アルバイトを振り返ると発見だらけ 第二回 深夜のパン工場
菓子パンは何パン?
みなさんは「菓子パン」って食べますか?
クリームパンとかアンパンとか、ジャムパンとか。
そんなのが「菓子パン」です(そんなことは知っているか)。
でも「菓子パン」って妙なネーミングですね。
「菓子」というのはジャンルですよね。
「菓子パン」がありなら、「菓子パスタ」もいいのかとか、
「菓子ラーメン」もいいのかとか、「菓子ごはん」もいいのかとか。
名古屋にあるマウンテンという喫茶店には、イチゴ味のパスタがあります(食べたことはありません)。これは「菓子パスタ」ですね、たぶん。
うーん、おはぎはもしかしたら「菓子ごはん」?
ベビースターラーメンは「菓子ラーメン」?
この辺りでやめておきましょう。
体験したアルバイトは、深夜のパン工場
さて、今回紹介する私が体験したアルバイトは、深夜のパン工場です。
とある有名なパンメーカー(パンメーカーって言い方変かな)がありまして、
そこの工場が、私が当時経営していた雑貨屋さんの近くにありまして。
とある理由から、そのパン工場でアルバイトをはじめました。
とある理由とは?
『お金がなくなったから』です。
もう20年ほど前ですが、脱サラして、雑貨屋さんをやっていたことがあります。
詳しくはまた別の機会に書こうと思いますが、
1年ほどして、運転資金が底をつき、いわゆる自転車操業に。
自転車操業というのは、商品が売れて手に入ったお金がすぐ支払いに回される状態。
なんで自転車操業って言うのか分かりませんが、当時の自分は自転車漕ぎまくりでした。
そして、それでも足りない、明日払う電気代がない!ってときに、
アルバイトをしていたのです。
お店を閉めて、その後工場へ行き、朝まで働く。
本当にお金がないとき、週に1,2度働いていたと思います。
深夜のパン工場はサイバーパンク
さて、その工場でのアルバイトは、パンを作ることなのですが、
とにかく工場の中、そしてパン工場で働いている方が強烈なインパクトがありました。
パン工場と言っても、清潔な感じはなく、何かしらの機械をつくっている工場と変わりませんでした。薄暗く、埃っぽい感じ(実際にホコリがまっているわけではなくイメージです。ちゃんと清潔だったはず)。
ベルトコンベアでパンが工場の中をぐるぐる回っています。
工程ごとに大きな機械があって、その中をパンが通っていきます。
私たちアルバイトは、ベルトコンベアが途切れているところにいて、次のベルトコンベアにパンを移動したり、工場の人の後ろで、その人の作業の補助をしたりします。
最初にショックだったのは、肩に大きな掃除機のような機械を担いでいた人です。
つなぎを着たこの人の後ろには、お風呂釜を倍くらいに大きくしたコンテナ(上蓋はついてません)があり、その中には大量のクリームが入っています。
そのクリームを肩に担いだ掃除機のような機械で吸い取り、
パンにクリームを入れる機械に流し込むのです。
目にクリームが入らないようにするためかメガネをしていて、
その姿はサイバーパンク。
工場自体の空間と、そこで働くつなぎを着たおじさんたち。
まさにサイバーパンク。
(サイバーパンクってみなさん分かるかな)
ちなみに私はクリームパンの中にクリームを入れる作業もやったのですが、
一度、失敗して床にクリームをぶちまけてしまいました。
床に飛び散ったクリームは、モップで拭くことに。
しばらくクリームパンは食べられなくなりました。
あと地味だったのは、パンの上に白い粉を降る作業。
ザルに粉をすくって入れて、ザルを手で叩いて、粉をラインに流れてくるパンに降る。
地味。
しかも1時間くらい、ただただ振り続ける。
地味。
でも、私はこういう単純作業が得意なので、それほど苦痛ではありませんでした。
でも、そのパンはしばらく食べられなくなりました。
メインイベントはメロンパン
大きなサイレントともに、次の作業を告げるアナウンスがあり(もしかしたら掲示板だったかも)、周りの工場の人の気合が入るのを感じます。
そしてアルバイトのわたしは、そのメロンパンのラインのそばへ移動します。
メロンパンです。
みんな大好きメロンパンです。
私の前には腕まくりをして気合をいれるおじさん(かなり高齢)2名。
そしてラインから小さなうす黄色い団子が流れてきます。
よく見ると2種類の団子があるようです。
一人のおじさんが、一つの団子を皿上に薄く広げます。
もうひとりのおじさんが、もう一つの団子の上に、さきほどのおじさんが広げた団子(広げたのでもう団子ではない)を被せます。
手の中でクルクルと丸めて、固めます。
それを次のベルトコンベアへ置きます。
何が行われているか分かりました?
メロンパンって、表面に薄い甘い膜がありますよね。
あれです、あれ。
つまり、メロンパンの薄皮を団子の上にかぶせて、それを焼くことで、みんな大好きメロンパンになるのです。
おじさん二人はベルトコンベアをはさみ向かい合って立っていて、
まるで二人でリズムに乗ってダンスを踊るかのように、身体を動かして、
団子を丸め続けるのです。
何百個も。
二人にしか聴こえない音楽に乗って。
呼吸のあったダンスを踊って。
しかし、まさか人がコロコロ握っているとは。
たぶん現在はそんなことはないと思いますが、
当時の自分もものすごくショックを受けました。
しばらくメロンパンが食べれなくなりました。
いや、メロンパンは食べてましたね。
きっとあのおじさんたちの姿に感動して。
敬意を払って。
とにかく強烈なアルバイト体験でした。
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?