隔離生活も折り返し地点の8日目に突入した。考えてみると、８日間も人と対面で喋らなかったことは、これまでの人生で無いかもしれない。 8日間も過ごしていると、徐々にわかってくることがある。硬水は思った以上に髪へのダメージが大きいこと。お酒は飲まなければ飲まないでなんとかなるということ。カーテンを閉めてしまえば永遠に夜だということ。 だが、一向にわからないこともある。例えば、毎回食事についてくるカットフルーツ。いったいこれは何のフルーツなんだ？ 正体不明のものを口にしているとい
葛藤を抱えている。日本からスーツケースに入れてきたカップ麺に手を付けるか否か。どうしよう。些細だけど非常に大きな問題だ。 ホテルの食事に不満があるわけではない。味は良いし、メニューは豊富だし、栄養バランスも良く、決まった時間に提供されて健康的だ。だけど、量が少ない！ 多分、このくらいが一般的な人の食べる量なんだろう。でも東京での暴飲暴食ライフにより、こんな量じゃ満足できない体になってしまっているのである。 カップ麺くらい食べればいいじゃん、と私の中の悪魔がささやく。いや、
ベルリッツのレッスンが終わった。ソファーに寝ころび、空を見上げる。東京の空と似ている。異国の地に一人で来たが、空は変わらない表情で私を見下ろしている。場所は用意されている。あとは自分がどう頑張るか、それだけだ。 空といえば、昨日Amazon Primeで映画『バニラ・スカイ』を観た。2001年のアメリカ映画で、トム・クルーズ、キャメロン・ディアス、ペネロペ・クルスが出演している。 トム・クルーズ演じる主人公はイケメンで金持ちでモテモテだが、事故のケガで醜い姿に。そこから”
2021年9月16日、15:15。JL031便がバンコク・スワンナプーム空港に着陸。まずは無事到着したことに胸をなでおろす。 イミグレでは、軍隊のような制服に身を包んだ空港スタッフが、到着した入国者を待ち構える。スタッフ数は多い。というより入国者が明らかに少ない。一人の客を複数のスタッフが取り囲むヤマダ電機状態。 スタッフの丁寧な案内によって、迷うことも無く隔離ホテルに到着。ホテルのグレードはすこぶる良い。眺望も食事もすこぶる良い。2週間は長いようで短い。身と心をタイ仕様
入社から4年半。ついにこの時が来た。2021年9月16日11時15分、羽田空港。晴天のもと離陸。4年間を予定する私のタイ駐在がいま幕を開けた。 いまだ現実味は無いが、このフワフワ感もタイ子会社での業務を開始する頃には霧消するだろう。ついでに顎肉も消えてくれたらいいのに。 飛行機の窓外には東京が見える。4年半を暮らした街。何も知らず入社し、仕事のイロハを覚え、妻と出会い、様々な感情を共に過ごした街。"I don't live here anymore."とつぶやく。寂しさと
