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【妄想レビュー】 BOOK 『朝帰りが夜になって』

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 ミステリー小説を読む時に気をつけなくてはいけないのは、なにかの拍子に、本の最後の方のページを開いて、うっかり犯人が分かってしまうことである。次々と起こる事件に、その都度疑われる人たち。ハラハラドキドキの展開が、そのうっかりで台無しになってしまう。

 その点『朝帰りが夜になって』は、そんな心配はないから安心して読んでいただきたい。なぜなら、犯人はすぐに分かってしまうからである。最初のページを開くと、その瞬間エンディングの崖の上でうなだれる犯人が「自分が犯人です」と探偵に向かって独白している。

 そしてそこから、探偵の謎解きが始まり、犯人の妨害工作を経て、犯人が犯行を及ぼす場面へと進んでいく。つまり、時間が遡ってストーリーが進んでいく。

 やや難解なのはページの送り方だ。ページの右から読み進めるのだが、ページごとに話が少しだけ戻ってしまう。1ページの中だけは時間軸で話が進むのに、次のページにいくと少しだけ時間が戻ってします。その行ったり来たりを繰り返しながら、話は過去へと戻っていくのだ。もちろんそこにミステリー小説ならではの仕掛けがあるはずである(残念ながら最後まで読んでも、その仕掛けは私には解くことができなかった)。

 やがてそのページ送りには慣れていくものの、あまり盛り上がることはない。せっかく犯人を最初にバラしているのだから、ストーリーにも何か驚きがほしいというのが正直な感想だ。後半(物語の時間軸では過去)では犯人が誰か分からない描写が多く、犯人が分かっている読者からすれば、退屈で仕方がない。まあ、その辺りがこの小説の味わいなのかもしれない。

 ミステリーを読み慣れた方にとっては新鮮さはあるだろう。

※追記:『朝帰りが夜になって』初版は、製本のミスで最後のページが最初にきて、逆方向に製本されていただけということが判明しました。お詫びしますが、記事は訂正しません(なんか面白いので)。

※妄想レビュー:
この世に存在しない様々なコンテンツを、完全な妄想でレビューしています。


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