橋本瞳 Hitomi Hashimoto metalworks
日常の中にあるモノの表情にフォーカスする
日常の中にあるものにふと目を向けてよくみると、意外にも繊細だったり、とても存在感があったり、妙に魅力的だったり、ちょっと気持ち悪かったり……。そういったものが溢れています。
しかし、忙しない日々の中では、そういったものに目を向けることなく毎日が過ぎ去っていきます。
周りにあるふとしたモノに気づく視点をいつも持って、その視点で自分の作品を見つけてもらえたら。そんな思いから、日常にあるモノの魅力的な表情にフォーカスして作品を制作しています。
モノの表情
植物や地図、地形の俯瞰写真、自然の表情などをモチーフにしています。これらをモチーフにして制作しているうちに予期せぬ表情が現れた時、素材の魅力を実感します。
この写真にある作品はその時々の表情に任せてできた部分が多く、再び同じようにつくる、ということができないところが魅力でもあります。
金属での表現方法
私は金属の中でも「鋳金」という金属をとかして型に流し込む方法で制作をしています。鋳金の工程では、原型を制作し金属になるまでに素材を変え、いくつかの過程を踏んで行き、金属に触れるのは最終段階だけです。その素材が変わっていく過程で積み重なる表情と時間、そして髪の毛ほどの繊細な表情も再現するこの技法が自分には合うのだと思います。
金属を使ってものを作り始めてから15年以上が経ちました。最初に鋳造をしたときにオレンジに溶けたブロンズが流れるのを見た時、心の奥でハッとしたような感覚を今でも鮮明に覚えています。今はそこまで大きな鋳造はできませんが、原型の制作過程は変わりません。いつもうまくいかない表現への探索と観察と発見です。そしてそれをいつまでも続けていけたら良いな、と思っています。
横にあるもの
制作中横にあるもの、それは音楽です。
音楽と接している時間は、制作時間よりも長いかもしれません。制作中はラジオを聞いたり、プレイリストを流したり、アーティストのアルバムを流したり。ときには制作より音楽に気を取られることも。そのため、歌詞が耳に入ってきやすい日本語の曲は、制作中に聴けなかったりもします。
夏はクリエイティブ野外活動と称し、音楽を野外で満喫するのがここ数年の趣味でしたが、今年は残念でした。歩いている時、電車に乗ってる時、なんでもない風景を音楽がはっきりと「ワンシーン」にする時がとても好きです。
今年は自分の制作の観点、スタイル、自分が好きなこと、苦手なこと、など改めて見直すことが出来た年でした。野外クラフトフェアも音楽も、思い切り集まって楽しめる時がやがてくると思います。また皆さんと集まれた時に、自信を持って作品をお見せできるよう、ひとつひとつしっかりと作っていけたらと思います。