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秋の訪問

うちの部屋に、テントウムシが来てたんです。

秋の始めくらいだったかなあ、キンモクセイが香りだした頃でした。まだひと月前にもならないかなあ。

夕方帰ってきて、「やっぱりまだ早かったか」とか思いながらマフラーやら毛帽子やらをぽいぽい脱ぎ散らしてたら、壁に張り付いてるテントウムシを
見つけました。

見て、
「うわ」
と思いました。正直べつに可愛いとも感じませんでした。「なんやこれ。ええ?あ、テントウムシか。」なんでまた部屋の中に。寒いんかな。まあええわ、ほっとこ。そのまま、何日か過ごしました。

毎日2回ほどは目に入りました。
ある時は障子の枠に、ある時はやっぱり壁に、テントウムシはいました。

モネの「睡蓮の池」のポストカードを机に飾ってるんですけど、絵の中の橋の上なんかにくっついてたときは、「おお」と思いましたね。なんか様になっとるやないかと。
また、紅茶を満たしたティーカップの淵に羽を休められたときは、「おいおい待てよ」と思いました。好きに過ごしたらええけど、カフェインはやめといた方がええんちゃう?

わざわざ部屋からつまみ出す理由もない。
わざわざ食べものを出すこともしませんでしたが (たまに鉢植えの草に乗っかってました。食べれるもんあるんやったら好きに食べ、ないんやったら悪いけど外に帰り。とか思ってた)。
外寒いしな、おりたかったらおったらええやん。

しかし半月くらいしたある朝、脚を縮こませて、硬くなったテントウムシを見つけました。

睡蓮のポストカードの近くに落ちていました。

ああ。残念。
朝、部屋の中で見つけたら、「おはよう」と思ったりしてたので、ちょっと残念で。
庭の土に、葬りました。

ちいさい秋の訪問でした。記録までに。

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