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ドラゴンとボール

「さあ、 願いを言え」
 浮かんでいるすべての雲を吹き飛ばしてしまうような大きな声で、 ドラゴンが言った。
 ボクの目の前には明るく輝く7つの玉が浮かんでいる。
「世界を平和にしてください」
 ボクは少し震えた声で、 ずっと考えたうえで決めたお願いをドラゴンに伝えた。
「よし、 分かった。 ただし、 お前の言う平和とはどういう状態か教えろ」
「えっ」 ボクは、 予期しない質問に言葉を詰まらせる。
「えーと、 平和とは、 人間同士でいがみ合ったり、 傷つけ合ったりしないような… …」
「それなら簡単だ。 誰とも関わらず一人だけで生きていく世界をつくればいいのだから。 それでいいのか?」
「そんなのは… …」
 違う。 そんなんじゃない。
 ボクは必死に考える。 頭の中でいろいろな考えが、言葉が、 出来事が、 人々の顔がグルグルと回りだす。
「変えるのか? 早く言え」
「言います。 えーと、XXXXXXXXXXXXにしてください」
「分かった。 お前の願いをかなえてやる」
 空全体にカミナリのようなスパークが拡がり、 目を開けるとドラゴンは消えていた。
 ボクのお願いが本当にかなったのか、 ここではまだ分からない。
 さあ、まずは誰に会おうかな。

※年賀状に書いている、干支をテーマにしたミニミニ小説です。
今回は辰い(タツ)がテーマです。願いが「XXXXXXXXXX」となっているのは、
浮かばなかった訳ではなく、年賀状を送った人に考えてほしかったから。
今の自分なら何を願うかな。

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