おすすめ旧譜アルバムVol. 50： Kingpin Skinny Pimp「King of da Playaz Ball」

旧譜紹介Vol. 50です。

今回紹介するのは、メンフィスのラッパーのKingpin Skinny Pimpによる96年のアルバム「King of da Playaz Ball」です。

Kingpin Skinny Pimpはメンフィス出身のラッパーです。

90年代前半から活躍し、Three 6 Mafia周辺やDJ Squeekyなどの作品に参加。211とのタッグ作の発表などを経て、96年にはProphet Entertainmentから本作をリリースします。同年には2ndアルバム（未発表曲集？）の「Skinny But Dangerous」も発表。その後Prophet Entertainmentを離れますが、98年の「The New Beginning」、99年の「2000 Rapdope Game」と精力的にリリースを続けます。00年代に入ってからも02年のGangsta Blacとのタッグ作「The Mayor And The Pimp」などリリースを重ね、10年代以降もマイペースに作品をリリースしつつDa Mafia 6ixへの客演などで活躍。昨年にもソロアルバム「Spiders」のリリースなどがありました。

高めの声質で、ゆったりとしたフロウも高速フロウも巧みに使うラッパーです。三連フロウも早くから用いており、Lord Infamousと並ぶオリジネイターの一人とも言われています。サウンド的にはメンフィスらしいダークなバウンスやメロウなど。近年はトラップ系のビートにも乗っています。

本作は全曲をDJ Paul & Juicy Jが手掛け、ホラーというよりギャングスタな匂いが漂うハードなものや極上のメロウ、ソウルフル路線などを聴かせる傑作に仕上がっています。Kingpin Skinny Pimpのラップのキレも抜群。メンフィスG好きの方は必聴です。

2. One Life 2 Live Feat. DJ Paul & Juicy J

妖しいスロウなGファンク。

ブヨブヨのベースと例の高音シンセを使った西海岸Gの影響を感じさせるビートですが、高速ハイハットにメンフィスならではの味があります。淡々としたラップも見事。

3. Nobody Crosses Me

ダークで緊張感の漂うバンギン。

ディレイがかかったスネアや不気味なシンセが効いたビートで、鬼気迫るラップを聴かせる良曲です。7分越えですが不思議と長く感じません。

4. Midnight Hoes

本作のベストトラック。

Playa Gがキーボードとフックでの歌で参加した鬼メロウ曲です。三連フロウも巧みに使うKingpin Skinny Pimpのラップ、Playa GのGなプレイに悶絶必至。DJ Paulとの乾杯からの無呼吸高速ラップ、フックを挟んでアウトロのキーボードソロまでの流れは極上ものです。

5. Lookin' for da Chewin'

メロウな気分を断ち切るハードな曲。

痺れるようなシンセと不穏なピアノを使ったビートで、キレのあるラップを聴かせる好曲です。Juicy Jのエグいスクラッチもナイス。

6. Long Story

ストリングスのループと乾いたスネアを用いた曲。

ブーンバップ的にも聴けるビートですが、（恐らく）Playa Gのキーボードが絡んでくるので問答無用でGの世界に持って行かれます。フックなしでひたすらラップする構成で、ラストの一言が妙に沁みます。

7. Y'all Ain't No Killaz Feat. Gangsta Blac & Lord Infamous

Three 6 Mafia流儀のダークな曲。

不穏なピアノと刻みの早さが変わる高速ハイハットが印象的なDJ Paul & Juicy J印のビートで、濃厚なマイクリレーが堪能できます。奇妙な歌フロウも交えたLord Infamousのヴァースがハイライト。

9. I Don't Love'em Feat. Gangsta Boo & Koopsta Knicca

妖しいシンセのループが光る邪悪な曲。

最初に登場するGangsta Booのキレのあるラップからして凄いですが、それに負けないKingpin Skinny Pimpも素晴らしいです。しかしラストに登場するKoopsta Kniccaの呪文のようなラップがそれらをかき消すインパクト。

11. Pimpin' and Hoin'

Playa Gがキーボードを弾くメロウ。

Ann Hinesなる女性シンガーがフックをソウルフルに歌い上げますが、その直前から入ってくる動きのあるピアノが悶絶級。最後のフックからの自由なピアノが特に凄いです。

12. Don't Test Me

重厚なホーンをうっすらと使ったバンギン。

Kingpin Skinny Pimpのラップのキレが圧巻で、シンプルなループに見事に映えています。フックでの急に感情を抜いたようなラップも印象的。

13. Let's Start A Riot

ワサワサしたフックが楽しいMタウンクランク。

陽気なホーンが入ったフック部分と、ダウナーなシンセが目立つヴァース部分のギャップが凄いです。鬼気迫るラップも抜群。

15. All About Them Prophets

当時のThree 6 Mafia周辺ラッパーが大勢登場するポッセカット。

シンプルなストリングスのループと高速ハイハットが効いたビートで、キャラの濃いラッパーが次々と登場する良曲です。ハイライトはラストのKingpin Skinny Pimp。入りから取り憑かれたような凄まじいキレを見せ、途中で声色も変えつつ圧巻のヴァースを聴かせます。