見出し画像

【妄想レビュー】 CINEMA 『心にもないことは何処に』

(ストーリー)
ツーボイ監督の厳しいまなざしが取材対象となる人物像に深く迫る。ツーボイ監督初のドキュメンタリー映画。

『心にもないことは何処に』 ~ドドド・ドキュメンタリー ~

 このところ映画を観る機会が減ってしまった。映画ライターという肩書きを自分でつけてみたものの、今のところ一向に公開される気配を見せないマーサ・ツーボイ監督作品のレビューしか書いたことがない現状が、映画から距離を置かせてしまっているようだ。

 そして今回もまたマーサ・ツーボイ監督作品を観ることになった。これはつまり、ツーボイ専任ライターと成り下がっている、いやいや下がってはいない、成り上がっているはずだ(仕事お待ちしております)。

画像3

 さて、今回の作品は、監督初のドキュメンタリー映画とのことである。「カメラはそこで回ってるんだぜ」と、日本のロックシンガーは歌っていたが、私もドキュメンタリーの不自然さは理解している。

 そして始まった瞬間にそんな違和感が訪れる。背景が段ボールで埋め尽くされていたからだ(ツーボイ監督の作品は必ず背景や小物が段ボールで制作されている)。作られた背景では、ドキュメンタリーとは言えないのではないだろうか。しかし、そこは私の認識が違っていた。今回のドキュメンタリーの対象者が、ダンボール作家だったのである。雲母隆太郎(うんぼりゅうたろう)という作家を、ツーボイ監督が追いかけるということだ。

画像2

 しかし気になるのは、監督も一緒に画面に映っていることだ。撮影スタッフが別にいるようだが、本来ドキュメンタリー映画は対象となる人物、今回で言えば雲母隆太郎が映っていればよいのではないだろうか。

画像2

 そして途中からインタビューシーンが続く。「好きな食べ物は? ちなみに僕はね、長芋と鶏そぼろをオイスターソースで煮たやつ」とか、「好きな本は? ちなみに僕はね、四角くて硬い本」とか、かならずツーボイ監督が自分の答えを入れてくる。ウザい。答える度にカメラの方をチラッと見るその表情がこれまたウザい。雲母隆太郎の、カンペでも見ているようなふやけた返答もウザさに輪をかけている。ウザさがくせになってきたぞ、と感じてきたところで突然映画は終わった。

「この作品は、ドキュメンタリー風映画を撮りたくてしかたがない、マーサ・ツーボイ監督を追ったドキュメンタリー映画である」という字幕が最後に出た。

 わっ、分かりにくいわ。思わず立ち上がって声をあげた私は、その後さらに大きな声を上げることになった。私の後ろ姿がスクリーンに映ったのである。

 振り返ると会場の奥にカメラをかまえたツーボイ監督の姿があった。その横には別のカメラを回す男も見える。試写会場でも撮影を続ける。その映像がリアルタイムにスクリーンに流れる。こ、これはドドド、ドキュメンタリー!? これどうやって終わるの。

『心にもないことは何処に』 ~ドドド・ドキュメンタリー ~
監督 マーサ・ツーボイ 
出演 雲母隆太郎、マーサ・ツーボイ
撮影 メンター・ツーボイ、マーサ・ツーボイほか
2020年 日本 36分〜
※妄想レビュー:
この世に存在しない様々なコンテンツを完全な妄想でレビューしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?