが多く、当初老眼鏡を試してみたのですが乱視の眼鏡との掛け替えが面倒で、手元の原型と資料の視点移動に苦労しました。他に何か良いものはと思いヘッドルーペを使用してみたところ、乱視の眼鏡を掛けたまま装着出来て、上げ下げだけで切り換えられるので手元を見る時にとても便利でいつも頭に乗せています。

あとはラジオ。工房に来たら先ずスイッチを入れます。特に深く聴いている感じでは無いのですが、会話や音楽が適度に流れ、最新の流行やニュースも聴けて今の世の中とも繋がれている感じがます。日々当たり前の様に流れています。妻は結婚してから聴き始めたのですが、今では自分より本気で聴いていて投稿までするようになり、ラジオ局から何やらプレゼントが届いたりパーソナリティーの人が工房に遊びに来たりするまでになって、以前よりも繫がりが強くなりました。

ヘッドルーペとラジオは日々の制作に当たり前にあるものになっています。

ちょっといざなわれてきます……

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工房ではガレージの上に植物を植えて水鉢にメダカを飼うなど屋上庭園と称してガーデニングを楽しんでいます。屋上庭園に行くときは「ちょっといざなわれてくる。」と言っては階段を登っていきます。いろいろな植物を植えているとあるものは増えすぎ、あるものは萎れて無くなり、花が咲き実を結び、虫や鳥も集まります。虫や鳥も楽しみたいのですが植物を食い荒らすものもいて生態系のバランスを維持するには面積が足りなすぎるなぁ、と大自然に思いをはせて生き物の中に身を置いていることを実感します。春になると忘れていた植物が芽を出して、「あぁ植えてたなぁ……」と思い出して嬉しくなったり、夏が近づくにつれて抑えられないくらいに成長して驚いたり秋になり実をつけたのを口に放り込んでみたり、寒くなるに連れて霜が降りる前に屋内に入れるのを気にしたり…。日々の景色の変化を楽しんでいます。

あと最近ハマっているものは「びじゅチューン」というテレビ番組。美術品や世界遺産などから発想して作詞、作曲、アニメーション、すべてを担当している井上涼さん。何度聴いても飽きずに歌詞を覚えて歌いたくなってしまうほどに中毒性があり、妻も子供たちも一緒にヘビロテで聴いて家族でハマっています。最近、家族が口ずさむのはすべて「びじゅチューン」の曲になってしまっているくらいです。